プロメテウスの政治経済コラム

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ジブチでの自衛隊基地建設  日米地位協定の不平等を今度はジブチに押し付け

2010-07-21 22:17:21 | 政治経済
自衛隊が米軍の目下の同盟軍として、海外で働く体制が急速に整えられつつある。グローバルな軍事介入をする米軍はしばしば国際法を無視した超法規的行動をとる。その無法者アメリカとの軍事一体化を進め、自衛隊が海外に展開することになれば、今度は日本自身が、国際法を、あるいは他国の主権を侵害する行動に踏み込んでいかざるを得ない。ソマリア沖に派兵された自衛隊が隣国ジブチでやろうとしていることは、まさにそれである。

政府は、「海賊対処法」にもとづくソマリア沖での自衛隊の活動期間を、1年延長することを決めた。一方で、来年3月完成予定で、そのための自前の基地を隣国のジブチに40億円かけて建設中である。ジブチでの基地建設は自公政権が昨年固めたものを、民主党政権が引き継ぎ、具体化するものだ。「海賊対処」活動に名を借りた自衛隊派兵の長期化によって日本の軍事的力の誇示が狙いである。
日本やアメリカなど主要国が多数の軍艦や航空機を投入しても海賊行為を減らせるどころか、海賊被害はむしろ広がるばかりである。各国の軍事的プレゼンスの意地の見せ合いだけであって、もともと本気で「海賊対処」を考えているわけではない。ところが、 読売新聞(2010年7月20日)によれば、パトロールを行う各国艦船が日本政府に対し、インド洋で洋上無料ガソリンスタンドを提供したように、補給艦による給油の要請をしてきているという。米軍の目下の同盟軍を務めていたら碌なことがない。

自衛隊の海外派兵が進むと、当然、派兵先国との地位協定が問題となる。今や日本にとって地位協定とは、日米安保上の地位協定だけを意味しない。派兵先国と日本が、自衛隊と自衛隊員の法的地位を定める地位協定を結ぶ時代になったのだ。
周知のように、日米地位協定は、さまざまな「密約」によって、米軍が直接占領していた時代の「治外法権」を米軍・軍属に譲与する不平等極まりないものである。
この不平等協定を日本政府は、今度は、ジブチに押し付けようとしている。
ジブチへの派兵に伴い日本政府が昨年ジブチ政府と結んだ地位協定は、基地の保護のために自衛隊が「必要な措置」をとることや刑事裁判権を日本が「すべての要員について行使する」ことを明記するなど、事実上の“治外法権”を押し付けている。事件とか事故で被害者が損害賠償請求を起こす民事裁判でも、公務中の場合は裁判権が免除されている。

日米同盟深化の名のもとに、米軍の世界介入に付き従う先に何があるか。
米軍の駐留によって苦しめられているさまざまな日本国内での基地被害を今やわが自衛隊が海外に出かけて、他国民に押し付けかねないところまできているのである。日本政府は、米国との不平等な地位協定によって、日本の住民が米軍・米兵によっていくら苦しめられようとも、保護しようとしない。そのような日本政府が、海外に自衛隊が行ったときに、他国の人びとの人権を尊重する発想に立てるはずがない。軍事優先、米軍優先の価値観を今度は他国に持ち出して行くことになるのだ。

日本が海外での軍事態勢を強めていることに、諸外国とりわけアジア諸国の人々が警戒心を高めるのは必至である。軍事同盟の罠に填まってはならない。

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