プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

フランス大統領 保守サルコジ氏に 注目される仏資本主義システムの変化

2007-05-08 19:12:09 | 政治経済
新顔同士で政治、経済、社会の改革を競った仏大統領選挙は、保守のサルコジ氏の勝利に終わった。国民の選択は、現状打開に向けた同氏の実行力に期待を寄せたものと見られる。第一回投票(4月22日)前に実施された世論調査で「大統領のスケールを持った人物は誰か」の問いに、サルコジ氏と答えた人が50%であったのに対し、ロワイヤル氏は18%にとどまっていた(「しんぶん赤旗」同上)。

サルコジ氏は、過去の政治との「決別」をスローガンにして、対米関係重視と新自由主義路線を提唱してきた。「決別」は既存の政治体制の打破を意図したもので、日本における80年代の中曽根政権がとなえた「戦後政治の総決算」とか、小泉前政権の構造改革路線とも一脈通じるものがあるようだ。
欧州連合(EU)統合などによる経済のグローバル化の下で、企業は東欧や中国などの安い労働力を積極的に活用。手厚い社会保護をもつフランス型福祉国家モデルのもとでも富裕層と貧困層への二極分化が少しずつ進行した(「しんぶん赤旗」2007年1月3日)。

世界各国の経済システムは、さまざまな歴史的変遷を経て今日の姿になっている。交換システムそのものの発展がそれを制御する法的制度を生み出し(現代では、規制緩和が主要な傾向となっている)、一方で補足システムとしての再分配システムを取り入れてきた。とくに、社会主義の出現以降、資本主義システムの変貌はきわめて大きかった。硬直的な管理システムの転換に失敗した社会主義は数十年の歴史で終わったが、資本主義世界は、幾度も経済恐慌にみまわれながらも、その都度生命力を発揮し、自ら形態変化を遂げてきた。

国ごとの交換システムの法的規制や再分配システムのウエイトの違いは、それぞれの政治的力関係を反映している。現在、グローバル化による国際競争の激化を理由に人員削減や工場閉鎖、劣悪な労働条件や低賃金を押し付けようとする多国籍企業が、世界で最も手厚い労働者保護法規や強力な労働組合を持つ欧州でも優勢である。日本やアメリカでは、貧困・格差の拡大が急速に進んでいる。国境を越えて展開し、労働者同士を競わせ、敵対させることでより多くの利益を得ようとする多国籍企業に対抗する、国境を超えた労働者の連帯、組織力が負けているからである
解雇・残業規制の緩和や企業減税を通じて経済の活性化をはかり、エリート養成で社会に活力を取り戻すというサルコジ氏。その自由主義、エリート主義に対する強い反発や社会のあり方に不満を持つ若者を「社会のクズ」と決めつけた言動の荒っぽさ、また選別的移民政策には、市民団体や移民との連帯組織から強い批判の声が上がっている。サルコジ氏の勝利が決まった6日夜、早速、パリのバスチーユ広場で若者約二千人が同氏の大統領就任に反対する集会を開き、警官隊と衝突した。パリ郊外、地方都市でも反サルコジ派のデモが相次いだという
労働者のストライキや移民系若者たちとの緊張関係のなかで、サルコジ氏がヨーロッパ型資本主義といわれる仏資本主義システムをどのように構造改革するか注目してみまもりたい。

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