プロメテウスの政治経済コラム

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日銀総裁空席  福田政権「脳死状態」でニッポンは全身マヒ(週刊文春)

2008-03-19 16:47:09 | 政治経済
参院は19日昼の本会議で、政府が国会に再提示した日銀正副総裁人事案を採決し、田波耕治国際協力銀行総裁(68)の総裁起用を民主党など野党3党の反対多数で否決した。福井俊彦総裁の任期が同日で切れるため、20日以降の総裁空席が確定した(時事通信3月19日13時1分配信)。
今回の日銀総裁人事の迷走について、野党の責任であるかのようにいう大手マスコミもある。しかし、見当はずれもいいところだ。日銀総裁人事がいわゆる国会同意人事であり、3月19日以前に処理しなければならないことは、早くからわかっていたことである。野党がかねてから、同意の基準を示しているにもかかわらず、それを無視した提案に固執する福田首相は、同意人事を真剣に考えているとはとても思えない。福田首相の統治能力の欠如がいよいよ極まったといわざるをえない。福田政権「脳死状態」でニッポンは全身マヒ(週刊文春)状態である。

「日本と世界の経済情勢を考えれば、総裁の空席は許されない」という議論は一見まともである。しかし、日銀総裁人事がいわゆる国会同意人事であり限り、参院の状況を考えれば、野党と事前に意見調整しなければならないことはわかりきったことである。本来、日銀総裁といえば、金融政策はもとより日本経済の健全な発展に責任を負うべき存在だ。首相には、もともと野党が受け入れられる人事案を示す責任があった。
ところが、政府は当初、2月にも、人事案を提示するとした方針を、ずるずると先延ばしし、結局、国会に提示したのは、任期切れまで10日あまりの3月7日になってからであった。しかも、政府が総裁候補としたのは、野党が反対姿勢を示してきた武藤敏郎日銀副総裁。同氏は大蔵・財務事務次官として「構造改革」「社会保障費抑制」路線を主導。日銀副総裁になったあとは、家計の利子所得を奪ってきた「超低金利政策」を推進してきた張本人である(「しんぶん赤旗」3月19日)。

福田首相は、武藤敏郎副総裁の起用が3月12日、参院で正式に不同意となったあとも、なお武藤氏にこだわった。福井総裁の再任か、武藤氏の副総裁続投か、あるいは財界出身者の新総裁のもとでの武藤氏続投を、与党幹部が民主党に打診したという(「朝日」3月19日)。
結局、野党の反対は崩せないと見て断念し、ぎりぎりのタイミングで出してきたのが、同じ大蔵次官出身の田波耕治国際協力銀行総裁だった。なんのことはない首相がこだわったのは武藤氏という人物でなく、旧大蔵省という出自だった。日銀と財務省出身者が交互に総裁につく「タスキがけ人事」を死守したい財務官僚の意向に従っただけである。
1964年に大蔵省に入省した田波氏は大蔵省総務審議官や理財局長などを歴任。98年1月から翌年7月まで大蔵事務次官を務めた。同氏は、大蔵事務次官当時、バブルで乱脈の限りをつくし不良債権をふくらませた銀行への税金(公的資金)投入を進めてきた張本人である(「しんぶん赤旗」同上)。

政府・与党と大手マスコミが、日銀総裁が空白になれば、その責任が野党側にあるかのように主張していることは、与党絶対多数のもとでの国会審議の形骸化に慣れ、「脳死状態」にある政府・与党を免罪する以外のなにものでもない。今度の日銀総裁人事についていえば、「野党、国会というのは、政府が提案した人事に賛否をいうのが仕事だ。賛成しなければけしからんというのでは、国会の任務は果たせない」(共産党・志位委員長)。
福田内閣の支持率が「政権の危険水域」といわれる三割を切る事態に直面している。イージス艦衝突事故をめぐる政府の対応、道路特定財源をめぐって問題が噴出しているにもかかわらず、総額五十九兆円の「道路中期計画」に固執、基礎年金番号に統合されていない約五千万件の「宙に浮いた」年金記録のうち約四割にあたる二千二十五万件が依然だれのものか分からない状況、総裁人事をめぐる混迷、首相の求心力は低下の一方だ。
ある参院自民党幹部が「福田政権は持ちこたえられるかなあ」と漏らしたそうだ(「産經」03/18 22:13更新)。

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