プロメテウスの政治経済コラム

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北朝鮮の「新しい道」――約束を何も守らなかったトランプ大統領

2019-12-30 21:29:43 | 政治経済

 トランプ大統領は、2018年6月、初めて現職アメリカ大統領として北朝鮮代表と会うという画期的サミットをシンガポールで行った。そして、2019年2月、ハノイで、2019年6月、板門店の非武装地帯で更に2度、金正恩委員長と会った。非武装地帯では、北朝鮮の土地に足を踏み入れた最初のアメリカの大統領となり、トランプ大統領にとってはアメリカ国民に自慢する格好の広報活動の機会となった。しかし、①新しい米朝関係を築き(敵対的関係を解消し関係正常化する)②持続的な平和体制を確立し③朝鮮半島の完全な非核化を実現するというシンガポール共同声明の約束は、米国による「対話と圧力」路線――対話を進める、進めると言って北朝鮮の核抑止力の強化を制御しながら、実際は「史上最大の圧力」を一層強化して朝鮮を「先非核化、先武装解除」に追い込もうとする戦略――によって破られてしまった。トランプ大統領はシンガポール合意を実行することについて、どうやら、はじめから本気ではなかったようで、とうとう平壌を怒らせてしまった

 

最近まで、北朝鮮はICBM実験を止めるという誓約に忠実に取り組んでいた。平壌は制裁緩和問題、少なくとも部分的制裁解除に関し、敵対的関係の解消という新しい米朝関係へ向けたアメリカ側の取り組みを期待した。だが最近、ロシアと中国が、北朝鮮に対する国連制裁の緩和を提案したにもかかわらず、ワシントンは、それは「早過ぎる」動きで、北朝鮮は、まず核兵器備蓄の完全廃止に向かって、逆転不可能な措置をとらなければならないと断固主張して、提案を拒絶した。トランプの「対話と圧力」路線とは、結局、北朝鮮の核開発活動を制御しているとアメリカ国民に自慢するだけのトランプの人気取り政策に過ぎなかったのである

 

 米朝間の攻防が大きな曲がり角に差しかかっている。 米国が年末まで「新しい計算法」を示さなければ、北朝鮮は「新しい道」に進むと宣言している。北朝鮮が「新しい道」に進むということは、米国による「対話と圧力」路線の破綻を意味する。「新しい道」とは、北朝鮮がシンガポールサミット以来取ってきた、核兵器をこれ以上作らない、実験しない、ICBM発射実験も行わないという実質的な「核凍結」の解除を意味する。米国の最大限の「圧力」が続く限り、北朝鮮は自衛のために対米国核抑止力の強化に向かわざるを得ない。
 トランプ大統領の北朝鮮外交の、人気取りの賞味期限が切れたように思われる。トランプは政策を転換し、今や敵意へと戻っているアメリカ支配階級にとって、朝鮮戦争レジュームの維持は、二つの意味で依然有効である。現在トランプは、韓国や日本への米軍駐留に対し、今よりも4~5倍の財政貢献を要求している両国を目下の同盟国として縛り付けるには、朝鮮戦争レジュームの維持が必要である。もう一つのより大きな戦略上の問題は、中国(及びロシア)と米国の長期的な対立のコースである。アメリカ政府は、繰り返し、中国を地政学上の主要対立国として標的にしている。在韓駐留米軍は、28,500人の兵と核兵器搭載可能爆撃機と戦艦とで構成されており、対ミサイル終末段階高高度地域防衛システム(THAAD)は韓国を北朝鮮から守るのが狙いではない。在韓米軍と出撃・兵站基地としての在日米軍は、実は中国(とロシア)包囲が狙いである。実際ワシントンは朝鮮半島の平和や韓国、日本の軍事駐留縮小を望んでいないのだ

 


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