プロメテウスの政治経済コラム

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七-九月期国内総生産(GDP)速報  不安要因多く先行き減速不可避

2007-11-14 19:24:31 | 政治経済
内閣府が13日発表した2007年年7-9月期の国内総生産(GDP)速報値は実質で前期比0・6%増で二・四半期ぶりのプラス成長となった。しかし、GDPの半分超を占める個人消費の増加は小幅で雇用者報酬も伸び悩み、力強い個人消費回復は望み薄。拡大した輸出も、頼みの米経済が低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)問題などで不透明感を増し円高、原油の高騰などの不安要因もある。日本経済は減速の懸念を抱えている(「東京新聞」11月14日)。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎シニアエコノミストは、10―12月期の見通しについて、「消費は所得が伸びておらず高い伸びが期待できない。米国経済の減速も今後、本格化するため輸出の伸びが鈍化するだろう。景気は減速の色合いが強くなり、これから厳しくなる」と語っている(「しんぶん赤旗」11月14日)。

7-9月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除去した実質で対前期比0・6%増、年率換算して2・6%増になった。7-9月期は、民間住宅投資の目立った落ち込みもあったのに、それを埋めての対前期比プラス成長だから、数字それ自体は、予想を上回る結果だったといえるかもしれない。大田弘子経済財政担当相は、「しっかりした景気回復基調が確認された」としている。しかしこの判断は、極めて皮相的である。表面的には、4-6月期が対1-3月期比マイナスに落ちたものが、7-9月期は対4-6月期比プラスとなったが、プラスは、相変わらずの輸出依存型で、国内景況は、横ばいをやや上回ったというところである。 成長への寄与度を内需と外需に分けてみると、輸出から輸入を差し引いた純輸出への依存度が高い。GDPの対前期比伸び率0・6%のうち0・4ポイントは海外依存で、内需による支えは0・2ポイントに止まる(世界日報社説11月14日)。

実質GDPの個人消費は前期(07年4-6月期)比0・3%増。同時に発表された雇用者報酬は0・2%減で、サラリーマンの所得が伸びていないこともはっきりした。毎月勤労統計調査(九月分結果)によると、サラリーマンの所定内給与は17カ月連続で減少している。夏のボーナスは三年ぶりにマイナスであった。今期の個人消費の伸びは、家計のゆとりの結果というより、猛暑によるアルコール飲料好調などの影響と生活必需品価格の上昇が作用したものであった。バブル期を超える空前の大企業の利益は、依然労働者に還元されていないのである。個人消費の増加は、いや応なしの支出増であり、これでは、庶民に「景気回復」の実感がわきようもない(「しんぶん赤旗」同上)。
日銀は、好調持続の企業収益が次第に家計部門に波及するだろうと一年以上も前から指摘し、金融正常化を目指して金利水準の上方修正を実現すべく何度か時期を模索してきたが、その都度、先行き懸念から前進できないままである。内閣府は内閣府で、「景気は底堅い」と言い続けてきたが、それでいて「デフレは解消していない」とも繰り返す(世界日報 同上)。


このところガソリンや食品などが相次いで値上がりし、個人消費の行方に「黄信号」がともりつつある。セブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏社長は、「顧客に節約志向がある。客数は伸びているが、(客一人当たりの)単価は減っている」と話す。今後さらに、増税や社会保険料引き上げの懸念が、庶民を襲う。個人消費は停滞せざるをえない。
米国、アジア向けを中心に今期2・9%増と拡大した好調な輸出も外国為替市場では円高が進行しており、サブプライムローン問題による米国経済の変調が、日本の輸出動向にマイナスの影響を与える可能性が高い。外需(輸出)頼みで成長を維持している日本経済に打撃となることは間違いない。
今回、設備投資は1・7%増と三・四半期ぶりにプラスに転じた。だが、日本政策投資銀行調査部の鈴木英介調査役は、「米国経済の失速で国内企業の収益が鈍化すれば、設備投資の伸びも鈍る恐れが出てくる」とみている(「東京新聞」同上)。

内閣府が発表した9月の景気動向指数速報は先行指数が0.0%となり、2カ月連続で50%を下回った。先行指数が0.0%となるのは、1997年12月以来である。国民生活・家計、中小零細企業の営業を犠牲にする経済運営は、日本の景況が海外要因によって大きく左右されることを示している。国際金融不安の底流と主要原材料の価格高騰は、海外依存の日本経済の先行きを確実に危うくしつつある。

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