プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「事業仕分け」第2弾   「政治ショー」と新自由主義的「構造改革」の継続

2010-04-24 21:54:41 | 政治経済
政府の行政刷新会議による「事業仕分け」第2弾が始まった。鳩山政権は、首相や小沢民主党幹事長の「政治とカネ」の問題や沖縄の米軍普天間飛行場移設問題の行き詰まりなどで、支持率の低下に歯止めが掛からない。「子ども手当が支給されれば支持率も下げ止まる」(首相周辺)と見る向きもあるが、高速道路の新料金制度をめぐる迷走も加わり、「事業仕分け」は政権浮揚に向けた「頼みの綱」だ(「読売」4月24日15時24分配信)。
それだけに、官僚や独法たたきのパフォーマンスが過熱することだろう。

 「事業仕分け」とは簡単に言うと、「さらば自民党型利益誘導政治」ということだ(二宮厚美「民主党政権の軌跡と現局面の特質」『季論21』2010・04 第8号)。
先の総選挙で民主党が自民党に圧勝した主な要因は、二つある。一つは、いうまでもなく小泉政権いらい急進化した新自由主義的構造改革に対する世論の反発・批判・不満の高まりである。民主党は、「構造改革離れ」した民意・世論を一定程度反映した政策をマニフェストに書き込み、勝利することができた。いわば「さらば新自由主義」の路線である。第二は、民主党マニフェストが「コンクリートではなく人間を大事にする政治」をスローガンに掲げ、自民党のお家芸であった利益誘導政治からの離脱、つまり「さらば土建国家型政治」の路線を打ち出したことである。
一方での新自由主義的構造改革に対する反発、他方での「利益誘導=土建国家型政治」に対する批判、これら二つの世論を背景に鳩山政権が誕生したのだ。
こうして、鳩山政権は、これらの二本のレールの上を走りはじめることになる。

 「鉄の三角形」と呼ばれた利益誘導、利権の政治構造と、それが生み出す税金の巨大な無駄遣いに対する批判は、国民の鬱屈した感情をくすぐる。問題は、この「さらば利益誘導政治」の後につづく先に何があるかである。
現代日本で、官僚たたきなどの「政治ショー」を演じ拍手喝采を得たのは、皮肉なことに、新自由主義的構造改革の権化=小泉政権そのものであったつまり、「さらば自民党型利益誘導政治」のレールの行き先は、ほかならぬ新自由主義、いましがた別れたはずの新自由主義なのだ。
こうして、鳩山政権は、「さらば新自由主義」という「脱・新自由主義」のレールと行き先が新自由主義という「親・新自由主義」の二本のレールを走ることになる。民主党の政策や路線が統一性や整合性に欠け、きわめて可変的・流動的なのは、ねじれや矛盾を生む二本のレールを走ろうとしているからである。

 「さらば利益誘導政治」がなぜ新自由主義に行き着くのか。ここには、日本の特殊な事情がある
戦後日本では、ヨーロッパのような福祉国家が形成されず、日本型開発主義国家が貧弱な福祉国家を補完することになった。日本型開発主義国家とは利益誘導政治のもとでの土建国家プラス大企業を中心にした企業社会型統合国家のことである
欧米の新自由主義の歴史的使命は何よりもまず、戦後福祉国家を解体・縮小することであった。これが日本では、日本型開発主義国家の解体・縮小となったのだ。かつて小泉首相が「自民党をぶっ壊してでも構造改革を進める」といったのは、このことを意味していた。
なぜ、新自由主義がこのような戦略に向かったかといえば、日本の大企業がグローバル化のなかで本格的な多国籍企業に変貌し、その国際競争力を強化するには、土建国家も企業社会も福祉国家もすべて邪魔者扱いするようになってきたからである(二宮厚美 同上)。

 かくして、日本の新自由主義は、鳩山政権よりもはるか以前から「さらば利益誘導政治」であった。そして、この新自由主義的な「さらば利益誘導政治」のレールは、いわば民主党のもともとの主張、故郷であり、地肌でもある。民主党にとっては、「さらば新自由主義」のレールの方は、近年の自公離れの世論の風を受けた選挙戦術なのだ。
これら「親・新自由主義」と「脱・新自由主義」の二つのレールは、互いに異質であり、正反対の方向に向かい、したがって両者が動き始めると深刻なねじれを呼ぶことになる。
よく言われるように、民主党は雑多なメンバーの寄り合い世帯からなる。主導層は、新自由主義派であるが、個別福祉重視の中堅層もいれば、小沢軍団のように選挙第一で「脱・新自由主義」的マニフェストを掲げるかと思えば、自民党顔負けの利益誘導型開発政治の手法も使う。

 鳩山政権の「脱・新自由主義」が統一性・整合性をもって福祉国家に向かわず、「親・新自由主義」にねじれるのは、民主党の限界に由来する。民意・世論を尊重しようとしても常に新自由主義寄りのバイアスがかかるのだ。
「事業仕分け」という「政治ショー」は、まさに、その象徴である。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
応援しましょう (大和)
2010-04-25 08:57:06
行政腐敗は、官僚と保守政党が、税金泥棒の集団であったことを明らかにしています。
国民を騙し愚民化し高額な給与と年金を取り、更に天下りして税金を盗みます。公益法人に親族を雇用し補助金を垂れ流し、親族企業に業務を発注し徹底的に国民を食い尽くしてきました。その結果が一千兆円の財政赤字です
騙されたと思って「おバカ教育の構造」(阿吽正望 日新報道)を読んでみて下さい。愚民化政策によって、子供を、不登校、引きこもり、ニート、失業者にされ、経済を破壊されたた日本人の悲惨で哀れな姿がはっきり分かります。すべての人が読むべき本です。
事業仕分けを無視しようとする利権メディアやCIA工作に騙されず、民主党を支援して国を改革しましょう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。