プロメテウスの政治経済コラム

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厚労省局長逮捕 “福祉の心”を失った人物を障害者福祉のエキスパートと持ち上げる異常

2009-06-16 16:32:33 | 政治経済
障害者団体向け郵便の不正事件で、厚生労働省の村木厚子局長(53)が大阪地検特捜部に逮捕された。自称障害者団体「凛(リン)の会」(解散)に対し、部下の上村(カミムラ)勉容疑者らとともに偽障害者団体証明書を発行、不正割引に加担した容疑である。事件の舞台になった障害保健福祉部はもともと旧厚生省系の部署。しかし、旧労働省の障害者雇用対策課長を務めた村木容疑者は2003年8月、障害福祉行政の立て直しのため、同部企画課長に抜てきされ、05年10月の障害者自立支援法成立に尽力した、という(「読売」6月14日19時32分)。障害者自立支援法とは、障害による不自由さを補う支援を受ければ受けるほど多くの“益”を受けているとしてフィーの支払いを要求されるというとんでもない制度である。障害者福祉のための制度を食い物にした今回の郵便不正事件の背後に「自立支援法」の国会対策があったとすれば、村木局長とは“福祉の心”を失ったとんでもない人物である。このような人物を「将来の次官候補」との呼び声が高い、「立派な人、信じられない」(「時事」6月14日20時27分)という厚生労働省職員は、“福祉の心”を失った同省の最近の姿を象徴している。

「しんぶん赤旗」2009年6月16日より

実態のない自称・障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)を郵便割引制度の適用団体と認めた偽の証明書発行をめぐり、障害保健福祉部企画課長(当時)の村木容疑者らが逮捕された事件で、民主党国会議員から同会への対応を頼まれたとする当時上司の元障害保健福祉部長(退職)が大阪地検特捜部の任意の聴取に、障害者自立支援法への流れをつくるため、議員の依頼に応じたという趣旨の証言をしていることがわかった04年当時、厚労省の障害保健福祉部では、元部長や、部下の企画課長だった現在の雇用均等・児童家庭局の村木局長らが、福祉サービス利用者に原則1割の負担を求める障害者自立支援法の成立に向けての責任者として、与野党の国会議員や障害者団体との折衝を続けていたとされる(「朝日」2009年6月16日3時3分)。村木企画課長は法案成立に向けて、先頭に立って奮闘していたのであろう。
関係者によると、偽証明書は2004年6月、同省障害保健福祉部企画課長の名義で自称障害者団体「凛の会」に交付された。証明書は同会発行の定期刊行物が障害者団体向けの郵便料金割引制度を利用するのに必要な書類だが、村木容疑者らはそのための申請書類を受け取らず、発行に必要な内部決裁も行わなかった疑いが持たれている。特捜部の調べに対し、村木課長の部下で担当係長だった上村容疑者は「課長の指示を受け、自ら証明書に課長印を押した」などと容疑を認めている。さらに偽証明書を凛の会に発行した後、形式的に書類をそろえた方がいいかと尋ねたところ、「面倒なことになるから気にしないで下さい」などと言われ、「(この件は)もう忘れるように」とも言われたという(「読売」2009年6月16日03時03分)。

新自由主義「構造改革」の進行とともに、社会福祉の原局である厚生労働省の“福祉の心”がドンドン失われた。小泉・竹中「構造改革」で、福祉サービスを市場で買う商品とすることが徹底的に行われた。その象徴が「障害者自立支援法」である。障害者からサービス料を取り立てたら、これはかなわないと自立するとでもいうのか!
逆に、障害が重い人ほど重い負担をかけることは、生きる意欲を奪っている。
先天性脳性まひの障害を持つ男性は「自立支援法になって一番悲しかったことは作業所で働いていた仲間たちが利用者負担を理由にやめていったこと」と発言。自立支援法で生活が苦しくなり、年金生活の両親から経済支援を受けないと生きていけないと語っている。脳性小児まひの子どもの母親は、生活すべてにおいて介助なしでは生きられない状況を説明し、自立支援法の区分認定調査を通じて「生きていることが否定されるように思え、涙が流れた」「施設への報酬の日払い方式は人間に対する対応なのか。強い憤りを感じる」と心情を切々と訴えている。
障害者にとって、生きるために重い負担がかけられるというこの制度を推進した人物を、私は許すことができない。なにが、キャリア組のエリートか!

公務員は全体の奉仕者といわれる。全体の奉仕者というときの「全体」とは何か。国、そのときの政権が決めたこと、上司の職務命令に忠実に働くことが、優秀な官僚なのか。上司のいうことに無条件に従うまえに、国民主権の憲法の精神に従う義務があるだろう。「将来の次官候補」との呼び声が高いといわれる村木局長は、自己の成果をあげるためには、障害者が生きることに課金をするようなことをしても、障害者福祉のための制度を食い物にするような行為に加担しても恥じない、ただの出世欲だけの人物だというのは、言いすぎだろうか。そして、そのような人物を天まで持ち上げる厚生労働省はどこか狂っているのではないか。

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