プロメテウスの政治経済コラム

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国会同意人事  民主党など3人を「不同意」  国民が納得できる判断基準を

2007-11-15 18:06:12 | 政治経済
4日の参院本会議で、56年ぶりに国会同意人事が否決された。参院の与野党逆転を象徴する出来事だが、ただむやみに否決すればよいというものではない。否決する限りは、政党としてのその判断基準、見識が問われる。民主党などの3人の「不同意」いついては、疑問なしとはしない。

国会同意人事は衆参両院に同等の権限があり、衆院で通っても参院が不同意の場合、欠員もしくは暫定的な残留扱いとなり、一般の法案のように衆院で再議決することはできず、任命が白紙に戻る。予算案のように衆院の優越もなく、参院第一党の民主党が人事の命運を握っているともいえる。それだけに民主党の見識が問われる。同党は13日、同意人事について《1》目的、権能を十分に果たしている組織か《2》給料は妥当か《3》専門性はあるか《4》所管省庁の天下りポストになっていないか-など6つの判断基準を公表した(北海道新聞11/14 07:55)。

民主、社民、国民新の三党によって今回不同意とされた3人は、労働保険審査会委員の平野由美子氏、運輸審議会委員の長尾正和氏、公害健康被害補償不服審査会委員の田中義枝氏の三氏である。民主党は今回の判断基準について、表向きは「官僚の天下りでは出身省庁に厳しいことが言えない」などとしているが、小沢一郎代表が13日の記者会見で、「(与党には)参議院で過半数割れしている認識が非常に薄い。過半数をもっている人(民主党)に対する説明をしなきゃ(同意人事が)通らないという認識が薄い」と述べ、与党をけん制したように、民主党内には早くから、今回の国会同意人事を、参院で民主党が多数を占めていることの象徴にする思惑があった大連立談合で「対決」姿勢に疑問符が打たれたので「まったく不同意がないというのも格好がつかない」というのが本音のようだ(「しんぶん赤旗」11月15日)。

予算案と条約承認、首相指名などについては、憲法などで「衆院の優越性」を認めており、衆院の議決が参院に優先する。通常の法律案も、参院で否決されても、衆院で三分の二以上の再議決があれば成立する。しかし、国会承認や、同意を必要とする案件は、衆院再議決の規定もなく、参院で否決されれば、それを覆す規定はない。衆院事務局によると、同意人事以外に国会の承認が必要な案件は16に上る。その中で、政府にとって特に気がかりなのは、イラクや周辺事態、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊の海外派遣に関し、事前や事後の国会の承認が必要になっていることだ。今国会の焦点となる新テロ対策特別措置法案では、11月1日で期限切れとなった旧テロ対策特別措置法にあった国会承認の規定を削除したのもそのためである(東京新聞11月15日)。

政府の国会同意人事案件の一部が、参院で否決されたことに対し、町村信孝官房長官は強く反発、参院に反対理由の説明を求めるという。気持ちはわかるが、国会は国権の最高機関であり、国民の意思を国会の意思として代表することにはなんら問題はない。問題はその判断基準が国民からみて納得できるかどうかである
民主党は、労働保険審査会委員の平野由美子氏、運輸審議会の長尾正和氏、公害健康被害補償不服審査会委員の田中義枝氏の三氏は、官庁出身者であることから「天下り」と判断し、反対したという。しかし、三氏はいずれも再任の是非が問われたもので、前回の就任時には、民主党も含め全会一致で同意した人事である。例えば平野由美子氏は、前任者の欠員を埋める形で昨年11月に就任したばかりであり、一年で態度を変える理由が「官僚には厳しく」というだけでは説得力に欠けるのではあるまいか。また田中義枝氏は小児科の医師で、国立病院などの勤務医を経て、環境庁特殊疾病審査室長、労働省じん肺審査医、成田空港検疫所長、国立感染症研究所主幹など医療行政や研究機関の職を歴任し、3年前に委員に任命された。少しでも役所に籍を置いただけで天下りというのも強引ではないか(「しんぶん赤旗」同上)。

日本共産党の穀田恵二国対委員長は「官僚だからダメとか、財界人だからダメといった一律な判断はしていない。わが党の政策と相いれるかどうかがだけが基準ではない。それぞれの委員会の任務に照らして、ふさわしい人かどうか、利害関係はないか、また再任の場合は実際の活動ぶりをみて判断している」としている共産党は、これらの三氏については、それぞれの委員としての活動の実績から判断して、同意に賛成した(「しんぶん赤旗」同上)。

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