プロメテウスの政治経済コラム

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「普天間」県内案  果たして、労働貴族・平野検討委員会委員長の思惑どおりにことが進むか

2010-03-09 18:20:15 | 政治経済

昨日(8日)、沖縄基地問題検討委員会が開かれ、社民党は米領グアムへの国外移設を中心に、訓練を九州など県外で行うなどとする3案、国民新党はシュワブ陸上案など県内移設2案を委員長の平野博文官房長官に提示した。社民党は案を平野氏には伝えたが、公表しなかった。平野氏も自身の案を公表していない。政府はこれらの案を基に3月中に政府案をまとめる予定だとしている。しかし、政府はすでにシュワブ陸上案を米側に打診している。検討委はアリバイづくりに使われるだけかもしれない。

 平野検討委員会委員長は、パナソニック・電気労連をバックにしたいわゆる“労働貴族”として有名である。労働貴族は組合幹部として、会社と対決しているような振りをしながら、会社によって養われ、肝心なときに一般組合員の要求を抑えつけ、会社を守ることを任務とする。会社は、彼らをどのように労政職制の一部に取り込むか―小説『沈まぬ太陽』の行天四郎がその典型である
平野氏は、松下労組の中央執行委員から、旧社会党の中村正男代議士の秘書になり、中村氏の後継者として96年総選挙に大阪11区から無所属で出馬し、労組をバックに当選。98年、民主党に入党、鳩山代表に取り入り、ついに官房長官にまで出世した。この種の人物は、強い者の誰に忠誠を尽くし、どのように泳ぐのがよいかをよく心得ており、それを実行することに恥じも外聞もない。平野官房長官は8日午前の記者会見で、名護市議会が普天間移設のシュワブ陸上案への反対意見書を可決したことについて「それぞれの地域の自治体で決議はあっても決議をこえてやっていただかなければならないケースはある」と平然と言い放った

 普天間問題の過去の経緯は、移設先地元の合意なしに基地を建設することの難しさを教えている。名護への「移設」は、結局、13年間動かなかった。
キャンプ・シュワブ陸上部案は、既存のシュワブ基地内での新設・拡張だから、反対運動は基地の外、なんとかなるというのが政府の読みのようだ。北沢俊美防衛相は、「(既存の)基地に移転するわけだから、大きな反対運動は起こらなかった歴史的なものに学ぶべきものはある」などと言っている。彼の「学ぶべきもの」とは、かつて楚辺(そべ)通信所がキャンプ・ハンセンに移った時の話である。

楚辺通信所は当時、沖縄県読谷村にあり、近隣諸国の電波傍受をする米軍スパイ部隊の施設で、直径200メートル、高さ約40メートルの巨大な施設は「象のオリ」として知られていた。457人の地主がおり、2006年の米軍用地特措法の使用期限切れをひかえ、金武町(きんちょう)、恩納村(おんなそん)にまたがる米軍キャンプ・ハンセンへの「移設」を決め、06年9月に移設を終了した自公政権による典型的な「米軍基地の県内たらいまわし」事例だった(新施設は、性能が向上したのか、昔のような「象のオリ」ではない)。

 北沢発言を伝え聞いた、恩納村喜瀬武原区の区長が怒っている。「北沢防衛相の発言はあまりにも軽率であり、撤回してほしい」。喜瀬武原区の住民が移設工事に気づいたのは02年5月。村の東側にせまるキャンプ・ハンセンの丘陵でブルドーザーが動き回るのを発見。そのうち農業用水を取水している河川に赤土流出が発生したため農業関係者が騒ぎはじめ、通信施設からの電磁波障害などへの不安が一気に村民のなかに広がった。6月30日には総決起大会を開き、「住民に不安な生活を余儀なくさせ、基地機能の強化、固定化を図る施設は断じて許せない」とする決議を採択。恩納村議会も「移設」に抗議する意見書を全会一致で可決した。反対運動はなかったのではなく、押しつぶしたのだ。
鳩山政権・平野官房長官は、こうした村ぐるみの反対運動の歴史を意図的に「封印」、基地内への「移設」ならば県民が反対しても強行できると、自公政権の「県内たらいまわし」の手口を「学ぶ」というのだろうか(「しんぶん赤旗」2010年3月5日)。

 果たして、労働貴族・平野検討委員会委員長の思惑どおりにことは進むのか。鳩山首相は昨年の総選挙で米軍普天間基地の「国外・県外」への「移設」を約束し、民主・社民・国民新3党の鳩山政権樹立にあたっての「政策合意」(昨年9月)では、「沖縄県民の負担軽減の観点から」、米軍再編や基地のあり方について「見直しの方向で臨む」とした。鳩山政権としての県民・国民への最低限の公約である。「最低でも県外」と普天間移設計画見直しを示し、政権交代を果たした鳩山政権で、よもや県内への決着となれば、県民の不満が噴出することは間違いない。沖縄を切り捨てても選挙に勝てると民主党は思っているのだろうか。選挙に強いはずの小沢一郎幹事長はどう判断するのか。本土の国民はどう考えるのか。連立政権内の社民党は、それでも政権にしがみつくのか。
米軍基地からの長年にわたる人権侵害や日常生活の中での危険を感じ続けてきた県民の抗議の意思を舐めたらイカンゼヨ!


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1 コメント

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沖縄 (isao-pw大城 勲)
2010-03-09 21:54:51
普天間基地移設問題は沖縄返還協定に基づく密約で自由使用が保証された訓練施設の存在と切り離しては解決不可能なのです。
日本では沖縄密約を有事の「核持ち込み」と返還に伴う経費の肩代わりを秘密合意した事で騒がれて来ましたが米国側が返還交渉に際して最大の懸念としたのは米軍基地施設区域の自由使用が従来通りに継続可能かどうかでした。
従って米国側は「核抜き本土並み」の前半部分で日本側の面子を立てて自由使用の部分で米軍の行動を制約しないと言う「名を捨てて実を取る」事に成功したのです。
これが沖縄の米軍基地問題の原点であり米軍基地施設区域の無期限自由使用で沖縄県民の基本的人権を否定して来た日本政府の責任です。
政権交代を成し遂げた民主党政権が真っ先に取り組むべきは戦後65年が経過した米軍基地施設区域の使用期限を米国に対して交渉する事です。
この様な沖縄基地問題の本質を見ずに心情的に普天間基地の県外、国外移設と騒いでも米国との交渉は不可能なのが現実です。
詳しくは私のブログを御参照下さい。
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