プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

オスプレイ「安全宣言」  今週にも試験飛行  尖閣問題も何もかも米政府の手の内

2012-09-20 20:03:34 | 政治経済

政府は19日、米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイについて、「特に危険と考える根拠は見出し得ない」と断定し、「飛行運用を開始させる」と“安全宣言”の文書を公表した。米軍は今週中にも岩国基地での試験飛行を開始し、当初方針通り、10月中に普天間基地での本格運用を開始する予定である。オスプレイが欠陥機であることは、米海兵隊がハワイの二つの空港で計画していたオスプレイの飛行訓練を事実上とり下げ、ニューメキシコ州でも6月、オスプレイの訓練をとり下げたことからも明らかである。しかし、従属国日本には特段の配慮はいらない。オスプレイ配備強行に尖閣諸島をめぐる日中間の対立が利用されたことも明らかだ。領土問題が、日中韓やロシアの間で常にこじれるのは、米政府が国益に利用しようしているからである。

 

18日のテレビ報道は朝から異様だった。柳条湖事件から81年目を迎え反日行動が最高潮に達するということで、ワイドショーは反日デモが暴徒化して日本企業や商店を破壊する映像をくり返し流し、いたずらに視聴者の不安を煽るばかりか、東シナ海の出漁解禁で港を出る漁船の映像を使い、それがあたかも尖閣諸島に向かう1000隻の漁船団であるかのようなイメージ操作さえ行っていた(“海鳴りの島から”沖縄・ヤンバルより…目取真俊「尖閣諸島問題を利用したオスプレイ配備強行宣言」2012.9.19)。

米政府は、日本の領土問題について、戦後一貫して、曖昧で無責任な態度をとり続けている。日本に米軍を駐留させ、日本を属国化するのに都合がよいからである。

 

第二次大戦で敗北した日本には、「固有の領土」は存在しない。対日処理方針を扱ったカイロ宣言(1943年12月)、ヤルタ協定(1945年2月)及びポツダム宣言(1945年7月)、そしてサンフランシスコ対日平和条約(1952年4月発効)で、戦後の日本の領土は確定されたからである。ところで、カイロ宣言及びポツダム宣言に関しては米中英3国及びポツダム宣言を受諾して無条件降伏した日本が当事国、秘密協定だったヤルタ協定については米英ソ(ロシア)、対日平和条約については主に米英日が当事国というように、米国はすべての条約の当事国であるが、領土問題で対立している中国やソ連(ロシア)は、対日平和条約の当事国でない。

これら4つの条約の定める日本の領域に関する規定内容に整合性があれば問題は生じないが、アメリカがソ連及び中国を抜きにして条約作成を主導した対日平和条約と他の3条約との間では、対日平和条約にアメリカが意図的に曖昧さを忍び込ませたために整合性がとれていない。尖閣問題を巡って日本と中国がまったく話が噛み合わないのはそのためである。

 

日本の「領域」については対日平和条約第2条で決めており、日本はもっぱらこれを根拠にして自らの主張を行ってきた(日本が当事国ではないヤルタ協定はもちろん、カイロ宣言及びポツダム宣言をも無視する)。しかし、中国もソ連(今のロシア)も対日平和条約の非当事国だから、これには縛られるいわれはない。両国としては、自らが当事国である カイロ宣言及びポツダム宣言(中国の場合)あるいはヤルタ協定(ソ連の場合)に基づいて権利を主張する(浅井基文ブログ「領土問題を考える視点」2012.9.12)。

 

ポツダム宣言8条は、「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等(注:連合国)ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」と定める。つまり、日本の主権が及ぶ領域は、本州、北海道、九州及び四国のほかは、「吾等(注:連合国)ノ決定スル諸小島」に限定されるというのだ。日本はポツダム宣言を受諾して投降したのだから、中国及びロシアとの関係においては、日本としては抗うことはできないというわけである。
即ち、尖閣及び北方4島(そして竹島も)日本の領有に帰せしめる「諸小島」に含めるかどうかは、もっぱら連合国の決定に委ねられるということであり、これら諸島が日本の「固有の領土」であったかどうかは関係ないというのが、中国やロシアの立場である。
もちろん、中国とロシアだけがポツダム宣言にいう連合国ではない。「吾等(注:連合国)」にはアメリカも当然含まれるから、アメリカが尖閣、竹島及び北方4島に関して如何なる立場を取るかによって事態は複雑化する。現在、日本の領土問題が紛糾しているのは、すぐれて、アメリカの態度が曖昧を極めているからにほかならない(浅井基文 同上)。

 

アメリカ政府の態度は、北方4島については日本の主張を支持する。他方、尖閣及び竹島については、いずれか一方の側の立場にも与せず、日中及び日韓が話し合って決めることを支持するという立場だ。そして、これをその時々のアメリカの世界戦略にとって有利なように使い分ける。尖閣問題も何もかも米政府の手の内という所以である。安保条約のもと対米従属を続ける限り、傍若無人の米軍基地被害からの解放も自主的な外交も領土問題の解決もわれわれの自由な意思はすべて米戦略によって阻まれるのだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。