憲法九条の意味を世界の人々と考える「9条世界会議」が5月4日~6日千葉・幕張メッセで、5日広島・アステールプラザ、6日大阪・舞洲アリーナ及び仙台サンプラザで開かれた。どの会場も予想を超える大盛況だったらしい。私は、大阪会場に参加した。世界から参加する人たちは、9条が改廃の危険に何度も晒されながら61年間りっぱに生きてきたこと、現在米日の支配階級によって再びないがしろにされようとしていることなどをよく理解している。私にとっては、憲法24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)などの草案づくりで活躍したベアテ・シロタ・ゴードンさんの話がとくに印象的であった。
幕張メッセの本のブースで参加した松竹伸幸さんは、「会議では本を売っていて参加していないため、会議の中身はまったくわからない。残念だが仕方ない。だが、本を売っているからこそ、わかることもある。最近、大規模な集会に行っても、あまり本が売れない。集会に来るのが同じ顔ぶれで、しかも高齢者が多く、『もうその本は読んだ』と言われることも多い。年金生活者でお金がないという場合もある。9条世界会議では、それなりに本が売れた。これまでにない層が参加していた実感がある。とりわけ若い人々が目立った。そういう人々が、真剣に本を眺めながら、決意して買ってくれたという印象が残った」と書いている(HP“編集者が見た日本と世界”より)。私もまったく同感である。「9条の会」は残念ながら、若者がまだまだ少ない。9条世界会議は、集まった人びとの数とともに若者がいっぱいいたのが印象的だった。
幕張メッセの初日には、世界三十カ国以上の平和運動関係者ら約一万五千人が参加、三千人以上が会場に入りきれない事態になった、という。この日は、9条にエールを送る海外ゲストの発言が相次いだ。76年にノーベル平和賞を受賞した北アイルランドのマイレッド・マグワイアさんは「9条は60年間にわたって世界の人々に希望を与え続けた」と評価。「9条を放棄しようとする動きが日本にあることを憂慮している」と述べた。会場からあふれた人たちは近くの広場で、講演を終えたアメリカの平和活動家コーラ・ワイスさんらを囲んで、集会を開いた。バス2台で福島県郡山市から来た星光行さん(57)は「会場に入れなかったのは残念だが、ゴールデンウイークのさなかに9条のためにこれだけ人が集まったことに感動した」と話していた(朝日新聞5月4日)。
「9条世界会議 in 関西」も風薫る5月のすがすがしい晴天のもと7500名を超える参加者で大盛況だった。GHQ(連合国軍総司令部)の一員として憲法起草にかかわった米国人女性ベアテ・シロタ・ゴードンさん(84)の話は当時のエピソードもまじえてとても面白かった。彼女はまだ22歳だったらしい。日本の支配階級のなかに日本国憲法を目の敵にする者が早くからいることをよく知っていたので、自分が憲法草案に関わったことを10年ほど前までは、あまり公にはしていなかったらしい。とりわけ彼女が関わった第24条の家族生活における個人の尊厳と両性の平等は、日本の保守支配層がもっとも目の敵にする条項である。両性の平等とか、個人の尊厳などというから、父親の権威がなくなり、平気で離婚したり、子どもは自分勝手で親を殺したりするのだというわけである。安倍ら新保守主義者(日本のネオコン)が24条を起草したのが、22歳の若い女性だと知ったらどんなに騒ぎ立てるだろうかというわけだ。
また、ベアテ・シロタさんは、日本の保守支配層がしばしば問題にする「押し付け憲法」について冗談をまじえながらそもそも人は、自分が持っているものより良いものを他人に「押し付け」ないのが普通でしょうという。アメリカのものより優れた日本国憲法を「押し付け」たりしないというわけだ。さらに、海外の優れたアイディアをすばやく取り入れ自分のものとしてしまうことこそ日本人のもっとも得意とするところではないかという。人類の叡智を注ぎ込んだんだ、そして日本の女性の解放を真剣に模索したものだという自信溢れる語り口がとても印象的であった。
組織動員ではない、まずは、仲間と声をかけあって一人ひとりが参加した「9条世界会議」。「小さな人間からすべてが始まる。小さな人間が動かなければすべては動かない」という小田実さんの言葉を思い出す。
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