プロメテウスの政治経済コラム

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沖縄新基地アセス方法書「書き直し」  米連邦地裁も要求 再度、住民意見をくみ取る手続きを!

2008-01-29 18:42:40 | 政治経済
沖縄県の仲井真弘多知事は1月21日、新基地建設(埋め立て部分)の環境影響評価(アセス)方法書の「書き直し、再提出」を求める知事意見書を防衛省に提出した。今回の意見書は、公有水面埋め立て部分にかかるもので、昨年12月21日に提出した飛行場建設にかかる意見書に続くものである。昨年の滑走路部分にかかる意見書については「審査するに足りない」と「再検討」を要求していた。1月24日には、サンフランシスコ連邦地裁が辺野古沖に生息する国の天然記念物ジュゴンをめぐって、米国防総省に対し、公的な環境への影響調査を実施するよう求める判決を下した。防衛省が、2014年完成予定を目指してまともな法的手続きもとらずただしゃにむに建設を進めれば進めるほど沖縄県民の抵抗を招くであろう。辺野古に新基地をつくらなくても、普天間基地の撤去はできる――ここに最大のボタンの掛違いがあるのだ。

日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)への新基地計画は、普天間基地(宜野湾市)の基地機能をさらに強化・拡大した恒久的な最新鋭の基地づくりである。米軍の世界的な再編にあわせ、アジアから世界へ展開する前線基地を街中の普天間基地の移設を口実に日本の血税で新たに建設するものである。新基地は、攻撃ヘリや輸送ヘリ、垂直に離着陸することも可能な最新の、墜落事故もしばしば起こしている大型輸送機オスプレイ、C130輸送機などが飛び交う。住民に爆音被害や墜落の危険と隣り合わせの生活を強いるのは明白だ。基地あるがゆえの苦しみを60年以上も続けている沖縄県民が抵抗するのは当然ではないか!政府は、カネによる懐柔だけでは飽き足らず、“危険隠し”の欺瞞で目先を晦まそうとする。方法書は、米軍が日常訓練などで住宅上空を飛行するといっているのに、どこを飛ぶのか、飛行経路さえ示していない。海兵隊員を運ぶ強襲揚陸艦も使用できるという大型の岸壁をつくると米軍がいっているのに、それも示していない(「しんぶん赤旗」2008年1月28日)。県民を舐めきっているのか、県民の反撃を恐れているのか。

新基地建設は大規模な海の埋め立てを伴う。ダンプカー約三百四十万台分の砂が海に投入されるといわれている。当然、海は汚れ、砂がたまり藻場がなくなることが予想される。米国のサンフランシスコ連邦地裁は24日、米国防総省にたいし、辺野古沖に生息するジュゴンへの影響調査を実施していないことは文化財保護法(NHPA)違反であるとして、影響調査を求める判決を下した。判決は、ジュゴンについての情報や普天間の代替施設がもたらす影響について、国防総省は評価や検討した証拠がないとして、文化財保護法に違反していることを認定。「計画は国防長官らによる最高レベルの承認を得ているのに、ジュゴンへの影響はよく理解されていない」「国防総省が法に基づく義務を履行するのを建設前夜まで待つことはできない」として、ジュゴンへの影響調査についての文書を90日以内に出すよう求めた(「しんぶん赤旗」2008年1月27日)。在日米軍が自らアセスを行うとは思えない。防衛省まかせだろう。その防衛省のアセスは方法書が示すように、アセスに値しない内容である。ジュゴン保護にきびしい態度をとるアメリカの裁判所が日本政府・防衛省のお粗末なアセス方法書をどのように評価するであろうか。

知事意見書は、方法書について、対象事業の内容、環境影響評価の項目ならびに調査、予測および評価の手法について「書き直しをする必要がある」と述べ、調査の着手前にその内容を公表するとともに、県および審査会に報告・協議した上で最終的に決定し、その結果を公表することを求めた。しかし、基地容認派の知事は、「整理整とんして書き直してほしいということだ」と述べ、住民への公告縦覧を含めた法的な再実施・出戻り要求ではないといっている(「しんぶん赤旗」2008年1月22日)。

知事が「書き直し、再提出」を求めたということは、環境アセス法上、不備があったと認定したことを意味する。同法では、方法書を修正した場合、再度、「方法書の送付」「公告・縦覧」「住民意見、市町村意見の提出」といった手続きを踏むよう定めている。法的な再実施・出戻り要求ではないというのは知事の勝手な解釈である。「再度、住民意見をくみ取る手続きを!」の世論を高めるときだ。

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