プロメテウスの政治経済コラム

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日米密約 外務省有識者委が報告書  その出鱈目振りには米国も苦笑いだろう

2010-03-10 19:13:26 | 政治経済
日米間の四つの「密約」を検証してきた外務省の有識者委員会(座長・北岡伸一東大教授)は9日、報告書をまとめ、岡田克也外相に提出した。最も焦点となった、1960年の日米安保条約改定時の「核搭載艦船の核持ち込み」密約について、寄港・通過を事前協議の対象外とする「暗黙の合意」が日米間にあったとして「広義の密約」と結論づけた外務省官僚と北岡先生の苦心の合作だろうが、米国もこれには苦笑いだろう。私は、米国企業とのビジネス経験をあまり持たないが、米国はさすが契約社会の国だと思わされたことが、何度かある。「報告書」は、「暗黙の合意」とか「広義の密約」とかわけのわからないことをいいながら、「討論記録」は廃棄すべき「密約」でないという。その一方で「報告書」は、「核搭載艦を事前協議なしに寄港することを事実上黙認した」とも認めている。そしたら、契約(条約上の権利)もないのに米核搭載艦は、日本に勝手に寄港したとでもいうのか「日米核密約」とは、日本に寄港・飛来する米艦船・航空機の核兵器搭載について、安保条約第6条の「事前協議」の対象外とし、この方式での核持ち込みを、条約上の権利としてアメリカ側に認めたものである。アメリカは無法者だが、安保条約の改定交渉が歴史的な反対にあっているときに、なんの契約も結ばないで勝手なことはしない。北岡先生は、東大の教授だという。これでは、頭脳のレベルが日本の政治家と同じではないか。

 核持ち込み密約は、「討論記録」(報告書では「討議の記録」)という形で、改定安保条約のワシントンでの調印(1960年1月19日)に先立って、1月6日、藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使との間で調印(頭文字署名)された。事前協議についての岸・ハーター交換公文に入れないで、「討論記録」という形にしてくれと頼んだのは、日本側のほうであった(1966年米国務省・国防省報告)。だから、「報告書」が、「討論記録」の存在を認めながら、「討議の記録2項Cだけをもって、日米間に核搭載艦船の寄港を事前協議の対象外とする『密約』の証拠と見ることは難しい」、「日米両国間には、核搭載艦の寄港が事前協議の対象か否かにつき明確な合意はない」などと、「討論記録」が核持ち込みの密約だったことを否定しているのをアメリカ政府が読んだら苦笑いするというのだ条約上の権利もないのに米核搭載艦は、日本に勝手に寄港したといえば、アメリカを馬鹿にするな、と怒られるのがオチである。

 「討議の記録2項C」には、たしかに「核兵器」の文言がない[C 「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続きに影響を与えるものとは解されない]。しかし、これは[A 「(事前協議の対象となる)装備における重要な変更」は、核兵器および中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)ならびにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルを含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない]とあわせて読まないといけない。核兵器の日本への持ち込み(イントロダクション)は事前協議の対象となる「装備における重要な変更」だが、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)は、事前協議の対象ではなく、現行の手続きに影響を与えるものではない(旧安保条約どおり、自由ですよ)ということだ

 「日米両国間には、核搭載艦の寄港が事前協議の対象か否かにつき明確な合意はない」というのは、外務省と北岡先生合作による「歴史の偽造」である。この秘密取り決めは、内容的には、前の年(59年)の6月20日、岸首相、藤山外相とマッカーサー米大使との間で、新安保条約、岸・ハーター交換公文とともに、完全な合意に達していた。マッカーサー大使は、58年10月4日の安保改定交渉の最初の会合で、岸首相と藤山外相らに対し、「事前協議」に関する米側解釈を、米国務省・国防総省共同の訓令に従って説明した。この訓令は「核兵器を積載している米軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ、〔事前〕協議方式の対象にはならない」との米側の理解について日本側に確認を求めるものだった(米側に証拠の電文が残っている)。
1963年4月4日に、大平外相がライシャワー駐日大使に呼び出され、「討論記録」の内容について念を押されるまで、日本側が密約を自覚していなかったとすれば、契約交渉の内容を部下に正確に伝えなかった岸首相と藤山外相らの落ち度であって、密約がなかったことにはならない(アメリカに対する侮辱である)。

東大教授の北岡先生があろうことか、なぜこんな低レベルの報告書を出したのか。彼の記者会見での発言の記事を読んで納得した。<安保改定時の核持ち込み「密約」を結んだときの岸首相や、沖縄返還時の有事核再持ち込みを合意した当時の佐藤栄作首相について「全体としてはなかなか立派な行動だったのではないか」、「密約であるかないかは最も重要なことだと思っていない」「最も重要なのは国民全体の利益を守る適切な外交を行うこと」>(「しんぶん赤旗」2010年3月10日)だという。しかし、これほど、東大教授とも思えないような詭弁はない。「国民全体の利益を守る適切な外交」だったら、なぜ国民に50年間も隠し続けてきたのか。

私たちは、「解釈のずれ」などいう小賢しい手を使い、今までどおり国民を騙し続けることを許してはならない。「討論記録」をきっぱりと廃棄し、「非核三原則」を守るのか、それとも密約どおりに非核三原則を「二・五原則」にしてしまうのか、国民参加で正々堂々と議論すべきだ。

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1 コメント

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有識者委員会 (isao-pw大城 勲)
2010-03-12 21:03:01
例によって記者クラブメディアでは報道されていませんが週刊朝日3月5日号では有識者委員会座長の北岡東大教授は藤崎駐米大使などが開いた日米関係のシンポジュウムで外務省顧問の立場で発言し鳩山総理は馬鹿だ、何も分かっていない、勉強不足だ。
岡田外相、北澤防衛相は素直でだいぶ勉強して分かって来たが総理は全く進歩していない等と言いたい放題で米国側の出席者から失笑されています。
外務省内に執務室を持ち報酬も得ている立場を考えれば自国の総理を貶める様な発言は非常識ではとの質問に日本は言論の自由が保障された民主主義の国だと開き直っています。
この様な人物ですから有識者委員会でも座長権限を振り回して報告書の内容に偏見を持ち込んだと他の委員からも批判されています。
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