プロメテウスの政治経済コラム

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「エコカー減税」 燃費悪いほど減税  志の低い日本の支配層  「環境国会」を開け!

2009-06-24 19:22:32 | 政治経済
2009年度補正予算で盛り込まれた3700億円のエコカー購入補助金制度の受け付けが6月19日に始まった。09年度予算の2100億円のエコカー減税(環境対応車普及促進税制)創設に続くものである。「エコ減税」は、「厳しい経済情勢下、環境性能に優れた自動車に思い切った減税を講じる」と、「不況」「環境」をうたい文句としているが、その中身は「環境に優しい」のうたい文句からは遠くかけ離れたものだ。先の京都議定書以降 2020 年までの温室効果ガスの削減目標(中期目標)の設定に見られるように、環境問題に対応する日本の支配層の志は恐ろしいくらいに低い。結果に責任を負わない無制限な生産活動を本質とする資本主義システムのありようが世界的に問われているときに、なお利己的な国際競争力にこだわる日本の財界・大企業とその政治的代理人たちは、世界の笑いものである。われわれ日本人は、1970年11月末に臨時国会(第64回国会)を開き、当時の公害対策を求める世論、社会的関心の高さにこたえて公害問題に関する集中的な討議を行い、公害関係14法案を一気に可決・成立させ、その後公害防止技術を革新的に進歩させた経験を持っている(いわゆる「公害国会」)。地球温暖化の危機はいまのところまだ緩慢である。しかし、取り返しがつかなくなってからでは大変なことになる。地球環境を守りたいというすべての人びとの叡智を結集するための「環境国会」を是非開くべきだ。「環境国会」を開け!の声を大きく広げようではないか

エコカー減税は、国土交通省が定める排ガスと燃費の基準値をクリアした自動車の自動車重量税や自動車取得税を、基準に応じて50~100%減税するものである。免税率100%、75%、50%の条件がそれぞれ定められている。
一見すると“環境性能に優れた自動車に対する減税”のようだが、「プリウス」「インサイト」といったハイブリッド車に限らず、売り上げ上位の人気車種はもれなく対象となる代物である。対象となる車種は普通車で62車種(全体の4割)、軽自動車で16車種(同5割)に上る(日刊自動車新聞5月18日付)。国土交通省は9段階に分けた車体重量ごとに燃費基準を設定している。もともとその基準が重い車に甘く設定されているため、排気量が多く環境に悪影響を及ぼす車種ほど減税率が高くなるという出鱈目さであり、ハイブリッド車であれば燃費の性能に関係なく免税されるという甘さである。
燃費値(燃料1リットルあたりの走行距離=キロ)が大きいほど環境への負荷が少ないと思うのだが、24・5の「アルト」が50%減税なのに対し、11・2の「MPV」が75%減税、12・2の「レクサス」が100%減税になるのだ。なかには、「エスティマ」のように、後付けのサンルーフや音響装置で車体重量が増えると、燃費値は12・4から11・8に悪化するにもかかわらず、減税率は50%から75%へアップするケースまであるという(「しんぶん赤旗」2009年6月21日)。

“エコカー”減税は、単なる大義名分にすぎない。その実体は、販売不振に陥った自動車大企業を支援するための販売促進税制なのだ。租税特別措置の原案は、大体財界・大企業の税務担当者と主税局で立案されると考えればよい。重い車に甘い燃費基準をつけるのは、高級車を買う人に有利なように仕組み、田舎で車がないと生活できないから、仕方なく中古の軽自動車に乗っているような人は念頭においていない。購入補助制度も同様である。同制度は、13年以上使用した車を廃車し「2010年度燃費基準達成車」に買い替えると、普通車は25万円、軽自動車は12・5万円を補助するものである。廃車を伴わなくても一定の燃費基準(10年度プラス15%)さえ達成していれば、普通車10万円、軽自動車5万円を補助する(「しんぶん赤旗」同上)。
地球温暖化が問題になっているときに、なぜ車の利用を奨励するのか。麻生・自公政権が、高速道路の「千円乗り放題」や首都圏3環状道路建設などCO2排出増につながる政策に熱心なのは、かれらが財界・大企業の政治的代理人であり、人類的課題よりもトヨタ、日産、ホンダなどの儲けの方が大事だと思っているからである。

環境対策は、公害問題のように国民の大企業への糾弾は直接的でない。資本主義体制の存亡の危機だといっても、能天気な日本の経営者には、その危機の真の意味が理解できない。日本経済は、国内消費需要の停滞を背景に、自動車産業、電機産業の輸出に極端に依存するモノカルチャー的産業構造に陥ってしまっている。このような産業構造は、そのままでいいのか、もっと一次産業や三次産業を充実させるべきでないか、大量生産・大量消費・大量廃棄という今の社会経済システムを改めて、持続可能な人類と地球の物質代謝をどう再構築するか、地球環境を守るためには、社会による理性的な経済活動への規制が求められている。個々の資本の利潤追求欲に経済をゆだねておくわけにはいかない。すべての人びとの叡智を結集するために、「環境国会」を開け!の声を大きく広げようではないか。

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