プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

年金未統合記録約五千万件  未解決のまま社保庁解体する無責任

2007-05-30 16:46:40 | 政治経済

社会保険庁は1997年、公的年金の加入者全員に基礎年金番号を割り当てる制度を導入した。それまでは、年金ごとに別の年金番号で記録を管理していたため、転職や結婚などのたびに、別の年金番号がつけられていた。 社保庁は、本人の申請にもとづいて、複数の番号を持つ人の記録の統合をすすめているというが、五千九十五万一千百三件(200661日現在)が未統合のままとなっているという(「しんぶん赤旗」529日)。結婚して姓が変わったり、転職して複数の番号を持つ加入者が、制度を知らないため未申請になったり、作業の過程で誤って別人のものを統合したり、入力ミスで納付記録などが消えたケースもあるということだ(「東京新聞」526)。――これが「宙に浮いた年金記録」、「消えた年金」問題である。

<o:p> </o:p>

長年にわたって保険料を納めてきたのに、もらえるはずの年金がもらえなくなったり、過少となる重大問題であるにもかかわらず、年金記録の確認を本人任せにし、「申請主義」の立場にあぐらをかいて問題の早期解決に着手しなかった「公務員」は、「全体の奉仕者」として公共の利益のために勤務していたとはとても言えない。年金記録の統合ができないと、年金加入期間(25年間)不足の扱いとされて、受給資格を失ったり、保険料を払っていても「未納期間」扱いとされて、もらえるはずの年金額を減額される不利益を受けることになる。

なぜ10年間、社保庁側から積極的な手を打たなかったのか、是非現場担当者の生の声を聞きたいものだ。<o:p></o:p>

<o:p> </o:p>

政府はこれまで加入者本人の申し出で調査する原則を強調してきたが、夏の参院選を控え野党の追及が強まり、方針転換した。不明記録の全件調査に着手し、特に標準的な支給開始年齢である60歳以上の記録2880万件については、優先実施する。具体的には、すでに年金を受け取っている3000万人全員の記録と照合、同一人物と思われる人に結果を送付し、確認を求める。このほか同庁は58歳になった人を対象に、これまでの年金納付記録を通知する際、統合漏れへの注意や、同庁への照会を呼びかける。年金を受給するために必要な納付期間(25年間)を満たしていない人でも、記録漏れで年金の支給対象となるケースも考えられる。このため、市町村に依頼し、介護保険納付通知書などに同様の呼びかけを行う。また、支給漏れが見つかった場合、現在は5年間しかさかのぼって受給できない時効を撤廃し、全額を補償する。時効撤廃には立法措置が必要となるため、与党は議員立法による特別措置法を今国会に急遽提出する(毎日新聞 526日 300分)。<o:p></o:p>

<o:p> </o:p>

問い合わせの納付記録の送付や注意の呼びかけで、きちっと記録が統合され、事務処理が軌道にのるのか。社保庁のミスで納付記録が紛失した加入者は、本人が納付を証明しなければならないなどの問題も残る。安倍・自公政権は、「宙に浮いた年金記録」を5千万件(20歳以上の人口1億人の半分!)も抱え、解決の見通しもない中、なお、31日にも社会保険庁解体・民営化法案の本会議採決を狙っている。

社保庁の組織改革は重要だが、その前に、「消えた年金」問題に対して、国民が納得できる緻密(ちみつ)な解決策を打ち出すことが先決である。重大なミスをおかした社保庁の現場担当者の声を聞かないまま、社会保険庁を解体し、六つに分割民営化することを急ぐと、国が責任をもって「宙に浮いた年金記録」を一元的に処理することができなる恐れが強い。社保庁の組織変更は、問題解決のあとからでも遅くない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。