プロメテウスの政治経済コラム

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バイオ燃料ブームの衝撃   人と車が食料を奪い合う!

2008-05-01 19:07:54 | 政治経済

食料の権利に関する国連特別報告官ジャン・ジクレール氏は4月28日ジュネーブで記者会見し、米国と欧州連合(EU)が食料となる穀物をバイオ燃料生産に使うことによって世界的食料価格の爆発的高騰を招くという「犯罪的な道」をたどっていると批判した(「しんぶん赤旗」5月1日)。
バイオ燃料とは生物体(バイオマス)の持つエネルギーを利用したアルコール燃料、その他合成ガスのこと。石油のような枯渇性資源を代替しうる非枯渇性資源として注目されている他、二酸化炭素の総排出量が増えないと言われていることから主に自動車を動かす石油燃料の代替物として欧米で一種のブームとなっている(「バイオ燃料」『ウィキペディア(Wikipedia)』)。
ジュネーブで記者会見したジクレール氏は、米国が昨年、生産したトウモロコシの三分の一をバイオ燃料に使い、欧州は輸送用燃料の10%をバイオ燃料にしようと計画していると指摘。米欧が追求する燃料政策が、現在の食料危機の原因の一つだと主張し、バイオ燃料生産の五年間凍結を提起した(「「しんぶん赤旗」同上」)。

自動車一台を満タン(50リットル)にするのに、トウモロコシが110キロ必要といわれている。これはトウモロコシを主食とする国々の一人あたり年間消費量に匹敵する。いわば「人と車が食料を奪い合う」ということだ(真嶋良孝・農民運動全国連合会副会長『いまこそ、日本でも食糧主権の確立を!』本の泉社)。
バイオ燃料は、ナタネや小麦、トウモロコシ、サトウキビなど植物から製造される。あくまで理論上の話であるが、植物が取り込んだ二酸化炭素を燃料にして排出するのだから差し引き排出量は0というわけだ。しかし、生産プラントの建設や、生産、輸送(2007年7月現在、日本で販売されているバイオ燃料はフランスから輸入されているものである)の各段階でどれほど燃料が消費され、二酸化炭素が排出されるか、実際に大量に生産を始めてみなければ分からない。プラント建設、あるいはバイオ燃料の元となる穀物を栽培する用地確保の為に森林を伐採するのでは元も子もなくなってしまう。バイオ燃料を作るためには、農薬や化学肥料、農業機械の燃料、さらに工場の燃料などが必要である。バイオ燃料を10リットル製造するのに、石油が6・7~9リットルが必要ともいわれている。バイオ燃料ブームで世界第二のバイオ燃料生産国(一位はアメリカ)であるブラジルでは、サトウキビの栽培面積拡大のあおりでアマゾンの熱帯雨林がどんどん破壊されているという。バイオ燃料は「地球にやさしい」などととても言えない(真嶋良孝 同上)。

バイオ燃料ブームを米アグリビジネスや石油メジャー、ヘッジファンドなどの儲けのための投資先として提供したのは、ブッシュ大統領である。ブッシュ大統領は、昨年1月の一般教書演説で「バイオ燃料を三倍に増やす」とブチあげた。その背景には、石油に続く次の資源にたいするアメリカ資本の投資欲求がる。ブッシュの方針を実現するためには、現在のトウモロコシ生産の全部をバイオ燃料にあてても足りないくらいである。トウモロコシは、利用範囲のすそ野の広い穀物である。中南米とアフリカの大半の国では主食である。日本では、畜産の飼料原料の50%はトウモロコシであり、その9割はアメリカ産である。アメリカがトウモロコシの供給制限をし、価格をつり上げることは、大いにありうることだろう。すでに、肉や牛乳、卵などの値上がりが始まっている(真嶋良孝 同上)。

欧米の大資本が、「飢餓の大陸」アフリカでバイオ燃料生産に触手をのばしていることにも注意を払わなければならない。いま、原油高騰の影響で小麦、大豆などの穀物市場価格が3倍近く跳ね上がり、食料をめぐる暴動が37カ国で発生している。バイオ燃料ブームが世界の飢餓を増長しているとするならば、温暖化防止のためのバイオ燃料の拡大は、中止すべきだ。米欧資本のバイオ燃料戦略にのってはならない(真嶋良孝 同上)。


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