プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

上海のホテルでチベット暴動のニュースを聞く

2008-03-17 18:12:15 | 政治経済
上海訪問中の3月14日、テレビニュースでチベット暴動のニュースを知った。中国語が理解できないので、現地テレビの報道内容を正確に知ることはできなかったが、一部テレビでは、突然、途中カットされたようで、報道になんらかの規制が加えられたことは確かなようだ。北京・上海で聞く限りは、一般の中国の人々は、政治・国家にはほとんど関心がなく、いまや自分の身の回りの経済生活のことばかりというが・・・。
広大な国土に住む16億人の民が自主的、自覚的に秩序ある社会を形成できるように陶冶されるまでには、相当の年月を要するだろうというのが、私の今回の旅行の全般的な印象である。

中国西部のチベット自治区ラサで14日、大規模な暴動が発生し、商店や車両が次々と火を付けられた。
ラサでは中国支配に抗議する1959年の「チベット動乱」から49年を迎えた10日以降、数百人のチベット仏教僧らがデモを続けていた。チベットでは89年、大規模な独立要求デモがラサで発生し、戒厳令が布告されている。今回の暴動は同年以後では最大規模とみられる。
ラサ発の新華社電が目撃者の話として伝えたところによると、午後2時(日本時間同3時)ごろ、ラサの2本の大通り沿いの多数の商店が焼き打ちに遭い煙に包まれた。中心部にある寺院「ジョカン(大昭寺)」前の広場では住民が逃げ惑い、車が燃やされた。
米国に本拠を置く人権団体「チベットのための国際キャンペーン」によれば、火の手は大通りの至る所から上がり、一部の建物は焼け落ちた。また、警察車両にも火が付けられたという(時事通信2008/03/15-01:18)。

中国政府は北京五輪を前に、新疆ウイグル自治区やチベット自治区の独立運動派が何らかの行動を起こすことをある程度予想していたようだ(「Meiさんのメモ帳」2008年 03月 13日)。
3月4日。
新疆ウイグル自治区ウルムチ市で、武装警察部隊が自治区の独立を目指す組織の拠点を急襲。
少なくとも18人を殺害したと伝えた(香港・星島日報)。
3月7日。
航空機テロ未遂事件。犯人はウイグル独立運動にかかわる女性らしい。
北京行きの旅客機が新疆ウイグル自治区ウルムチを離陸後、トイレで引火させようとした2人が拘束された。
ダライ・ラマがアメリカ議会から名誉章を授与された当日には、ラサでチベット仏教僧数百人が受章を祝う活動を行っていたところ、4000人の武装警察や軍が出動。数十人の僧侶を逮捕。
3月10日。
ジョカン寺周辺の土産物街で10名ほどのチベット僧がチベット国旗を掲げ、ビラを配っていたところ、武装警察が鎮圧。ナッチェ(那曲)地区では、チベット族600人と警官との衝突が起きた。
当局は約800人の武装警察を派遣し現場を封鎖(香港・明報)。

中国の公認された少数民族としてのチベット族(蔵族)の居住領域に設けられたチベット自治区の領域は歴史的・文化的なチベット地域のうちの、歴史的に西蔵と呼ばれてきた地方を占めるのみであり、歴史的・文化的なチベット全体の一体性の回復を要求する運動はいまも続いている。チベット族と漢族との確執は、清朝以来のことであり、国民党との内戦に勝利した中国共産党は、チベット全域を軍事開放した。
民族分離独立運動は中国政府にとっては、非常に繊細な問題で、一大イベントの北京五輪を前に神経が高ぶっていることは確かだろう。五輪ボイコットの話にでもなったら、大変である。

細かい歴史的経過は別にして、広大な国土に住む16億人の中国人民にとって、社会統合を自主的、自覚的に形成することは、容易でないだろうというのが、私の今回の旅行の全般的な印象である。北京・上海の人々は活気に溢れているが、社会生活のルールはかなり、無秩序である。中国政府は、今後も社会統合の舵取りに、苦労することだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。