プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

国連IPCC報告 温暖化の影響に警鐘乱打

2007-05-09 18:25:53 | 政治経済
温暖化の実態に関する第一作業部会の報告(二月)は、化石エネルギーに頼り、高い経済成長を続ける社会を追い求めれば、今世紀末の平均気温は前世紀末と比べ1・8度から4度上昇すると予想。同時に、最も楽観的なシナリオで1・1度、最悪のシナリオで6・4度上昇する可能性も指摘。海面は最大59センチ上昇すると予測した報告書の特徴は、20世紀半ば以降の温暖化の原因を「人為起源の温室効果ガスの増加」とほぼ断定したことである。報告の一部をなす「政策決定者向け要約」は、人間の活動による温暖化の可能性を90%以上とし、前回報告の「66%から90%」(2001年)を一段と強めた。温暖化が「人為起源」、つまり人間の営みによるものだということは、裏返せば、温暖化防止の鍵を握るのは人間の行動だということである。報告書は、大気中の二酸化炭素の量が、工業化以前の約0・0280%から2005年には0・0379%に増加しているとのべている。大気の構成は、酸素が約五分の一、窒素が約五分の四を占めており、人間が生きていくのにほどよい気候や気温を保障しているが、ここ半世紀ほどの人間の経済活動によって、二酸化炭素の増加の方向に大きく変化しつつあり、このまま放置すれば人類と地球の共存を危うくしかねない事態を招くというわけだ(「しんぶん赤旗」2007年2月10日)。

さらに、温暖化の影響に関する第二作業部会の報告(四月)は、気温上昇が2―3度以上となれば、世界全域で経済的損失が発生すると指摘した。報告は、アフリカやアジアでの飢餓の増大、生物多様性の減少、海面上昇など、地球温暖化の影響が予想以上に早く広範囲に及ぶと警告。地球温暖化が地球と人類に及ぼす深刻な影響に警鐘を乱打した。「百年先とかの気温上昇が何度だと聞いてもピンとこないかもしれません。が、温暖化の影響は、次世代だけでなく、増加する異常気象によって現世代も被害を受けるのです」。京都議定書発効二周年のことし2月、東京都内で開かれたセミナー「すぐそこにある温暖化の危機」で、国立環境研究所の原沢英夫・社会環境システム研究領域長は、こうのべた。牛肉や穀物、飼料、水産資源などを輸入に依存している日本は、温暖化による世界の水不足や太平洋南東部の水産資源の変化に直撃される恐れがある
国立環境研究所、東京大学気候システムセンター、海洋研究開発機構は、日本の真夏日(最高気温30度以上)の日数が、1900年から2100年の間に地球温暖化でどう増えたのか、今後どう増えるかを予測している。2000年ごろまでは毎年40日前後だった真夏日が2010―2030年には、年間60日前後に増え、その後も急カーブで増えつづけて、今世紀末には115日前後にもなる恐れがある(「しんぶん赤旗」2007年5月1日)。

5月4日に公表された第三作業部会の報告は、温暖化の緩和策をまとめた。気温上昇を2―3度に抑えるには、温室効果ガスの排出量を2050年までに半減する必要があり、そのための経費は30年時点で世界の国内総生産(GDP)の3%未満と見込んでいる。報告は、温室効果ガス削減の技術的な対策として、火力から風力・太陽光発電への転換、ハイブリッド車、バイオ燃料の導入をあげている。日本では再生可能エネルギーの比率はまだまだ低い。「京都議定書」にもとづく2010年前後までに排出量を1990年比で6%削減するという国際公約の達成も危うい状況である(「しんぶん赤旗」2007年5月9日)。

「日本の産業界では日本が排出削減義務を負った京都議定書への不満が続き、次の排出削減の目標設定にも抵抗が強い。日本は省エネが進んで削減余地が少ないとし、エネルギー原単位など効率を目標にするよう求めている。だが、いくら効率が高くても総排出量が増えれば温暖化が進んでしまう。温暖化を抑えるには排出量を減らすしかない。発展途上国が排出削減の助走として効率を指標にするならともかく、先進国が総排出量削減の道筋を示さなければ、無責任とのそしりは免れない」(「日経」社説5月5日)。
技術力を自負する日本は、その真剣な姿勢を世界に示すべきときである。

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