プロメテウスの政治経済コラム

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尖閣諸島問題  中国側の姿勢は頑な  日本共産党・志位提言への疑問  当分、打開は難しいだろう

2012-09-21 19:25:04 | 政治経済

尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐって、日本と中国の両国間の対立と緊張が深刻になっている。日本共産党は、昨日の「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」と題した志位提言で、1972年の日中国交正常化、1978年の日中平和友好条約締結のさいに、尖閣諸島の領有問題を、いわゆる「棚上げ」にするという立場をとった日中両政府の対応を批判している。<日本政府は、尖閣諸島の領有の正当性について、理を尽くして説く外交交渉をおこなうべきであった。「棚上げ」という対応は、だらしのない外交態度だったといわなければならない>(「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」2012年9月20日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫)。本当にそうだろうか。国交正常化、平和条約締結時にこの問題の議論を始めたら、にっちもさっちも行かず、何ごとも進まなかったであろう。

 

尖閣諸島問題に対する中国側の姿勢は頑なである。9月17日に訪中したアメリカのパネッタ国防長官は、18日に梁光烈国防相と会談したのに加え、19日には次期国家主席が確実視されている習近平副主席と会談した。

習近平氏は、「日本国内の一部の政治勢力は隣国やアジア・太平洋地域の国々に残した戦争の傷痕について、反省するどころかさらに悪化させ、『釣魚島国有化』という茶番劇を演出している」と述べたほか、「日本の軍国主義は81年前の満州事変で中国に甚大な被害を招き、米国を含むアジア・太平洋諸国にも大きな傷痕を残した」、尖閣「国有化」の茶番劇は「カイロ宣言やポツダム宣言の国際法的効力に公然と疑問を投げ掛けるもので、第2次世界大戦以降に樹立された戦後秩序に対する挑戦。国際社会は、反ファシズム戦争勝利の成果を否定しようとするこうした日本の企てを決して容認しないだろう」とし、アメリカにも「言動に慎重を期してほしい。釣魚島の主権争いに介入し、矛盾を激化させ、局面を複雑にしてはならない」と警告したという。

 

中国側の姿勢は、はっきりしている。「カイロ宣言」及び「ポツダム宣言」―この二つの文献は戦後の世界秩序の重要な基礎を構成すると共に、敗戦国日本を処置することに関する基本的なアレンジの枠組みを確立した。この二つの文献は、日本が不法に侵略して占領した他国の領土を返還すべきこと、戦後日本の領土の範囲は、本州、四国、北海道、九州の四つの本島と中米英の戦勝国が定める周辺の島嶼だけを含む旨を明確に定めた。 しかし、アメリカは公然と国連憲章及び信託統治問題に関する決議を踏みにじり、1972年の沖縄返還協定で釣魚島を琉球群島と共に勝手に日本に引き渡した。しかしながらアメリカは畢竟するに理屈が通らないわけで、…日米安保条約が釣魚島に適用されると何度も表明した国務省スポークスマンでさえ、(釣魚島の主権が日本に属さないという中国側の主張を)否定できないのだ(9月11日付同日付の人民解放軍機関紙『解放軍報』―浅井基文ブログより孫引き)。

 

アメリカは、日本の領土に関する「カイロ宣言」及び「ポツダム宣言」両宣言とサンフランシスコ対日平和条約との間の不整合を意図的に作り出した。カイロ宣言及びポツダム宣言の時、米中は対日戦争の同盟国だった。ヤルタ協定の時も、ルーズベルトのアメリカとスターリンのソ連は対独戦争を共に戦っていた同盟国であり、ルーズベルトは、対日戦争早期終結のためには、領土不拡大原則を曲げてでも(つまり、千島列島のソ連への引き渡しに応じてでも)ソ連の対日参戦を必要としていた。しかし、対日平和条約の時は、米ソ関係はすでに決定的に悪化して冷戦に突入していたし、1949年に中国大陸に共産党政権が成立し、1950年には朝鮮戦争も勃発して、米中も厳しい敵対関係に入っていた。そもそも対日平和条約が日米安保条約とパッケージであったことが示すとおり、アメリカは日本を反ソ反共陣営に組み込むために、日本の独立回復を急いだのだ。したがって、領土問題についても、「カイロ宣言」及び「ポツダム宣言」に基づく当事国としての約束をすんなり履行する気持ちはなく、それが対日平和条約第2条における曖昧な処理となったわけだ(浅井基文ブログ「領土問題を考える視点」2012.9.12)。

