プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

教育基本法「改正」派の不当な言掛かり

2006-04-20 17:30:14 | 政治経済
子どものむかつきの感情や暴力のひろがり、低学力の子どもの増加や学習意欲など現在教育現場にさまざまな問題が存在することは事実です。しかし、だから教育基本法の「改正」をということほど恥知らずな議論はありません。 最近の世論調査で、教育基本法そのものは見直した方がいいという意見が多くなっているとのことですが、基本法は、前文と十一条からなりそれほど長いものではありません。是非一読することをお勧めします。現在の教育の荒廃が、教育基本法のせいではなく、むしろ歴代政権が教育基本法をないがしろにしたことに原因があることがよくわかります。基本法「改正」を推進する勢力の意図が、ドサクサに紛れ、国家に都合のいい国民を育てるという黒い試みに過ぎないことがよくわかります。

教育基本法「改正」派が狙っていることは、ひとことで言って、主権者としての1人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的とする教育を「海外で戦争をする国」のための人間づくりに変質させることです。歴代自民党政権は、「人格の完成」を目指す教育ではなくその都度支配階級が期待する「人材の育成」を目指してきました。それが、いきすぎた管理と競争による教育のゆがみをもたらし、子どもたちが人間として大切にされ、安心した人間関係をはぐくむことを阻んできたのです。
教育基本法第一条(教育の目的)は「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と高らかに宣言しています。そして第二条(教育の方針)は、「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない」とのべています。

教育基本法の精神に基づく、子どもの身につけさせるべき学力とは、単なる暗記ではなく、市民として生きていくことを重視する学力です。ところが、文部科学省は「競い合いや叩き込み」といって、授業時間延長、「習熟度別学習」や評価方法、学力テストなどを押しつけ、学校をますます窮屈にするばかりです。学力が高いことで注目されているフィンランドでは、日本の教育基本法を参考にし、教員の自主性、競争でなく共同の重視などで高い成果を上げています。。
ヨーロッパでは、少人数学級が当たり前、学費も幼稚園から大学まで無料の国が多いのにくらべ、日本では「40人学級」、多額な父母負担など教育条件が劣悪です。
現在教員は、子どもとふれあったり教材研究の時間が取れない長時間労働、教育委員会・校長の管理統制のもとにおかれています。教員が専門家としての力量を発揮・向上できる環境を整備することこそ重要です。

ところが、自民党政治は、教育に金をかけず、「改革」と称して教育の中身に口をだすことばかりに熱中してきました。教育行政の仕事を「諸条件の整備確立」に限定した教育基本法の原点に立ち返り、学校のことは学校で決められるようにすべきです。教育基本法第一〇条(教育行政)は「(1)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。(2)教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」としています。

不登校や少年犯罪とか学力低下は教育基本法に問題があるからではありません。むしろ、少人数学級を認めてこなかったこととか、子どもたちが人間として大切にされず、安心した人間関係をはぐくむことができなかったとか、(授業料が払えず)高校を中退しなければならないような子どもがたくさん生まれているなど教育基本法を無視した自民党政治にこそ責任があります。「学校教育と勤労が結びついてなかったのがニートを生んできた一つの原因」などという公明党冬柴幹事長(16日NHK日曜討論での発言)は「勤労と責任を重んじ」という教育基本法第一条を読んでいないことを自ら告白するようなものです。
「教育基本法は、子どもからおとなまでが、新しく憲法をつくって出発しなおそうとした、その魂の声を本当によく表現したものです。憲法のすぐれたエッセンス(本質)を取り出して、子どもたちに伝えようとしているものです」。作家の大江健三郎さんは、憲法九条を守ろうと訴えて発足した「九条の会」の発足会見(04.6.10)でこうのべました。

教育基本法「改正」の不当な要求をきっぱり拒否し、教育基本法の精神を実行することこそいま求められています。



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