プロメテウスの政治経済コラム

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「骨太の方針2009」 社会保障削減路線を巡って大混乱 財界支配から逃れなれない自公政権

2009-06-25 20:12:17 | 政治経済
麻生内閣が2009年の「経済財政改革の基本方針」(「骨太方針」)を決めた。小泉「構造改革・経済財政改革」の中の歳出改革の中核として、社会保障費の自然増を毎年2200億円削減する抑制路線が02年度から11年度まで敷かれた。途中でやめることは、財界に対する裏切り行為である。しかし、総選挙を前にして、支持基盤の崩壊にうろたえる自民党議員の突き上げで、その扱いは二転三転した揚げ句、与謝野馨財務相が「来年度は削減しない」と表明してようやく決着した。「来年度予算編成では適用しない」が11年度以降は「06年骨太方針」の歳出改革路線は放棄しませんという苦しい決着となったのは、財界支配から逃れなれない自公政権としては当然の成行きであった。


「しんぶん赤旗」2009年6月24日付より
自公政府は社会保障の抑制路線によって、社会保障のあらゆる分野で負担増と給付カットを進め、支えを必要とする国民を制度から排除してきた。「医療難民」「介護難民」が大きな社会問題となり、生活保護の受給資格があるのに実際に保護を受けている人は2割だけで8割が排除されている。病院に行くと医療費の窓口負担が通院・入院とも3割などという国は、日本だけである。定額負担のある国でも、低負担に抑えられている。障害者が必要なサービスを受けるのは、「個人の利益」だから1割負担せよなどという国も日本だけである。もちろん75歳以上のお年寄りを姥捨て山に隔離する制度などは、財界の支配力が異常に強い日本以外では思いもよらない。

自民党議員の中から、社会保障にはもう削れるところなどないという声が出始めている。まさに、小泉が「歳出をどんどん切り詰めていけば、『やめてほしい』という声がでてくる。『増税してもいいから、必要な施策はやってくれ』という状況になるまで、徹底的にカットしないといけない」と述べた狙いどおりある。 見落としてはならないのは、財界の要求は、「税・財政・社会保障制度の一体改革」である。企業の社会保障負担が社会保険料や法人税負担になることは、絶対に許されない。社会保障費用は、企業とはかかわりのない消費税増税で賄われなければならない(企業は中間段階として預かり消費税と支払い消費税との差額を納付するだけでマイナス過多の場合は還付されるので自己はなにも負担しない)自公政府が社会保障の抑制路線と消費税の増税を一体不可分のものとして追求しているのは、財界要求を忠実に実行しようとしているからである。社会保障を削減から拡充に転換するには、ゆきづまった、財界支配の自公政治そのものを転換するしかない。

しかし、政権が民主党となったら、その転換ができるのか。同じく財界の献金に支配される民主党は、政権をとって4年間は消費税増税を凍結するといっているが、どこまで持ちこたえられるかは時間の問題である社会保障制度がいくらか修復されても、その財源が、財界・大企業のための減税財源も含めてすべて消費税の増税にしわ寄せされたら、元も子もない。社会保障は所得再分配だから意味があるのであり、貧乏人同士が傷を舐めあって社会保障は成り立たないその財源は、消費税でなく、数々の優遇税制で巨額の減税を受け、欧州に比べ格段に低い社会保険料負担に甘えてきた財界・大企業に対し応分の負担を求めること、所得税・相続税の最高税率引き下げや証券優遇税制など、行き過ぎた減税を受けてきた大資産家に対する応分の負担でなければならない。企業献金で支配される民主党には、単独では無理な課題である。ここは共産党がかなりの比重で議席を占めなければ、財界の政治支配と国民の窮乏化が更に続くことになる。

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