自民、公明両党の幹事長、国会対策委員長らは28日朝、都内のホテルで会談し、3月末で失効するガソリンの暫定税率などの期限を2か月程度延長する法案を議員立法で衆院に提出するため、28日中に両党内の手続きを終える方針で一致した(「読売」1月28日14時38分配信 )。「つなぎ法案」を今月中に衆院通過させれば、参院送付後60日で否決とみなせる憲法の規定を適用し、年度内に衆院の3分の2で再可決できる。改正案はその後、時間をかけて成立させようとわけだ。「奇策中の奇策」を使っても道路建設の利権に固執する自公政権・与党、ただ暫定税率廃止だけで揺さぶる民主党―日本の国会は末期的症状だ。
今国会の最大の焦点はガソリン税の暫定税率だという。それを廃止してガソリンの値段を下げるのだ、いやそれでは地方自治体の税収が減って無責任だと、そんな議論がされている。自民党は、地方の税収減だけでは反撃にならないと考えたのか、「我が国のガソリンの値段は、非常に安い。欧州は環境への配慮を理由に税金が年々上がってきたが、日本は一貫して変わっていない」、「(暫定税率の)税金を何としても維持しないといけない。広い意味で環境関連税制という受け取り方をすべきだ」(福田首相)などと言い始めている。その税収で排気ガスを出す自動車の道路をもっとたくさんつくろうとしているのが自民党。よくも環境を口にできるものだ。政治的退廃そのものである。
暫定税率を今後10年間維持するというのは、今後10年間で59兆円を投じ全国で一万四千キロの道路建設をすすめる「道路中期計画」とつじつまを合わるだけのはなし。同計画の総額59兆円のうち約四割が、「国際競争力の確保」を目的とした「基幹ネットワーク整備」で、与党がいうバリアフリー対策や防災対策などはそれぞれ2%程度に過ぎない。
20日のNHK「日曜討論」で、日本共産党の市田忠義書記局長は「道路中期計画」の問題点について次のように指摘した。「こういうときになると自民党や政府は“地方を重視する。地方が大変だ”と(おっしゃるが)、この間、地方交付税は五兆円減らしています。農村を疲弊させ、中小企業を立ち行かなくさせて地方を破壊している政治への反省がまず必要だと思います。『道路中期計画』は10年間で59兆円、そのために暫定税率も維持するというわけです。中身をみると、基幹ネットワークの整備など『国際競争力の確保』というのがそのうちの四割で、約二十数兆円です。その代表例をいいますと、拠点空港や拠点港湾から高速道路のインターチェンジに10分でアクセスできるようにしようというものです。私は予定されている港湾を全部調べてみたのですが、その多くはいまでも12分、15分で行ける。12分のところを2分縮めて“国際競争力の強化だ”と、そういうことも含めての五十九兆円。そのために暫定税率維持だという」(「しんぶん赤旗」2008年1月21日)。
27日のテレビ朝日系番組「サンデープロジェクト」で、日本共産党の小池晃政策委員長は、冬柴鉄三国土交通相が18日の記者会見で、道路公団民営化のさいに九千三百四十二キロとしていた建設計画について、「(一九八七年に決めた一万四千キロのうち)65%強しかできていない」「十年以内でなんとしてでも通じるようにしたい」と述べていると指摘。「いつの間にか20年前の計画(四全総)である一万四千キロをやろうということになっている」「詐欺みたいなものだ」と批判。計画そのものの撤回を求めた(「しんぶん赤旗」2008年1月28日)。
道路特定財源制度ができたのは50年以上も前で、当時、道路舗装率は全国で5%程度だった。暫定税率が導入されてからでも30年が経つ。全国の道路整備状況を考えれば、道路づくりを加速するための暫定税率は、この際廃止するべきである。そのうえで、道路だけにしか使えない税制は、これを道路にも福祉にも教育にも環境にも使える一般財源にするべきである。一般財源のなかで、どうしても生活に必要で未整備の道路があれば、真剣な議論をつくして建設すればよい。一般財源化で道路整備ができないと騒ぎ立てる輩は、よほど甘い道路利権をもっているのであろう。
暫定税率の廃止と一般財源化を主張する民主党が「コストを詰めていけば、かなりのものはつくれる」(直嶋正行政調会長)と道路建設推進では与党と同じ態度なのも問題だ。
暫定税率廃止問題は、当面の生活や税収という範囲の議論にとどめるべきではない。人類共通の問題となっている環境問題と結びつけて考えるべきだ。二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入について、国民的議論をすべきときである。国会議員は、ただ目先の政局ばかりに走るのではなく、いったいどんな日本、どんな社会をつくるのかという政治本来の役割を果たすような議論をしてもらいたいものだ。
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