プロメテウスの政治経済コラム

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菅内閣「不支持」が支持を上回る   閉塞感が強まる政局

2010-07-20 21:40:08 | 政治経済
参院選結果が明らかになってから1週間に報道各社が行った世論調査で、菅内閣の不支持率が支持率を上回る逆転がおきている。参院選終盤の今月上旬に実施した世論調査では、菅内閣の支持率は大幅に急落したものの、なお不支持率を上回っていた。ところが、選挙直後の世論調査では、支持率が7ポイント減の38%、逆に不支持率が13ポイント増の52%(「読売」)など相次いで不支持率が支持率を上回り始めたこれまでの例からいって、いったん低下傾向になった内閣が、それを逆転させるのは至難の業である。菅首相の求心力は弱まるばかりといっていいだろう。しかし、参院選で「勝利」したのは、自民党であり、みんなの党であった。これでは、昨年の総選挙で国民が期待した新しい政治への転換をさらに前へ進めることは難しい。近い将来、解散・総選挙となるかはともかくとして、政局は閉塞感が強まるばかりだ。

 菅内閣の支持率は、参議院選挙直後の世論調査で引き続き低下し、どの世論調査でも、不支持率が支持率を上回る逆転がおきた。参院選での民主党大敗が菅内閣の政権運営に反映した形だ。
「しんぶん赤旗」2010年7月20日より
 菅政権は、小沢―鳩山代表と続いた構造改革や日米同盟という保守政権が堅持してきた枠を部分的であるが逸脱しようとする動きを元に戻す反動的役割を担って登場した。菅政権は、単に民主党を「構造改革」回帰、「日米同盟」回帰させるだけではなく、小泉政権以降、矛盾の噴出で進行が停止してしまった構造改革、日米同盟深化を改めて前進させることで、支配階級の支持を取り付け、長期安定政権を目指そうとするものだったその菅・民主党を敗北させたのだから、参院選での国民の選択は、的を射たものだった。
菅政権は、長期安定どころか、今のところ、支持率低下を逆転させるような材料も見当たらないから、この傾向が続けば、衆院の解散・総選挙に追い込まれる可能性もないとは言えない。9月の民主党代表選挙、秋の臨時国会と「落ち目」になった菅首相の前途は厳しい。

 菅氏は、就任早々、党、内閣人事から小沢派を遠ざけ、反小沢を演出した。続いて、財界が苛立ちを示していた構造改革問題については、これ以上の福祉支出をやめることを宣言し、大企業負担を増加させないために消費税増税を強調し、鳩山政権の動揺、ジグザグを清算して構造改革路線への回帰を宣言した。参院選マニフェストで、法人税の5%引き下げまで謳って、財界にアピールしてみせた。さらに普天間問題では、きっぱりと日米合意堅持を謳ってアメリカを安心させた。「見事な」保守回帰であった(渡辺治「菅政権とは何か」『季論21』2010.07 第9号)。
菅氏は、鳩山・小沢両氏のダブル辞任によって内閣と民主党の支持率がV字回復を実現し、そのまま参院選に突入すれば勝利は確実だと考えた。ところが、保守「回帰」とりわけ消費税発言が国民の反撃を受けることを読み間違えた。支持率の高さに気をよくした菅氏は、「自民党の10%案を参考にしたい」と口走ってしまったのだ

 こうして、国民は、菅反動政権の目論見を阻止することに成功したが、今後の政局はきわめて不透明である。
野党第一党の自民党は、参院選で税率10%への引き上げを公約した消費税増税について、9月召集見通しの臨時国会の前にも、具体案の骨格をまとめようとしている。並行して、公約で「20%台」へ引き下げるとした法人税減税の具体化も進める方針である。菅首相が自民党案を「参考にする」と発言し、与野党協議を呼びかけたことを逆手に取り、揺さぶろうというわけだ
消費税増税に向けての民主・自民の部分連合があるのか。公務員削減に向けて民主・みんなの連合があるのか。昨年の政権交代による新しい政治を構造改革と日米同盟の自公政権政治に逆戻りさせてしまうのか、これを食い止めることができるのか。国民にとっても重大な局面を迎えている。

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