プロメテウスの政治経済コラム

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名古屋市長の市議半減案提案  小沢民主党の「国会改革」を先取り  「選挙による独裁」

2010-03-11 21:02:02 | 政治経済
大阪の橋下、宮崎の東国原(最近は少し下火だが)、鹿児島阿久根市の竹原氏らと並んで何かと話題の多い、名古屋市の河村たかし市長(元民主党衆院議員)が9日、議員定数の半減とこれにともない少人数区(小選挙区)化するなどの条例案を議会に提出した。名古屋市政は御多分に洩れず、長年にわたって、共産党を除く、市民不在の「オール与党」体制が続いてきた。共産党議員とのつながりを持たない圧倒的多数の市民にとって、議会、議員がムダに見えても不思議はない。河村市長は、こうした市民の不満に乗じて、「議会改革」の名で議会の役割を決定的に弱め、市長の強権体制をファッショ的に確立することを目指したのだ。
国政では、いま「政治とカネ」問題で窮地にある小沢民主党が、国会の行政監督機能や法案審査のための調査機能を弱体化し、「政治主導」の名のもとに、トップダウンで官邸提出法案を“効率的”に成立させる強権国家づくりを目指す「国会改革」関連法案を提出しようとしている。河村名古屋市長の市議定数半減と選挙区定数案は、小沢民主党の「国会改革」を先取りするものであり、政党の「衰退」に乗じた「選挙による独裁」を目指すものだ。

 河村市長の提案は、市議定数を現行の75から38に削減し、区割りでは16選挙区のうち過半数の9区を定数1ないし2とするものだ。1選挙区で1人しか当選できない小選挙区や二大政党の議席独占をもたらす2人区は多数の「死に票」を生み、少数意見など市民の多様な意思を切り捨てることになる。端的に言って、今は数が少ないが、未来を担うべき共産党の影響力を徹底的に弱め、支配階級の天下が続き、市民はトコトン苛められるということだ

 戦後の日本国憲法では、国政は議員内閣制、地方政治は議会と首長を直接選挙で選ぶ二元代表制をとっている。地方政治は住民に身近な教育、福祉を扱う。それに住民が直接タッチする――それを民主政治の土台にしようと、議会と首長が対等平等で地方自治と民主主義を実現する二元代表制を採用し、議会の権限を強化したのである。「二元代表制」のもとでは、自治体の首長と議会を住民がそれぞれ直接選んで、首長と議会が相互の抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)によって、いずれかの独善と専制政治をふせぐ役割を担っている。少人数区化を導入すれば、首長とそれを支持する議員が同時に議会も独占し、市民不在の「オール与党」体制がますます強化される
河村市長は、この議員定数半減を、政務調査費廃止、議員報酬半減と合わせて「議会改革」条例案として提出している。ただ派手に立ち回るポピュリストの典型だ。
彼は、首長と議会の「二元代表制」について「立法ミス」とまで主張している

 身近なはずの地方政治を遠い存在と感じ、議会で何をしているのかよくわからない議員が無駄と思えるのには、一定の根拠がある。多くの議員が選挙の時だけ住民の前に現れ、活動報告をきちっとしないからである。逆にいえば、活動報告を出せるほどに働いていないともいえる。住民は、自分が投票した議員が、議会でどのように働いているかをチェックしないといけないのだが、時間がない。私も、たまに議会の傍聴に行くが、現役サラリーマンには、まず無理である。しかし、議員は議会で発言するためには、本来、日常的に地域に出向き市民とひざを交えて意見を聞き、調査する必要がある。そのためには、時間もいるし、一定数の議員もいる。名古屋には225万人の市民がいる。225万人の意見を反映するためには、現行の75議席でも不十分なくらいである。河村市長はこれを38議席に半減しようとしている。定数38になれば、政令市中最少の人口約70万人の岡山市を下回り、県内では人口38万人の岡崎市より少なくなる。
河村氏は、また、ボランティアの「地域委員会」も進めようとしている。私は、遠い将来の共産主義社会でのボランティアによる地域ごとの自治は、大いにありうることだと思う。しかし、今は長時間労働に苦しむ資本主義社会である。とてもまじめに社会のことを考えるとは思えない。「地域委員会」の委員の投票に参加した市民が一割にも届かなかったというが、当然だろう。

 小沢民主党は、官僚の答弁禁止などを柱にした「国会改革」関連法案(国会法・衆参各院規則の改定案)を2010年度予算案の衆院通過後、早急に国会に提出する方針である。「国会改革」関連法案は、「政府参考人制度の廃止」として官僚答弁を法律で禁止。同時に、これまで人事院総裁や公正取引委員会委員長とともに「政府特別補佐人」として答弁してきた内閣法制局長官をただ1人「政府特別補佐人」から外し、答弁を禁止する。憲法の三権分立は、ただ三権を並立的に規定しているのではない。国会は,国権の最高機関なのだ(憲法41条)。国会の行政監督機能や法案審査のための調査機能を弱め、「政治主導」の名のもとに、官邸を最高機関にしようと狙うものだ。そして、官邸を牛耳る闇将軍は小沢幹事長なので、狙うは、事実上の小沢独裁体制の確立である

 「議会改革」の名で議会の役割を決定的に弱め、市長の強権体制を確立する河村市長の条例案は、まさに小沢民主党の「国会改革」を先取りするものだ。

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