プロメテウスの政治経済コラム

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的を外してはならない耐震偽造責任追及

2006-04-21 16:52:49 | 政治経済
国交省の偽装問題公表(昨年11月17日)から5カ月が経ちました。ここに来て、事件関係者に対する警察の動きもようやく本格化してきましたが、誰も事件の核心―構造計算書偽造関与―の責任を問われていません。すべて、いわば“別件逮捕”の動きです。何故こんなことになるのか。問題の的が外されたままで“一件落着”とならいのか。改めて事件の本質、責任の所在を明確にしなければなりません。

これまでに浮かび上がった事件の構図は次のとおり。木村建設は低コストと短い工期によるホテル建設で急成長した。その指南役がコンサルタント会社総合経営研究所。両社に都合のいい存在が姉歯秀次元一級建築士。ヒューザーは木村建設の手法に学び、姉歯氏を使ってマンションを次々建て販売した。建築確認にあたる民間機関や自治体の確認検査の甘さが「姉歯偽装物件」の増殖に拍車をかけた―。

構造計算書を偽造した姉歯元一級建築士の容疑は無資格の建築デザイナーに名義を貸した建築士法違反。姉歯氏を重用したヒューザーの小嶋社長はGS藤沢の代金受領の詐欺容疑。 木村建設関連の容疑は粉飾した決算書類を国土交通省に提出した建設業法違反。耐震構造計算書の偽造をフリーパスさせた国指定の民間確認検査機関「イーホームズ」は架空増資の公正証書原本不実記載の疑いで捜査を受けるというぐあい。誰が偽装を認識し、誰が違法行為に手を染めたのか。“別件逮捕”でどこまで事件の核心に迫れるのか。建築確認・検査制度の枠組みそのものに責任の所在があるとすれば、このシステムのもとでは、誰も責任者はいないということにならないか。

政府の方も、3月31日、「耐震偽装事件の再発を防止し、建築物の安全性に対する国民の信頼を回復する」として、建築基準法等の改正案を国会に提出しました。確認審査におけるピアチェック(専門家同士が複数チェックすること)の導入や違法行為に対する罰則の強化〔建築士らへの罰則を「50万円以下の罰金」から「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に引き上げなど〕を盛り込みました。しかし、再発を防ぐためには、罰則を強化するだけでは不十分です。規制緩和を推し進めた政府とそれに手を貸したすべての人々の責任が問われなければなりません

問題の核心は建築確認・検査制度の枠組みそのものにあります。これをそのままにしておいて、再発防止策はありえません。
問題の核心は、規制緩和によって、1998年に建築基準法を改悪して、建築確認・検査を民間まかせにし、チェック体制も整えないままコスト最優先の「経済設計」を可能にしたことなど、建築行政を「安全よりもコスト優先」に変質させたことにあります。このことに対する責任追及と抜本的な変革がなければ、再発防止はもちろん、建築行政に対する国民の信頼回復はできません

さしあたり、建築確認・検査制度の枠組みを次のように変革することが必要です(「耐震偽装再発防止のために建築基準法等改正案の審議にあたっての提案」日本共産党国会議員団06.4.12参照)。
顧客(建築主など事業者)に向いた民間検査機関から住民・居住者に向いた検査機関へ変革するために民間検査機関はすべて非営利の法人に限るものとする。建築確認・検査の責任は公共の責任(地方自治体最終的に国)であることを明確にする。そのため、民間検査機関は、地方自治体からの委託にもとづいて検査業務を行うことにする。確認申請は、地方自治体が受け付け、必要に応じて審査を民間検査機関に委託する。確認済み証などは、地方自治体が責任をもって発行する。地方自治体の人材の育成と確保、技術向上をはかり検査体制を強化する。
構造設計者の位置づけを法的に明確にして責任を持たせると同時に、一定の高さ以上の建築物の構造設計の審査は、非営利の第三者機関によるピアチェックを義務付ける。審査を厳正に行うため、建築確認の審査期間を延長する。また、中間検査の義務化をはじめ、施工時のミスや手抜きを防ぐための仕組みを充実させる。

24戸すべてが退去した「GS稲城」(東京都稲城市)の住民の「姉歯や木村を法に基づいて罰するのは当然。しかしそれでわれわれが助かるわけではない。被害住民の感情とは、かけ離れたことをやっている」という悲憤に満ちた声ををどう受け止めるか。
耐震偽造責任追及の的を決して外してはなりません。




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