プロメテウスの政治経済コラム

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菅首相と米大統領  普天間、日米合意履行で一致  沖縄は、ビエケス島の闘いへ

2010-06-06 21:47:20 | 政治経済
オバマ大統領は6日未明、菅直人新首相と初めて電話で協議。首相が変わっても、普天間「移設」問題で「日米合意をもとに対応していこう」と早速、クギをさした。能天気な菅氏は「しっかりと取り組んでいきたい」と応じた。米政府が何故、間髪をいれず、日米合意履行を確認してきたのか、その重大さをほとんど理解していないのではないか。
今から7年前の2003年5月1日、米自治領プエルトリコのビエケス島から米軍が撤退した。ビエケス島の基地反対運動に手を焼いたブッシュ大統領は、「移設」なしで米軍演習場を同年5月末までに閉鎖することを決定したのだ。米側は当初、「代替射爆場を見つけること」という条件を付けていたが、コンピューター映像で、海上を陸と同じように見立てられる新システムで、メキシコ湾や大西洋上で年に2、3回、実施する。残りの演習は、フロリダとノースカロライナの両州の複数の基地、演習場に分散させる、ということになった(「琉球新報」2002年10月26日 )。
ビエケス島民のように基地反対運動に団結し、本土(プエルトリコ政府)も動かせば、「移設」なしの撤去は可能である。米政府は、米軍が大規模に駐留する沖縄と韓国でビエケス島と同様の反対運動が起こることを恐れているのだ。今こそ、沖縄県民の踏ん張りどころである。心ある本土の国民はすべて沖縄に連帯し応援しようではないか

 鳩山首相の辞任を受けて4日に新首相(民主党代表)に選出された菅氏の能天気ぶりは、彼の次の発言に象徴的である。「(鳩山政権での)いろんな活動が、普天間と『政治とカネ』の問題の中で十分に国民に伝えきれなかった。その二つの“重荷”を、鳩山首相自ら辞めるということで取り除いていただいた」と言うのだ。首相と小沢幹事長の辞任で米軍普天間基地問題も「政治とカネ」の問題もけじめがついたとする発言である
鳩山首相、小沢幹事長が辞任しただけであたかも“みそぎ”がすんだかのように言う菅氏の言い分で、国民が納得できるはずはない。そもそも今回の首相・幹事長交代劇は、沖縄・米軍普天間基地問題や「政治とカネ」の問題、暮らしの問題など、あらゆる分野で国民の期待を裏切り続けてきた民主党政権が、国民の怒りの包囲のなかで持ちこたえられず退陣に追い込まれたのであった。個人の資質で片付けられないことは、政治の素人でも誰でもわかることだ
菅氏は、副総理・財務相として鳩山政権を支えてきた共同責任者として、問題をどう総括し、今後どう対処するのかそのことこそが問われているのだ。

 沖縄県民の民意はいまどうなっているか。最近おこなわれた琉球新報と毎日新聞の共同世論調査(5月31日発表)で、普天間基地の辺野古への「移設」に反対と答えた人は84・1%と圧倒的であり、「反対」理由の第一は、「無条件の基地撤去」で38・0%、「国外に移すべき」が36・4%である。無条件撤去が、沖縄県民の第一の声になっているのだ。くわえて、日米安保条約の評価では、「維持すべき」はわずか7・3%。「平和友好条約に改めるべき」が54・7%、「破棄すべき」が13・6%、合計で「日米安保をなくそう」という立場が68・3%となっている。琉球新報はこれを「安保の根幹に矛先」という大きな見出しで報じた

 『週刊 金曜日』(2010・6・4 801号)の伊藤千尋さんの記事(「7年前の5月30日、ビエケス島から米軍が撤退 『抵抗の島』として次に再生するのは沖縄だ」)に触発されて、南米プエルトリコのビエケス島での反基地闘争のことを思い出した。島内の3分の2を米海軍の施設で覆われているビエケス島は、1940年代から過去60年にわたって空母艦載機などの射爆演習場として使用されてきた。基地返還の運動も60年にわたったが、急激に高まったのは、1999年に演習中の誤爆で民間の警備員1人が死亡してからである。それまでも実射訓練で何人ものビエケス島の住民の命が奪われ、90年代に入ると、実射訓練で使用されるものに、劣化ウラン弾をはじめとする化学兵器が含まれるようになっていた。もはや我慢の限界である。島内だけではなく、プエルトリコ全土で演習場撤去、海軍撤退を求める運動が発展した。島民は座り込みをはじめとするあらゆる民間レベルの抗議行動に打って出る。その運動は、地元警察を味方につけ、アメリカ寄りのプエルトリコ連邦政府を巻き込み、参加者の輪を拡げて行った。

ついに2001年、当時のブッシュ大統領は①住民に被害が出た②住民が望んでいない③代替地は米軍側があとで探すの3点をあげて2年後の演習中止を決めた。沖縄では、、「どんな形であれ県内に新基地はつくらせない」という県民の総意は、いよいよ揺るがぬものとなりつつある。問題は、本土の人びとが沖縄と連帯してどこまで中央政府を巻き込むかである。北京の中国新聞が、「菅氏は普天間問題での日米合意を継承」しようとしている、「前任者と同じことをすれば、また一人短命首相を生み出すことになる」との見通しを示したという(「しんぶん赤旗」2010年6月6日)。
私もまったく同感である。

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