プロメテウスの政治経済コラム

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国会、60日間以上延長へ   注目される「西松事件」の初公判と総選挙の時期

2009-05-29 20:41:29 | 政治経済
自民、公明両党の幹事長、国対委員長らは29日午後、6月3日に会期末を迎える今国会の会期延長問題について国会内で協議、会期を60日以上延長することを決めた。これを受け、首相は1日に太田昭宏公明党代表と会談し、延長幅を正式決定する。
会期延長の目的は言うまでもなく、2009年度補正予算の関連法案や海賊対処法案など重要法案の確実な成立と与党にとって有利な解散時期のフリーハンドを握ろうということだ。安倍、福田、麻生と国民の審判を受けることもなく、郵政選挙の3分の2議席を最大限悪用して、とうとう任期ギリギリまで反国民的政治を続けてきた。「すみやかに解散して、国民の信を問へ」というのが、国民の声である。
このような中で、「西松事件」の被告が保釈され、捜査は事実上終結した。結局これで、自民党二階俊博氏らに切り込まないことが、ほぼ確定的である。「国策捜査」の批判があるなかで注目されるは、初公判開始と総選挙の時期である。

27日の麻生太郎首相と民主党の鳩山由紀夫代表の党首討論は、すこぶる人気が悪い。サミットに行きたいから首相を続けている麻生首相。この人物を引きずり降ろす活力もなくなった劣化消却寸前の自民党、それに対して明確な対抗戦略もなく、ただ付き合っている民主党の歯がゆさ、物足りなさ。愚にもつかない党首討論より、即刻解散しろが国民の大多数の声だろう。
西松建設からの違法献金問題について、麻生首相が「(西松事件の)責任をとったというが、(小沢一郎前代表が)代表代行というのが責任のとり方なのか。国民目線では理解し難いのが実感だ」と攻撃すれば、鳩山氏は「そちらにも(政治資金規正法を犯した人が)たくさんいる」と反撃してみせるが、党内に金権疑惑を抱える者同士の泥仕合に終始しただけ。両者とも「国民目線」を強調したが、大企業の雇用破壊や社会保障切り捨てで危機的状況に陥っている国民の暮らしや雇用の問題についての政策論議はほとんどなし。
「これで党首討論だといわれたら、国民の皆さんにもったいない。本当に残念でならない」(鳩山氏)と嘆いてみせたが、嘆きたいのは、45分間も国民不在の討論を見せつけられた国民の方だ(「しんぶん赤旗」2009年5月28日)。

総選挙の時期がズルズル延びるなかで注目されるのが、5月1日の西松建設・国沢幹夫前社長の保釈決定と5月25日の小沢代表・大久保隆規公設第1秘書の保釈決定である。東京地検は、大久保秘書の場合は、決定を不服として同地裁に準抗告したが、国沢前社長の時には、準抗告の手続きすらとらなかった。被告を保釈してしまえば、疑惑の国会議員らと接触し、証拠隠滅の恐れがある。したがって、国会議員を巡る事件の場合、検察は通常、地裁に対して保釈決定の不服申し立ての「準抗告」を行う。国沢前社長の保釈決定に際し準抗告の手続きすらとらなかったということは、二階氏側らに対する強制捜査が見送られることが決定的であるということだまた、大久保秘書が、25日から1日遅れ(検察側の「準抗告」があったため)の26日に保釈されたということは、事実上これで捜査が終結したということを意味する。このままだと、「不公正な権力の行使」だとの検察批判は免れない

小沢氏側だけへの強制捜査を正当化するためには、検察は、初公判の冒頭陳述でゼネコン業界での小沢氏側の強大な影響力、関与などを指摘せざるを得ない。もしこれが総選挙前に行われたら、民主党への打撃は、はかり知れない。
小沢代表は5月11日、突然民主党代表を辞任した。そして民主党の選挙担当の筆頭代表代行に就任した。大久保被告の弁護士が東京地裁に保釈を請求したのが5月21日。検察の捜査終結、初公判開始の時期、総選挙実施時期を小沢代表はどう読んだのだろうか。検察は、「国策捜査」だとの批判を受けても、総選挙前に初公判開始にもっていくのか、それとも初公判は総選挙の後か。注目される「西松事件」の初公判と総選挙の時期ではある。

しかし私たちの本当の願いは、自公政治の中身――多国籍大企業とアメリカ政府が余りにものさばりすぎ、庶民の暮らしや平和を危うくしている――ことを変革することであって、民主党政権への政権交代が行われさえすればよいというものではない。選挙担当の小沢代表代行は、選挙のときは、自公政治に対抗する術を知っているかもしれないが、決して民衆を代表する政治家ではない
民主党は、もともと支配層が望む二大保守政党制の一角を担う役割を背負った政党である。民主党への政権交代が実現すれば、自民党と協力して、財界・アメリカ政府が望む消費税の増税(法人負担の軽減)、憲法の改正などの「改革」を実現するだろう。そして、国民の批判の声が国会に届きにくい比例代表議員の定数削減で選挙制度を非民主化したうえで二大保守政党制の確立を目指すだろう。自民党の金権腐敗を見逃す検察は怪しからぬが、民主党に政権交代が実現すればよいというものでもないのだ

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1 コメント

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感想 (無名)
2009-06-02 00:38:09
西松建設違法献金事件により小沢元代表民主党と自民麻生政権の立場は逆転した。
そして小沢元代表を支持する民意にとっては痛手だろうわかる気がする。
しかし今回もう少し小沢元代表に対する批判は大きいものであると思っていたが妙に静かであったのが気に入らない。
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