プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

ゆがんだ「国益」  ゆがんだ「ODA」

2006-05-22 18:40:44 | 政治経済
政府の「海外経済協力会議」(議長・小泉首相)の初会合が八日、首相官邸で開かれ、官邸主導による政府開発援助(ODA)の戦略的、効率的な運用に向けた論議を開始しました。官邸主導であろうが、従来の行政官僚主導であろうが、対米従属と大企業本位という支配階級のイデオロギーを「国益」とする限り、ゆがんだ「ODA」のあり方をどうすべきかを根本から問い直す中身がありません

「海外経済協力会議」は首相を議長とし内閣官房長官、外相、財務相、経済産業相で構成されます。ODAを一元的に決定・実施する「戦略的司令塔」として設置されました。政府の有識者会議「海外経済協力に関する検討会」(座長・原田明夫前検事総長)が同会議の設置を提言しました。同検討会の報告書(2月28日)は、「国益」のためのODAを闡明にしています。日本の国連安保理常任理事国入りの失敗から階級的教訓を引き出し、日本の外交政策へ同調するかどうかで、ODAに差別・選別を持ち込む立場を鮮明にしています。

日本のODAは従来から、相手国にはあまり役に立っていないなどの批判をよく聞きます。
日本のODAは、(1)アメリカが戦略上重視する地域に重点配分(2)大企業の海外進出促進の手段として利用(3)情報非公開―という特徴があり、大変ゆがんだものになっています。
援助の内訳は、他の援助国に比べて、食料支援など人道援助の比重や医療・教育施設など社会インフラの比重が低い一方で、企業活動に必要な道路・港湾あるいは空港・ダムなど経済インフラ整備の比重が高くなっています。また開発資金を貸し付ける円借款が多いのが日本の特徴で、ここでも日本の大企業への発注比率が高いことや、鈴木宗男疑惑にみられるような利権政治家の暗躍が指摘されています。

援助対象国では、アメリカが軍事戦略重点国とみなすインドネシアやタイなど十数カ国に、日本は長年、傾斜配分を続け、80年代には韓国の全斗煥政権やフィリピンのマルコス政権のような軍事独裁政権にも多額のODAを支出しました(日本独占企業のアジア進出支援の意味も勿論ありました)。一方、援助を切実に必要としているLLDC(後発開発途上国)には極めて少なくなっています。
手続きでは、借入国の主権や企業秘密を理由に情報非公開が原則で、決定過程が極めて不透明です。

いま世界では、約60億人のうち12億の人が一日一ドル(110円程度)以下で暮らし、飢えている子どもが約4億人もいます。2000年の国連ミレニアム・サミットでの「ミレニアム開発目標」は、2015年までに、飢餓人口と一日一ドル以下で生活する極度の貧困を半分にするなどの目標を設定し、各国に協力を呼びかけています。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。・・・われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」(憲法前文)と高らかに諸国民の平和生存権を謳った日本国民にふさわしいODAのあり方がある筈です。

アメリカの世界戦略補完と海外に進出する日本大企業奉仕の役割をさらにつよめることが「国益」にかなうODAだとする限り、飢餓・貧困にあえぐ諸国民の期待にこたえられないことは明白です。
連休中に、エチオピアやガーナを訪問して、アフリカ援助の強化を表明した小泉首相。しかし、飢餓・貧困に苦しむアフリカ貧困32カ国向けODAの割合を、2000年7・3%から04年5・9%に切り下げたのはほかならぬ小泉首相でした。
国連安保理常任理事国入りの支持票欲しさから見え透いたジェスチャをみせても、ゆがんだ「国益」に基づく「ODA」はゆがむほかありません。



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