プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

参院選で候補者を見分けるための4つの基準  支配階級が菅政権に期待する野望にストップを!

2010-07-10 16:58:18 | 政治経済
いよいよ第22回参院通常選挙の投開票日が明日に迫った。選挙の最終盤を迎えて情勢が激動している。各種世論調査で①菅内閣の支持率が急落している②消費税反対の世論がだんだん強さを増している③支持政党なし・投票先をきめかねている人が増加している。
支配階級とマスコミの世論操作に簡単に乗せらせず、どの候補・政党に投票するか迷っている有権者が増えているということだ。
私は、参院選で候補者を見分けるため大きく4つの基準を考えることにした。
①対米従属を恒久化するような「日米合意」に反対かどうか
②構造改革の当面の焦点である消費税増税、法人税引き下げに反対かどうか
③構造改革促進のための国会議員定数削減、公務員削減に反対かどうか
④支配階級から独立・自立していることの証である「企業・団体献金の継続」に反対かどうか

菅政権は、構造改革の矛盾が爆発するなかで、安倍政権以降、福田、麻生、そして鳩山政権と4代続いて停滞していた構造改革と日米同盟深化の路線を民主党が政権をとったこの機会に、民主党を本来の保守政党に引き戻すことで一気に立て直すという支配層の期待を担って登場した政権である(渡辺治「菅政権の登場と参議院選挙の意義」『前衛』2010・8 No.860)。選挙戦中の動揺は、プラグマティスト・菅氏の単なる世論対策に過ぎない。
「政治とカネとか、普天間のことで少しご心配をおかけしたが、それもクリアをした」
菅首相は10日午前、福井県坂井市内での街頭演説でこう語った。これほど国民をバカにした話はない。彼の頭のなかに、もはや沖縄県民の怒りも国民の怒りもまったく存在しない。

菅氏は、今や「日米同盟は過去50年間、アジア太平洋の平和の礎として不可欠な役割を果たしてきた」と、日米同盟を全面賛美している。アメリカはもはや同盟国の助けなくして単独では戦争できない。とりわけ日本の基地は、戦争遂行のためにはなくてはならない存在となっている。「アジア太平洋の平和の礎として不可欠な役割を果たしてきた」どころか、アジアの安定、世界の平和を乱してきたのだ。自衛隊員が戦争に巻き込まれなかったのは、憲法9条のおかげである。そして今、アメリカは基地、施設の提供だけではなく、自衛隊員を戦力として米軍の配下に組み込みことを要求している。日本の支配層は、アメリカの要求に従うことが日本の国益だと信じて疑わない。菅政権は、おそらくソマリアやアフガンへの自衛隊派兵、さらには小泉政権以来の課題である自衛隊の恒久派兵法や鳩山政権のもとで頓挫してしまった防衛計画の大綱の策定を一気にすすめだろう。大連立による改憲が狙われる可能性もある。日本は本来敵視される必要のない「米国の敵」から、標的とされる危険に晒されるのだ。国民にとっては、迷惑千万な話である。

菅氏は、自民党提案に乗る形で、消費税増税10%を持ち出したことを、「すぐにでも消費税を引き上げるのではないかと受け止められた」などと言い訳している。とんでもないトボケタ話だ。民主党の内部資料「参院選マニフェスト消費税関係Q&A」は、今年度中に消費税増税の「改革案」をとりまとめ、速やかに法案の成立を期すと明記。来年にも増税法案を強行し、次の総選挙では国民に“事後承認”を迫る―。これが菅政権の財界へのメッセージである。事態は先の話ではなく、今回の参院選での選択にかかっているのだ。
消費税の増税、法人税の引き下げは小泉以降の長年の財界の宿願である。「強い経済」は多国籍大企業をさらに支援することであり、「強い財政」は庶民への犠牲転嫁であり、「強い社会保障」は持続可能のうたい文句で国の責任を縮小することである。大企業・富裕層にますます富が蓄積され、貧困層がますます拡大する道である。共に栄えるためには、負担能力のある大企業・大資産家から貧困層へ所得移転するほかない。

日米同盟強化、構造改革路線は、一般国民と支配階級の矛盾を激化させずにはおかない。強権的に政治を安定させようと思えば、不満を持つ国民の声が国会に届かないようにすることである。民主党と自民党で95%も占められた国会はブレーキを失った車のようなものだ。消費税率の引き上げも法人税の引き下げも、労働法制の骨抜きも、社会保障の抑制も思いのままである。

かつて日本型開発主義国家の高度経済成長時代、労働者は企業への忠誠心と過度な労働を強いられたが、長期雇用と年功処遇のもと、いまのように一方への富の蓄積が、他方の局での貧困の蓄積という資本主義的蓄積の一般法則がそのまま貫徹することはなかった。しかし、今は明らかに違う。闘わなければ、労働者の死と国民への一方的な犠牲の転嫁を撥ね退けることができないのだ。

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