プロメテウスの政治経済コラム

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GM倒産「国有化」 ひたすら国家資金をつぎ込むオバマ政権 再びバブルやスタグフレーションの懸念も

2009-06-02 21:18:40 | 政治経済
米国いや世界資本主義の象徴だった米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が、経営破綻した。自動車大手3社(ビッグスリー)のうち、すでにクライスラーが4月末に破産法11条の適用申請をしており、ビッグスリー2社が破綻に追い込まれるという異常事態である。それにしても何故、アメリカ資本主義は大恐慌とはならないのか。オバマ政権がドル紙幣を刷りまくり、ひたすら国家資金をつぎ込んで支えているからである。管理通貨制度が管理されなくなったらどうなるか。間違いなくインフレーションが起こるだろう。すでに原油価格の上昇が始まっている。過剰流動性による仮儒や株相場の好調は、実体経済の悪さを覆い隠している。再びバブルやスタグフレーション(景気停滞下のインフレ持続)が懸念される。赤字国債の消化のためには、中国がアメリカにとってますます重要なパートナーとなる。中国訪問中のガイトナー米財務長官は2日、中国当局が米国の景気対策に信頼を寄せ、米国の財政赤字拡大がなぜ必要なのかを理解していると、中国政府の心を掴もうと必死である(「ロイター」6月2日13時24分配信)。 

GMは1日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をニューヨーク市の破産裁判所に正式に申請した。GMは8月末を目標に新会社への資産譲渡など破産法手続きを完了。販売規模を今の約7割にあたる600万台程度に縮小した「新生GM」として再起を図る。米政府は景気や金融市場への影響を最小限に抑えるため、301億ドル(2兆9000億円)の追加融資を実施。GMの優良事業を引き継ぐ「新生GM」には米政府が60%、カナダ政府などが12%を出資。実質国有化し、「再生」を目指す。不採算部門や不良資産を旧GMに残した上、売却・清算するスキームである。ニューヨーク証券取引所は1日、GM株を上場廃止にすると発表した。GMの負債総額は1728億ドル(約16兆4000億円)だった(「日経」2009年6月2日02:16)

報道から窺い知れないのが、例のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)問題である。GM倒産に賭けていた連中が賭けに勝ったことになる。償還不能となったGM社債の損失を誰が弁償するのか。AIGをすでに国有化したのは、今日のことを考えていたのかも知れない。オバマ政権の経済政策は、米金融資本や自動車資本の危機をただ国家資金(税金)をひたすら投入して救済しようとしているように思える。財務長官に指名されたニューヨーク連邦銀行のティモシー・ガイトナー総裁にしてもバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長やホワイトハウスの国家経済会議(NEC)委員長のローレンス・サマーズ教授もみな今日の金融危機、カジノ資本主義の跳梁跋扈を影で操ってきた人物ばかりである。オバマ大統領は、実務経験を優先したと言うかもしれないが、悪の元締めばかりであり、本当に反省しているのかどうか怪しい。証券化や金融デリバティブに対する規制は何も聞かない。

「新生GM」は債務と労務費を大幅に削減、ハマーやサーブ、サターンなどの不人気ブランドを切り離すほか、米ディーラーの40%を削減する。これまでより低コストでスリムな会社となるが、100年の歴史を持つGMが「ガバメント(政府)・モーターズ」になって完全に生まれ変われるのか、連鎖破たんが広がれば雇用への影響は避けられないほか、経営再建が進まない場合、米政府は追加支出を迫られ財政赤字拡大による長期金利の上昇やドル安リスクが大きくなることは必至である。現在の株式相場を支えているのは過剰流動性によるものだ。米国をはじめとする各中央銀行の超低金利・流動性供給政策などによって生み出された過剰流動性は新興国の株式や通貨、原油や金など国際商品の価格を押し上げている。
「GMの経営再建がうまくいかない場合、米政府は追加の支援を迫られることになる。米債券市場は財政赤字の拡大に神経質になっており、ドル安も進行する可能性がある。現在の過剰流動性相場は景気の底打ちによる実需ではなく、景気回復への期待を背景にした短期資金の仮儒の動きだ。米景気が思ったほど回復していないとはわかったときの反動が警戒される」(三菱UFJ証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)。流動性相場を支えている低金利環境が崩れたときの影響は小さくない(「ロイター」2009年 06月 1日 15:03)。

現在、米国国債を大量に保有しているのは中国、日本、サウジアラビアなどである。オバマ政権は経済危機対策のためにも、中国ややサウジなどに頼らざるを得なくなっている。米国金融資本を操っているユダヤ系の金持ちは、魅力を失ったアメリカから、次の焦点を中国に向けているという話もある。
あまりに膨らんだ累積債務を、もはや返せなくなったアメリカが、いつかこの「手」を打ってくるのでは?と90年代から囁かれている話に「新ドル札発行」がある。いま流通しているドルは緑がかった紙幣で、いわゆる「グリーンバック」と呼ばれている。これに対して、これから発行されるであろうドル紙幣が通称「ブルーバック」である。つい最近も、CNNでこの話題が出たが、スグに消えたそうである。私は、戦中世代ではないでので、良くわからないが、ハイパーインフレのなかで戦後、旧円を新円に強制的に切り替えさせられた痛苦の経験を思い出させる話ではないか。

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