プロメテウスの政治経済コラム

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「市場化テスト」法案の最大の問題点

2006-03-25 21:20:59 | 政治経済
政府は「公共サービス改革法(市場化テスト法)案」、「行政改革推進法案」と「公益法人制度改革関連法案」の三法案を合わせて「聖域なき構造改革」を掲げてきた小泉首相の総決算と位置づけ今国会の成立を目指しています。 「市場化テスト」法案とは、従来は政府、地方自治体で行っていた業務を民間に開放し、公共サービスの担い手を官民競争入札制度で決めるというものです。最大の問題点は、実施検討プロセスにサービスの受け手である国民がまったく参加せず、除外されていることです

「市場化テスト」法案は、「官業の民間開放」を新たなビジネスチャンスとしたい財界が強く要求してきたものです。公務員削減の「非常に有効な手段」として、「公務員改革」(「行政改革推進法案」)と一体にすすめられています。

「民間開放」の制度ではこれまで、企業が公共施設の建設・維持管理・運営をできるPFI制度や地方自治体の公共施設の管理・運営に企業が参入できる「指定管理者制度」などが導入されています。しかし、規制改革・民間開放推進会議は、これらの制度は部分的で限界があるとし、「市場化テスト」を「民間開放の横断的かつ網羅的なツール」と位置付けています。まさに「民間開放」の切り札として登場したのが「市場化テスト」法です。

法案は対象事業を「国の行政機関等又は地方公共団体が実施する公共サービス」(第一条)として、すべての公共サービスを網羅できるようにしています。民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点から、国の関与や規制は、最小限にして、民間企業が参入できるようにすることを「国の行政機関等の責務」(第四条)としています。
サービスの公共性にかかわる規定はまったくなく「民間開放」だけが唯一の目的です。

具体的にどの公共サービスを市場化テストにかけるかは、毎年作成する「基本方針」に盛り込むかたちで対象事業を拡大していくことになっています。問題は、「基本方針」をつくるにあたって、「民間事業者の意見を聴く」=「民間提案」を受付けることになっていますが、意見を聴くのは民間事業者だけで、国民が意見をいうことは予定されていませんそして「基本方針の閣議決定」から「各省の入札実施方針の策定」「入札実施・落札決定」にいたる各実施プロセスを内閣の主導と「第三者機関」(官民競争入札等監理委員会)の直接関与のもとで行うことを定めています。「監理委員会」のメンバーが企業サイドの代表者によって構成されることは、従来の例から明白です。

国民は、主権者として公共サービスの提供を受ける立場から、市場で提供されるサービスを選択するだけの消費者の立場に転換させられ、住民生活を守る行政の責任も放棄させられます。国民の生命、財産を守るサービスとか民間事業者にふさわしくない公共サービスまで民間に開放され、質よりもコスト中心の運営が進められることになりかねません。官民の賃下げ競争、民営化によって失職した公務員の処遇、喪失した官の仕組み再構築の困難性など問題山積みです。 国民が主体的に参画するのではなく、「官業の開放」で「100年に一度 50兆円のチャンス」(日経BP社『パブリックビジネス・リポート』)などとはしゃぐ「財界」に意思決定のすべてを任せてはなりません。


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