 

カイロ宣言は、「満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スル」ことを定め、ポツダム宣言は、カイロ宣言のこの規定を履行すべきことを定める。これに対して対日平和条約第2条では、日本は「台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」するとしている。中国政府はカイロ宣言に基づき、日本が「盗取シタル一切ノ地域」に釣魚島が含まれるから中国に返還されるとする。これに対して日本政府は、対日平和条約で放棄した「台湾及び澎湖諸島」には、日本が無主先占で取得した、固有の領土である尖閣は含まれていないとする。議論はまったくかみ合わないのだ。

 

そして、中国側の姿勢は、確固としている。アメリカが日本に味方しても断固とした対応をとるという。<…釣魚島の事態がここまで激化した直接の原因は日本の短視眼にあるのだが、アメリカが意識的無意識的に波瀾を助長したことも無関係ではない。…アメリカが中日間で物事を挑発し、「分割支配」をして…漁夫の利を得ようと考えるのであれば、それは計算違いだ。歴史的に、アメリカが中国を押さえようとしても、朝鮮戦争にせよヴェトナム戦争にせよ、勝ったためしがない。ましてや今の中国はとっくに「東アジアの病人」ではなくなっており、人の思いのままになるコマではさらにない・・・釣魚島問題は中国の領土主権にかかわり、中国は寸歩たりとも譲らない。実力においても正義という点においても、日本は中国とは比べものにならない。この問題に関しては、その他の国家が物事を左右するチャンスはない。誰が日本の側に立とうとも勝算がないことは決まっている。これに反して、中米の間では協力できることが非常に多く、アメリカが中国と協力を強めることでさらに大きな利益を図ることができることを、アメリカも熟知しているところだ>(人民日報海外版9月19日)。

 

日本が実効支配し、中国側もそれを認めていた、尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題は、「棚上げ」にするのが、大人の知恵であった。野田政権による「国有化」で寝た子を起こしてしまった今、志位委員長の言うように、外交交渉せよと言われても、双方とも簡単ではないのだ。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今更外交交渉? (6)
2013-01-16 09:45:38
 よく外交交渉で解決を!と仰る先生方に聞きたい。
 以前(多分1970年代初頭)なら可能っだったと考えるが、今になり「外交交渉」等といっても相手にされないよ。
 彼国が何と言ってる?、そう「核心的権益云々」とはつまり「交渉などする余地ない」よ言っているのですネ。
 こうなれば当然我が国としては、「手出しすると火傷するよ、どうかね?」というメッセージを絶えず発信して又、国内の体制(お分かりと思いますが)を堅固なものにすべきと愚考します。
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今更外交交渉? (65【66超えた)のジジイ)
2013-01-16 09:47:48
 名前が中途半端でした。訂正して再度投稿します。
 よく外交交渉で解決を!と仰る先生方に聞きたい。
 以前(多分1970年代初頭)なら可能っだったと考えるが、今になり「外交交渉」等といっても相手にされないよ。
 彼国が何と言ってる?、そう「核心的権益云々」とはつまり「交渉などする余地ない」よ言っているのですネ。
 こうなれば当然我が国としては、「手出しすると火傷するよ、どうかね?」というメッセージを絶えず発信して又、国内の体制(お分かりと思いますが)を堅固なものにすべきと愚考します。
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Unknown (zencyan)
2013-02-20 14:09:17
外交交渉以外に無いではありませんか。粘り強くあらゆる機会をいかし、あらゆるチャンネルを駆使して外交交渉にもっていく。中国は話し合うことを拒否しているわけではない。このまま放置して現状を維持することは不可能で危険です。
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Unknown (Unknown)
2013-11-29 19:57:47
ここを読んではっきりと日本が悪いとわかったよ。
まあだいたい日本に問題があるとは思っていたけど。
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