プロメテウスの政治経済コラム

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沖縄県民大会  「歴史を動かす」一歩となるか

2010-04-26 19:03:25 | 政治経済
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の国外・県外移設を求める県民大会が25日、同県読谷村の運動広場であり、約9万人が参加した。自民党に共産党、親子連れに若者同士。党派や世代を超えて集まった人たち。沖縄戦を体験したお年寄りたちの姿も目立つ(沖縄タイムス2010年4月26日 09時55分)。
13年間、県民のきずなを分断してきた米軍普天間飛行場の移設問題。米軍基地の県内「たらい回し」反対で超党派で県民大会が開かれるのは初めてであり、歴史的な集会となった。鳩山首相の「国外、県外移設」の公約と政権交代は、振興策への国費投入という”アメ”で沖縄県民を押さえ込むことの限界を露呈してしまった。
何十年もの間、既成事実として存在してきた「日米安保=基地提供=沖縄」の公式が沖縄県民の闘いから崩れることになるかもしれない。県民大会に参加した共産党の志位和夫委員長は、「米軍基地の県内たらい回しに反対しようと、超党派で沖縄の心が一つになった素晴らしい大会だった。必ず歴史を動かす力になる」とその意義を強調した(「しんぶん赤旗」2010年4月26日)。

 沖縄・読谷村運動広場で開かれた「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移設に反対し、国外・県外移設を求める県民大会」は、沖縄の世論が一つにまとまった節目の大会となった。沖縄県内の政治状況は昨年からことしにかけて劇的に変化した。民主党鳩山代表は昨年8月の衆院選で「最低でも県外」と公約し、県内全4選挙区で現行案を認めない候補者が当選した。名護市長選では同じく現行案に反対する稲嶺進氏が当選した。県議会も与野党が初めて足並みをそろえて県内移設に反対する意見書を可決し、全41市町村長が県内移設に反対している。
沖縄では、11月に知事選がある。知事は公有水面埋め立ての許認可権を持つ。県内世論の9割が国外・県外を求める中で、県内移設容認の知事が誕生する可能性はほとんどない。2日前に大会出席を決めた仲井真弘多現沖縄知事は官房長官らの働きかけを受けて県内移設反対を明言することはなかったものの、鳩山首相に「公約に沿ってネバーギブアップでしっかりやってもらいたい」と注文を付けた。仲井真知事も引き返すことのできない地点まで来たというべきだろう(県内移設に反対する意思表示として参加者が黄色の「かりゆし」を着るなかで、知事は、青いかりゆしで登場したと「産經」は称賛しているが)。
沖縄タイムス 同上より

 沖縄県民の怒りは限界点を超えたというべきだろう。もはや県内移設が不可能なのは決定的で、それを前提にしない限りいかなる解決策もありえない。従来の手法は明らかに限界にきている。
日本政府は、基地利権と振興策という”アメ”によって沖縄県民を分断し、長年、基地被害を受忍させてきたが、これ以上、基地による苦しみは受忍できない、がまんできないという深い思いが、沖縄の人たちにマグマのようにたまって、とうとうそれが噴き出してきたのだ。
鳩山政権は苦し紛れに、名護市辺野古沿岸部を埋め立てる現行案を、一部修正することで元に戻ることも検討しているようだが、「最低でも県外」といった公約の重さを軽く見てはいけない。稲嶺名護市長は辺野古回帰論について「県民を愚弄(ぐろう)するものでとても許せない。海にも陸上にも基地は造らせない」とあらためて反対の誓いを固めている

 地元合意なしに新基地を建設できると思うのは沖縄ではもはや不可能である。しからば、他の移設候補地はどうか。名前が挙がった九州中北部の自治体からはすぐに反対の声が上がった。鹿児島県・徳之島でも拒否の大集会があった。基地利権と振興策にありつくことを考える政治エリートは存在するかもしれないが、海兵隊基地を受け入れる一般国民は日本のどこにもいない。地元に歓迎されない場所に米軍を駐留させないという米国の原則からすると、海兵隊は撤退を真剣に考える時期にきているのだ。

 何十年もの間、既成事実として存在してきた「日米安保=基地提供=沖縄」の公式を、いま沖縄県民は「心を一つ」にして打ち破ろうとしている。普天間基地撤去をめぐる沖縄県民の闘いは、否応なく日米安保の存在それ自体を問う声とならざるを得ないだろう。それは又、日米安保体制を惰性のように支持し、沖縄県民に犠牲を転嫁する本土の日本国民自身のあり方を鋭く問うものとならざるを得ないのだ。

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