プロメテウスの政治経済コラム

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非正規切り厚労省調査 12万5000人3月までに失職  労働機会の保障は政府の逃げられない義務

2009-01-31 20:49:40 | 政治経済

景気悪化のもとで、体力のある大企業が競い合って「派遣切り」「期間工切り」をやりたい放題に進めている間に、日本経済がきわめて危険な状況となってきた。厚生労働省の企業からの聞き取り調査の結果だけで、12万5000人が3月までに職を失うという。実際は数十万規模になる懼れがある。
日本経済は「減産」→「雇用・賃金悪化」→「消費低迷」→「物価下落」という負の連鎖に陥っている。経済規模の縮小を招くデフレが再燃すれば、企業の売り上げは落ち込み、業績不振がさらに加速。賃金や雇用の悪化に拍車がかかり、スパイラル的に景気悪化に歯止めがかからなくなる懸念がある(「産經」2009131日)。
いまこそ、政府が先頭に立って、景気悪化のスパイラルを阻止しなければならない。非常事態についての真剣な認識も事態を打開するための処方箋ももたない麻生・自公政権ではもう駄目だ。

日本共産党の志位和夫委員長は昨日(30日)の衆院本会議の代表質問で、麻生首相にたいし、急激な雇用破壊、墜落するように進む景気悪化などについて、それぞれの「原因と責任をどう認識しているのか」と政治の責任をただすと同時に、雇用を守るために政治の責任で解決すべき「三つの仕事」として―①)「非正規切り」で職を失った人々への住居・生活・再就職の支援②これ以上の大量解雇の被害者を出さないよう、大企業への強力な監督・指導③「使い捨て自由」の労働を許さない抜本的法改正―を行うことを提案した(「しんぶん赤旗」2009131日)。

「派遣村」に助けを求めた人びとの有りの儘の姿は、政府の失業者対策が、まともに機能していない実態を明るみにだした。反貧困ネットワークの湯浅誠氏の言を借りれば、日本社会は、まさに政治災害によって、三層のセーフティネット(雇用のネット、社会保険のネット、公的扶助のネット)がいずれも機能せず、うっかり足を滑らせたら、どこにも引っかかることなく、最後まで滑り落ちてしまう「すべり台社会」である。雇用保険の受給者の割合が失業者の20%台に落ち込み、多くが生活保護によってしか救済できないというのは、異常な事態である。全国に一時避難所を開設し総合相談窓口を設置すること、再就職を支援する緊急小口貸付資金を思い切って拡充すること、「住所不定」状態に突き落とされた人々も含めて再就職にむけた緊急避難として生活保護をおこなうことがいま緊急に必要だ。―後述するように、これは政府の憲法上の義務である。

大企業が進めている大量解雇は、やむを得ないものではない。従来の不況では、まず株価が下落し、続いて需要が落ち込み、雇用悪化は遅れて起こっていた。ところが今回は、株価暴落と同時に、大企業が先を争うように「非正規切り」をはじめ、すでに深刻な雇用破壊が社会を覆っている。小泉―竹中「構造改革」が、企業のために労働法制の規制緩和を行い、共産党以外の政党が「いつでも首切り自由」の非正規労働者制度を用意したからである。派遣労働者も剰余価値生産において果たす役割は正規労働者となんら変わらない。剰余価値を収奪して内部留保を積み上げておいて、赤字が出たからと騒がせてはならない。政府の調査でも、非正規社員の解雇計画の44%が契約途中の解雇ではないか!100年に一度の非常時というのなら、巨大な内部留保の一部を吐き出すように大企業への強力な監督・指導することが政府の責任である。

労働の機会を保障することは、逃げられない政府の憲法上の義務である。日本国憲法は25条の生存権を保障するものとして、26条「教育を受ける権利の保障」、27条「労働の権利の保障」を定める一般国民にとって「生存権」の確保とは、「働く能力があり、働きたいという意欲のあるものに対し勤労の機会を与える=労働の保障」として具体化されることである。労働能力を有するものが、私企業のもとで就業が難しい場合には、政府が何らかの形で労働の機会を与えるべきであり、それが不可能なときは、相当の生活費を保障するなど適当な保護を講じなければならない。

著名な憲法学者である宮沢俊義・東大名誉教授は、憲法27条の意味を「それは、結局、ヴァイマアル憲法が『すべてのドイツ人は、経済的労働により、生活する可能性が与えられなくてはならない。適当な労働の機会が与えられないときは、その生活費が配慮される・・・』、というのと同じ意味と解すべきである」(『注解日本国憲法』―吉岡吉典「派遣労働者問題と憲法27条」「しんぶん赤旗」2009130日より孫引き)と解明している
生存権の保障を明示した現憲法25条1項は、
GHQの憲法原案にはなかった。生存権を自由・正義・民主主義と同格において保障し、その発展をはかろうとする思想は、ドイツ・ワイマール憲法に端を発する。日本の在野の憲法研究会の人びとがワイマールの思想を独自に発展させたのだ。
政府や地方自治体にたいして、雇用の創出や生活、住居の確保を迫る運動は、恩恵や思いやりとしてではなく、憲法上の義務、責任として迫ることなのだ。

 






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