プロメテウスの政治経済コラム

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高レベル放射性廃棄物処分場誘致で揺れる高知県・東洋町  原子力発電の落とし穴

2007-03-13 19:00:04 | 政治経済
原子力発電を行なえば必然的に放射性廃棄物が発生する。これらには、発電所の定期検査などで出る放射能レベルが比較的低い廃棄物と、核分裂によって生じた放射能が極めて高いレベルの廃棄物がある。高レベル放射性廃棄物は仮に人が1メートル以内に近づけば数秒で致死量の被ばくをするほど放射線が強い。さらに、その毒性が数百万年にわたって続くことから非常に厄介な廃棄物である。原発を始めた数十年前には比較的簡単に処分できると信じられていたようである。だが、いまや最も厄介なものと認識されるようになった(ENVIROASIA Webサイト「高レベル放射性廃棄物処分場誘致の声が各地であがるわけ」)。

政府・電力会社によって推進されてきた原発の使用済み燃料は、英仏に委託して再処理を進めてきた。使用済み燃料には、プルトニウムと燃え残りのウランが含まれる。これらを取り出すために、再処理工場で、硝酸などを用いて使用済みの核燃料を溶かす。再処理によって、死の灰を大量に含んだ液状の廃棄物が残ることになる。この廃液を、ガラスと一緒に固め、キャニスターと呼ばれるステンレス製の容器(直径40~50センチ、高さ約1メートル)に詰めたものが、処分対象となる高レベル放射性廃棄物である。ガラスで固めるためガラス固化体呼ばれている。
日本では、これを再処理後30年から50年間一時貯蔵(六ヶ所村)したのちに、地下300mよりも深い地層に埋め捨て処分することが計画されている。東洋町は、このガラス固化体の処分場候補地に名のりをあげたのだ。ひとつの処分場にはガラス固化体を4万本程度埋設する予定である(「高レベル放射性廃棄物処分の危険性と問題点」末田一秀・はんげんぱつ新聞編集委員)。

使用済み燃料の再処理によって生じたプルトニウムは、新型転換炉(「ふげん」)や高速増殖炉(「もんじゅ」)で再利用するというのが当初の日本の長期原子力利用計画であった。しかし、この構想はいまやまったく破綻してしまった。わずか5~8キロもあれば原爆が造れるといわれる軍事物質のプルトニウムの余剰を2003年時点で日本は既に40トンも貯めこんでしまっている。プルサーマル計画を無理やり押し進めたところで、この余剰状況はまったく解消されない。再処理をしてプルトニウムを取り出せば取り出すほど余剰量が増えるのだから、地層処分場の安全性議論の前にまず再処理をやめるべきだと末田一秀さんは主張する。
高レベル放射性廃棄物の安全な処分方法は、まだ確立されていない。世界的にも再処理を行う国は限られてきている。このため各国で地層処分の研究が行われているが、ガラス固化体の処分を前提に進めている国は日本やフランスなどで、アメリカ、カナダ、スウェーデンなどは使用済み燃料の形態で地層に埋める計画である。日本でもいずれ見直しの議論が起こるだろう(末田一秀 同上)。

放射性廃棄物の毒性が超長期間続く(放射能が減衰する期間は数十万年~数百万年)のに対して、の技術で人間環境から隔離できるとされている期間は、ベストな条件を組み合わせてみてもせいぜい1万年程度とわずかである。実際に処分してみたときに極めて早くに漏れ出てくる恐れも十分ある。高レベル放射性廃棄物を埋め捨てて、安全性が確保できるのか、世界の各国で処分が進まない理由について十分検証もされていない。
たとえ事故がなくても日常的に放射能を排出し、放射性廃棄物を発生させる原子力発電を使い続けるのかどうかという視点を持たない限り、取り返しのつかない汚染物質を作り続けることに荷担していることになる。政府は「弱みにつけこんで悪いものを押し付ける」(共産党・志位委員長)前に、信頼できる処理・処分方法の開発に力を注ぐべきであり、原子力発電そのものの見直しに着手すべきだ。

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