プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

米軍基地は日本を守ったことがあるの?   重いジャーナリズムの責任

2010-07-09 19:25:23 | 政治経済
日米安保条約は、1951年9月、対日平和条約とともに、日本への軍事占領を継続したい米政府と戦後の国際情勢のなかで下からの国体の変革を恐れた日本の支配層の思惑が一致して、サンフランシスコで密かに調印された。9年後の1960年、岸信介内閣は、日米間の結びつきを一層強め固定化するために、強い反対の声を押し切って、新・日米安保条約を締結。国会周辺が騒然となる中、「依ってきたる所以は別として」暴力はやめよ、と新聞は権力に屈した(「ジャーナリスト」日米安保改定50年 臨時増刊号2010年6月25日)。
それから50年。「安保」はそのまま固定され、「日本を守る」から米軍の世界戦略を担うものになり、自衛隊との一体化が進んでいる。私たちはいつの間にか基地にも安保にも慣れ、核の存在まで当たり前になってしまった。そんな国民意識を作るうえで、革新の側の力不足もあるが、マスメディア、ジャーナリスト自身の責任は重い。なし崩しの対米従属、日米安保体制に、マスメディアは全くといっていいほど、批判の目を注がなかった

 神戸女学院大の石川康宏教授が「平和新聞」(日本平和委員会2010年6月25日)に大学1年生のゼミでの自身の経験を書いている。
<5月7日、1年生(多くが18歳)向けのゼミで“シリーズ DVD「どうするアンポ」”を上映。ゼミはレポートの書き方を学ぶことが中心課題で、その内容を「戦争と平和」としています。このゼミには、20人が所属しています。
DVDを見た学生が真っ先に出した質問は、「在日米軍は日本を守ったことがあるのか?」というものでした。テレビで海兵隊は必要だという議論がよく流され、「米軍が日本にいるのは当たり前」と何となく思わされているが、その米軍が実際に何をしているのかについては知らないのです。これは学生たちの実情を示す象徴的な質問だったと思います。日米安保や在日米軍の存在は、日本社会の根本問題なのに、ほとんど何も知らされていない。これは異常なことです。学校だけでなく、大人の誰からも伝えられていない。さらにいえば、米軍による日本の軍事占領など、戦後史の知識もほとんど与えられていません。これらの事実を知らないままで、今日の日米関係を正しく捉えることはできません
しかしDVDを見た後のやり取りで、学生たちは短時間に理解を深めます。「米軍は日本を守ったことはあるんですか?」との質問に、「ない」と私。「米軍はなぜいるんですか?」「安保条約で基地提供の義務を定めているからかな」「安保条約はなくせないんですか?」「10条に基づき、日本政府がアメリカ政府に通告すればいい」「なぜしないんですか?」「安保がなくてもいいという国会議員が少ないから」「参議院選挙では基地や安保は話題になるんですか?」・・・以下略>

 <「日米安保体制は、日本を蝕み、ゆがめている。そのゆがみは、政治・外交・防衛・経済・財政にとどまらず、教育、文化、思想、福祉、地域にいたるまで及んでいる。その中で、マスメディア=大手組織ジャーナリズム=の報道・論調と経営姿勢が果している役割はことのほか重大である。
最近の政権交代――鳩山政権の「米軍再編見直し論」「東アジア共同体構想」に対する反発・批判は異常というほかない。「変えるな」「日米同盟の深化」「抑止力」論の大合唱である。本来、ジャーナリズムが依拠すべき世界に誇る平和主義の「日本国憲法」を脇に追いやって、「軍の論理」「力の論理」を政権に求めるジャーナリズムこそ、日本をゆがめる"元凶"というべきではないか。>(「安保改定50年」にあたって JCJ声明2010-6-27より)

 1960年6月17日、朝日新聞社の笠信太郎論説主幹は自ら筆を取り、読売新聞社、毎日新聞社の編集幹部と協議して、「共同宣言」をそれぞれの新聞紙上に発表した。それを日本新聞協会が在京他社にも根回しし7社宣言とする。さらに地方新聞にも配布して、結局、この「共同宣言」は全国48紙に掲載されることになる。 
「共同宣言」の中身は何か? それは、「暴力を排し、議会主義を守れ」という「宣言」であり、「6月15日の流血事件」は、「暴力」をもちいた警察や国家権力にあるのではなく、「暴力」をもちいた民衆に責任があるのであって、それは「議会主義」を冒涜したものだ、という内容だった。無防備のデモ隊を警棒で殴り、重傷者を続出させた警官の暴力を不問にふし、なぜ国会を30万人のデモ隊が取り巻いたかの「依ってきたる所以を別として」事態収拾を求めたものであった。
爾来「安保で新聞は死んだ」のである。

 日米安保条約と行政協定は極めて不平等であり、日本には米国外では最大の米軍基地群がアメリカの要求通りに維持されてきた。自民党政権と外務省は、この不平等条約体制、対米従属関係に積極的に奉仕してきた。とくに外務省は、外務次官、駐米大使、北米局が日米関係を統括し、アメリカの要求に従うことが日本の利益だという省内論理を徹底させた。そして、メディアは国民への世論操作をつうじて、この省内論理を国民に徹底する役割を担ったのだ。
「日米安保にまつわりつく人たちの腐臭はすさまじい」(寺島実郎さん)。

 しかし、ことは日米支配層の思惑どおりには進まないだろう
沖縄では、7月の参院選に続いて、9月には名護の市議選、11月には県知事選が行われる。オバマ大統領の来日も同月に予定されている。辺野古新基地の「位置と工法」を決める期限は8月末。菅政権は、多額の税金をつぎ込んで住民を分断し、移設の根回しを図る「アメとムチ」政策を水面下ですでに始めているという(「ジャーナリスト」同上)。
菅政権のこうした懐柔策や「工法」の具体化は、沖縄県民の「怒り」の火に油を注ぐそそぐことになるだろう。沖縄県民の怒りのマグマはこの秋、頂点に達し、それは必然的に日米同盟の核心に迫らざるを得ないものとなるだろう。

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