プロメテウスの政治経済コラム

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来月住民税大増税  予想される窓口抗議の殺到  弱者に増税、強者に減税の異常

2007-05-05 18:39:19 | 政治経済

昨年6月、届いた住民税の納税通知書を見て、多くの高齢者が驚きの声をあげた。税金が七、八倍や十倍以上に増えていたからだ。「計算間違いではないのか」と、抗議や問い合わせの電話が一日に千本もかかった市役所が全国各地で続出した。例えば、千葉市に住むAさん夫婦(夫74歳、妻71歳)の場合、一昨年4千円だった住民税が昨年6月には約3万5千円となり、9倍近くに増えた。
なぜ、こんなことになったのか。一つは、「公的年金等控除」の縮小である。年金生活者の場合、税金の計算の基礎となる「所得」を算出する際に、年金額から控除できる公的年金等控除が縮小されると、年金は一円も増えないのに計算の上だけ「所得」が増えてしまい、その分税金が増える。
もう一つは、65歳以上の高齢者に適用されていた「老年者控除」(住民税では48万円、所得税では50万円)が廃止されたことである。税金は、「所得」から基礎控除や配偶者控除などの各種所得控除を引いて「課税所得」を計算し、これに税率をかけて計算するが、老年者控除を引くことができないとその分だけ課税所得が増えてしまことになる(「しんぶん赤旗」2006年7月29日)。

今年6月に住民税が再び大幅増額となる。自民・公明政権によって住民税の定率減税が全廃された上に、税源移譲による住民税の増額が加わるからである。今年一月から所得税の定率減税が全廃されている。しかし、所得税から住民税に税金を移し替える「税源移譲」の影響で、多くの世帯では、定率減税全廃による増税分を合わせても見かけ上、所得税が減少したように見えていた。ところが、その減額分も、6月には税源移譲による住民税増税で帳消しになり、さらに同月には、住民税の定率減税全廃による増税が加わるから住民税が大幅増加となるのだ。
さらに自民・公明政権は、年金課税強化や、所得の少ない高齢者に対する住民税の非課税限度額の廃止を08年度まで段階的にすすめている。この影響も当然に今年6月の住民税額の増加に影響する。そして、住民税増税に連動して、国民健康保険料や介護保険料の負担増が雪だるま式に生じる。今年6月、昨年にも増して抗議が窓口に殺到することが予想される所以である。
具体的に住民税額は、どのくらい増えるのか。「緊急企画 6月にサラリーマンの住民税がどれだけ増えるか試算できます」―日本共産党のホームページ(HP)が「負担増シミュレーション」に新設コーナーを開設した(http://www.jcp.or.jp/tokusyu-06/10-hutanzo/index.html)。例えば、45歳、月収30万円、昨年の一時金3カ月分、扶養家族3人(うち16―22歳一人、70歳以上一人)の場合、5月までの住民税は月額4100円であったが、6月からは3900円増えて8000円となる。二倍近い増税である。年間46,800円の増税である(「しんぶん赤旗」2007年5月4日)。

「経済が順調に回復」(尾身幸次財務相)していることを口実にした定率減税の全廃。しかし、定率減税とともに99年に導入された大企業減税(法人税率引き下げ)、大金持ち減税(所得税の最高税率引き下げ)は温存したまま。07年度には、減価償却制度の拡充で設備投資額が大きい大企業に奉仕するとともに、株式で儲ける富裕層のために期限切れの証券優遇税制をそのまま延長した。その財源は庶民から取り上げた税金である。
「努力した者が報われる社会」といわれている。しかし、これほど白々しいスローガンはないであろう。圧倒的多数を国家権力を使って下級・底辺に追いやっておいて、そのうえさらに、彼らから収奪して一部の恵まれた上層に移しかえ、下級・底辺層をますます困窮させる。格差が努力の量に比例しているかのように言うのは、すべての責任を個人にかぶせるための全くのウソである。
政府執行権限を使って、政治経済的に格差を無理やりつくりだしているのだ。なぜこんな酷いことをするのか。多国籍大企業が競争に勝って常に莫大な資本蓄積を続けるためには、国家権力に癒着し、労働者に対する搾取強化と一般国民からの収奪が必要だからである。
だから、下級・底辺の底上げのためには、資本蓄積の一部をはきださせるとともに収奪をやめさせる政治革新が必要ということになる。 7月の参議院選挙がその絶好のチャンスである。


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