プロメテウスの政治経済コラム

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志賀原発2号機・運転差し止め判決―他の原発は?

2006-03-26 17:30:19 | 政治経済
北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の周辺住民ら135人が耐震性の不備などを訴え、北陸電力を相手に運転差し止めを求めた訴訟の判決が24日、金沢地裁でありました。井戸謙一裁判長は「北電の想定を超えた地震で原発事故が起こり、原告らが被ばくする具体的可能性がある」として、北電に2号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡しました同じ「耐震設計指針」に基づき建設された他の原発は大丈夫なのか?不安が募ります。

日本には、稼働中の原発が55基(建設中2基)あります。国の原子力安全委員会が定めた耐震基準(1978年制定、81年改定)は、25年前のもので、最新の知識に照らして科学的根拠を失っています。指針は、55基の原発を稼働させる電力各社にとって、耐震性を主張する論拠となってきました。
原子力安全委員会は2001年から指針の改訂作業中ですが、各社には改訂を待たず、これまでに得られた地震学の研究成果や観測データをもとに、すべての原発の耐震安全性を見直すことが早急に求められます。

原発の「耐震設計指針」は、「想定されるいかなる地震力にたいしても十分な耐震性を有しなければならない」と規定。想定される地震力として、「設計用最強地震」によるS1と、「設計用限界地震」によるS2を定めています。
昨年八月の宮城県沖地震(M7・2)では、東北電力・女川原発で耐震設計のS1、S2の想定を超す揺れが観測されています。2000年10月に起きた鳥取県西部地震はM7・3を記録しました。この地震の前に、このような地震を起こす活断層の存在は知られていませんでした。「歴史的資料などから最も大きい地震」として想定されたはずの「設計用最強地震」S1(M6・5の地震を考慮して決める)にまったく根拠のなかったことが明らかになりました。
さらに、女川原発構内の岩盤で観測したデータを揺れの周期ごとに解析した結果、周期が〇・〇五秒付近で、S2で想定している揺れを大きく上回っていました。S2は、S1を上回る限界的な地震による地震動と説明されてきましたが、これも根拠が崩れました。

井戸謙一裁判長は、原発で想定される地震の揺れの強さを算出するため、指針が採用している計算法を否定しました。女川原発で、最大の地震想定値を超える揺れを観測したことを例に「(計算法は)実際の観測結果と整合しておらず、その妥当性を首肯し難い。地震のメカニズムの解明は計算法の開発当時から大きく進展しており、限界は明らか」としました。さらに、国の地震調査委員会が昨年3月、志賀原発の東側20キロにある邑知(おうち)潟断層帯を「30年以内にマグニチュード7・6の地震発生確率が2%」と評価。原告が「断層帯全体を評価しない北電は、地震を矮小化している」と批判した点も「断層帯で予測される地震は考慮すべき。(北電の評価では)地震の規模を小さく予測する危険がある」と、2号機の耐震設計の不備を突きました。

今回の判決には仮執行宣言がないため、北電は直ちに控訴し、運転を継続する方針です。
想定を超えた地震による原発事故の危険性は、志賀原発2号機の問題にとどまりません。日本列島が、地震の活動期に入ったといわれ、全国のすべての原発の危険性が問われています。とくに、東海地震の想定震源域の真上にある中部電力・浜岡原発にたいしては地震学者らから強い警告が出されています。
運転の差し止めという、初の判決の意味を重く受け止め、国と電力会社は、耐震性を抜本的に強化する見直しを急がなければなりません。




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