プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

民主党代表選びの1週間 問われるべきは何か

2006-04-08 22:07:36 | 政治経済
前原誠司代表が「偽メール」事件の責任をとって、3月31日に辞意表明してから約一週間。日本のマスメディアは、民主党代表選に席巻されました。民主党の渡部恒三国対委員長は「野党の党首選挙がこんなに大きく取り上げられているのは、生まれて初めての経験だ」と満面の笑みです。「この党を、政権交代可能な二大政党制の一翼を担えるように鍛え直すこと。それは…日本の民主主義にとって重要な意味を持つ」(「朝日」六日付社説)という論調までありました。そこにあるのは、国民の知る権利に応えて、政治に何が問われているか明らかにするというマスメディアの原点の放棄です。

民主党は七日、東京都内のホテルで党大会に代わる両院議員総会を開いて代表選を実施。小沢一郎前副代表(63)を新しい代表に選出しました(小沢一郎119票、菅直人72票)。
小沢氏は代表選に先立つ演説で「政権交代こそが日本の真の『構造改革』だ。民主党は危機に直面している。二大政党制と政権交代の火を消してはならない」と訴えました。

民主党は、任期途中で代表が四人連続して辞任することになりました。なぜこのような不安定性が生まれるのか、その根本は何かが問われなければなりません。
前原執行部は「対案路線」と称して自民党と「改革」競争を展開、「中国脅威」論や集団的自衛権の行使のための改憲論など自民党よりタカ派とみられる方向を打ち出しました。通常国会ではライブドア事件をはじめ「四点セット」の「対決」路線に転じましたが、政策論争する確固たる立場がなく、「偽メール」事件で“自滅”しました。「日米同盟最優先でも『新自由主義』路線でも、自民党と基本的に違いがないから、常に“両極”にゆれる」(日本共産党の志位和夫委員長)のです(「赤旗」06.4.8)。
いま問われなければならないのは、政権交代を言う前に、新しい執行部がこうした問題をどう総括し、自民党政治にどのような姿勢でのぞむのかです

メディアはこうした点を検証すべきでしたが、報道の主流は両陣営の多数派工作に終始しました。新代表を選出した七日の両院議員総会をNHKはじめ民放も複数局が生中継。前日には小沢一郎、菅直人両候補が四つのテレビ番組に生出演し、「テレビジャック」(「読売」七日付)といわれるほど。全国紙も、連日一面トップで報じ、社説、特集などで、「国民的関心事」に仕立て上げました。
小選挙区制導入で、人為的に「二大政党制」をつくろうとしたものの、民主党のあまりの体たらくに「育成努力」が必要だとでも言いたいのでしょうか。世界の各国を見ても二大政党制は明らかに歴史の進歩の障害になっているだけです

問題は、小沢民主党執行部が現実の政治で小泉政治とどう対決するのかです。
小沢氏は十三年前の『日本改造計画』で規制緩和を徹底的にすすめ、消費税増税や小選挙区制の導入、憲法第九条に自衛隊保持・「国連指揮下」の海外派兵を明記する「第三項」の追加を提案しました。いわば、小泉政権のもとで害悪が噴出している「新自由主義」路線や、海外派兵・憲法改悪のはしりを切り開いたのが小沢氏でした。

公共サービスを切り捨てる「行革推進」法案や、国民皆保険制度を根本から突き崩す医療改悪法案などの審議がすでに始まっています。民主党は重要法案にどう対処するのか明日からでも問われます。
自民党政治に対して事実と道理をもって対決する野党としての立場を鮮明にできるかどうか民主党の今後の動向を注視しなければなりません。




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