プロメテウスの政治経済コラム

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「米軍違憲」伊達判決の破棄を最高裁に介入した米国政府  解禁文書で判明

2008-04-30 16:43:09 | 政治経済
4・17名古屋高裁イラク自衛隊派兵「違憲判決」を「傍論だ」と平静を装う日本政府。そもそも自衛隊は、米軍の日本占領を合法化した安保法体系の申し子である。米軍に治外法権を与える安保法体系は、国の最高法規としての憲法規範を体系化した憲法法体系とは、絶対に両立しない。この矛盾を法律家として当然に憲法の立場から「違憲」と断じた裁判官が今度の青山邦夫裁判官のほかに過去2人いた。砂川事件の伊達秋雄判決官と長沼ナイキ基地訴訟の福島重雄裁判官である。ところが、伊達判決に怒り狂ったマッカーサー(GHQマッカーサー最高司令官のおい)駐日米大使(当時、以下同)が、同判決の破棄を狙って藤山愛一郎外相に最高裁への「跳躍上告」を促す外交圧力をかけたり、最高裁長官と密談するなど露骨な介入を行っていたことが29日、機密指定を解除された米公文書から分かった(中日新聞2008年4月30日)。

解禁文書は、国際問題研究者の新原昭治氏が今月、米国立公文書館で入手したもの。米軍駐留違憲判決に対する米側の衝撃ぶりと、今日に続く、憲法法体系と相容れない安保法体系を無批判に受け入れる日本側の異常な対米従属ぶりがよく分かる。米国からの指令どおり、日本政府は、過去に一例しかなかった最高裁への「跳躍上告」(地方裁判所などの一審判決を直接最高裁に上告すること)を行った。「日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を破棄すること」を求めた大使の要求に応えたものである。米大使と密談した当時の田中耕太郎最高裁長は、直接裁判長を務め、当時三千件もの案件を抱えていたにもかかわらず、砂川事件を最優先処理、「迅速な決定」へ異常な訴訟指揮をとった。そして期待されたとおり、一審判決を破棄、東京地裁に差し戻した(「しんぶん赤旗」4月30日)。

昭和32(1957)年7月、政府は東京・砂川町の米軍立川基地拡張のため、装甲車、武装警官を動員、基地内の民有地に立ち入り、測量を強行した。その際、反対デモに参加した学生、労組員七人が境界のサクを破って飛行場内に入り、刑事特別法違反で起訴された。七人が基地内に入ったのは、わずか四、五メ-トルくらいだった。普通なら、軽犯罪法違反程度の事件である。だが、米軍基地内ということで、憲法法体系を超法規的に覆す安保条約に基づいて作られた、罰則の重い刑事特別法が適用された
安保法体系には、米軍用地の使用・強制収用に関する特別措置法、航空法の特例に関する法律、民事特別法、刑事特別法、道路運送特例法、所得税特例法、電波法特例法等々、全部で40本超の法律・規則や特別協定などがある。憲法違反の実態があっても超法規的に米軍の治外法権を保障している。

これに対して、東京地裁の伊達秋雄裁判長は、1959年3月30日、全員に無罪の判決を言い渡した。「米軍の日本駐留は戦争放棄を規定した憲法九条に違反する。したがって米軍の駐留を認めたことに伴う刑事特別法は違憲であり、日米安全保障条約には憲法上疑義がある」―国の最高法規である憲法法体系を蹂躙する安保法体系は認めない―極めて明快である。明快な論理は力で押しつぶすしかない米大使は、伊達判決の翌日早速、藤山愛一郎外相に閣議前の早朝に秘密会談を申し入れている。日本政府は大使の指令どおり、4月3日に跳躍上告した。
最高裁は同年12月16日、日米支配階級の指示通り「駐留米軍は合憲。日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」として原判決を破棄した。

田中耕太郎最高裁長は、日米支配階級の要求に応えて、自ら違憲立法審査権の限界(統治行為論)を採用することによって、安保法体系が再び憲法法体系によって裁かれることがないようにした憲法第七十六条(3) 「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行なひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」が最高裁長官自身によって死文化された。こうして、司法の世界では、誰もが米軍や自衛隊に対する憲法判断を回避し、いたずらに既成事実のみが積み重ねられてきたのだ。今回の名古屋高裁「違憲判決」がいかに「画期的」であるかわかろうというものである
ただし、退官のときにだけしか「正論」を言えない現状を私たちは忘れてはならない。正しい事を正しいと言うことすら、周りを気にしなければならないような日本の現状である。

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1 コメント

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時代は分水嶺を越えた (遂犯無罪)
2008-05-02 22:29:25
いよいよ胸突き八丁 壊す正念場・・公事三年といいますが投獄から12年の歳月が流れます
ブログ・司法岡目八目 鈴木氏からのメールを無断掲載する昂りです
http://suzuki-okame.cocolog-nifty.com/blog/


最近、司法での喧嘩は時間との争いだということをつくずく感じています。
政治では出来事は腐敗するけど、論理が支配する司法では事件が腐る
ことはありませんね。だから、しつこく、しつこく事件として持続していくこ
とが重要なのではないでしょうか。政治では「正義は必ず勝つ」とは限り
ませんが、司法では当事者が事件として持ち続ければ、必ず勝利します。
そう考えると、矢口洪一という人物は司法官ではなくて政治家だったと評
価すれば納得できます。
最高裁追及の最終局面が、6月の国会会期終了時か、7月の洞爺湖サ
ミット終了後か、いずれかと想定していますが、8年間追及して来たこと
を思えば、1カ月や2カ月のズレは我慢しなければならないでしょう。
あなたの事件について詳しくは分からないのですが、司法権力が偽装
隠蔽しなければならない事件のようですね。
正義は必ず勝ちますから頑張ってください。
5月2日 鈴木英夫

 
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