プロメテウスの政治経済コラム

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麻生外相発言の意味するもの

2005-11-23 17:59:48 | 政治経済
侵略戦争を正当化する靖国神社の戦争博物館「遊就館」について麻生太郎外相は21日、「戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているだけの話だ」と発言しました。早速、中国側が批判するなど、大きな外交問題になっています。対中国冷戦の宣告のつもりなのでしょうか。靖国参拝を続けつつも、「遊就館」などの靖国史観を支持しないと言う小泉首相見解とも異なります。
満州事変以降のいわゆる15年戦争には2つの解釈があります。靖国神社的解釈東京裁判的解釈です。靖国神社的解釈とは、15年戦争は、日本の「自存自衛」のための戦争、「皮膚の色とは関係ない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかったアジア解放」のための戦争であるということです。この立場からは、東京裁判は勝者が敗者に押しつけた非合法の裁判ということになります。東京裁判的解釈とは、15年戦争は、侵略戦争であり、戦争指導者を戦犯として有罪とするものです。戦後の日本政府の公式的立場です。
15年戦争の解釈をめぐって、世界の圧倒的多数の国は、アメリカも含めて、東京裁判的解釈をとっています。東京裁判が問題だとよくいわれますが、戦争に対する見方に関しては、アジア諸国だけではなく、ヨーロッパ、アメリカも同じなのだ。靖国神社的解釈をとっているのは、日本だけと言っていいでしょう。これは、過去の問題に対する態度の問題であるから、放っておいてくれというわけにはいきません。15年戦争というのは、当然戦争の相手のあることであり、中国を中心としたアジアでの戦争を侵略とみるかみないかは、現在、未来の国際関係の構築に大きな意味を持ちます。だから、中国や韓国、各国政府も反応しているわけです。
遊就館の展示は、まさに侵略戦争を推進していた当時の政府や軍部の言い分そのままです。したがって、遊就館の展示は「その時はそうだったという事実を述べているにすぎない」という麻生外相の発言は、自らがいまだに当時の政府・軍部の言い分そのままの歴史認識にあることを宣言するようなものです。国際社会で孤立する立場に立つ人物に、外務大臣の資格はないといわざるをえません。

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