プロメテウスの政治経済コラム

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日米財界人会議の共同声明 諦めていない労働法制の改悪 一層の「構造改革」を要求

2007-11-16 13:55:54 | 政治経済
11月4日から米国ワシントンで開催されていた第44回日米財界人会議が5日夕、共同声明を採択して閉幕した。金銭による解雇の自由化、ホワイトカラーエグゼンプションの拡大を迫るなど、世論に阻まれた形になっている一層の労働法制の改悪に執念を見せいている。支配階級の今後の「構造改革」についてのプログラムを示すものであり、引き続き警戒を怠れない

日米財界人会議が発表した2007年の共同声明の全容が分かった。日米財界人会議とは、日米の経営首脳が経済問題について協議をおこない、主に日本政府に日米の大企業の要求実行を迫る会議である。日米持ち回りでおこなわれており、日本側は日本経団連、日本商工会議所、経済同友会、関西経済連合会、日本貿易会など約90の大企業・団体が参加。現在の日本側議長は氏家純一野村ホールディングス会長である(「しんぶん赤旗」11月14日)。

金銭さえ払えば解雇が自由にできる「金銭解決制度を導入」することを要求。長時間労働野放し・“残業代がゼロ”として国民的批判をあびた「労働時間規制の適用除外」(ホワイトカラーエグゼンプション)の範囲の拡大を日本政府に迫っている。声明は、「日本の政治情勢から、2007年におけるこうした労働法制改革に関するアクションは実現することがなかった」と悔しさをにじませた。その一方、「日本経済がよりグローバル化するにつれ、時代のニーズに合わない労働法制のままでは、日本企業の競争力を損なうだけでなく、グローバル企業の投資対象国としての日本の魅力にも影響を及ぼす」と指摘。労働法制を改悪し、搾取を強化することが、日本の大企業の利益のためだけでなく、日本に投資する米国の多国籍企業の利益になることをあけすけに述べている(「しんぶん赤旗」同上)。

日本の法人実効税率については、「国際的な水準まで低減されることを要望する」として更なる引き下げを要求。消費税は、国際基準との「整合性を確保する」ことを求め、事実上の消費税増税提言となっている。また、来年度の税制「改正」の焦点になっている証券優遇税制については、減税措置が期限切れとなる2008年度以降についても継続するよう求めている。支配階級の税制改正に対する要求の焦点がどこにあるかを示すものである(「しんぶん赤旗」同上)。

多国籍企業の自由な活動を保障する日米間の経済連携協定(EPA)については09年に交渉を開始できるよう、すぐに行動を起こすよう要求。具体的な検討課題として、関税に加え、法規制、物流、認証、投資ルール、資本と為替市場、農業、ヒトの移動、知的財産権など関心分野をすべて挙げている。とくに日本の農業問題について言及し、「構造改革を推進すること」を要請。大規模農家さえたちゆかなくなっている農業「改革」の一層の推進を求めている(「しんぶん赤旗」同上)。

ポスト京都議定書の国際枠組みについては、(1)中長期の温室効果ガスの削減目標と公約が必要(2)計画には米国、中国、インドなどすべての主要温室効果ガス排出国を含むべきだ、と提言。一方で、「経済成長への影響を最小化させる柔軟性」も求め、各国が事情に応じて排出権取引や税制などを検討できるようにすることなど日米政府の方針に沿う提言をおこなっている(「朝日」11月06日10時55分)。

日本の政治経済状況を米国側に説明した経済同友会の桜井正光代表幹事は、民主党の小沢代表による辞意表明について「驚いている。政局は大変混沌としている」と指摘。日本経済のリスク要因のひとつとして構造改革の遅延を挙げ、「国民生活の安定や構造改革の推進のため、すぐさま政治の安定化をはかってもらいたい」と述べた(「朝日」2007年11月05日13時21分)。
日米同盟強化と一層の「構造改革」=多国籍企業の繁栄のためには、国民生活への犠牲転嫁を当然とし、予想される国民の政治的反抗を抑える大連立=政治の安定を求める財界の総意を語った。

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