プロメテウスの政治経済コラム

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韓国哨戒艦沈没 国連安保理議長声明   外国駐留軍は不安定材料

2010-07-11 18:54:35 | 政治経済
国連安全保障理事会は9日、韓国の哨戒艦沈没事件に関し公式会合を開き、「沈没に至った攻撃を非難する」とした議長声明を全会一致で採択した。いきり立つ韓国・米国の顔を立てた格好だ。
韓国が本件を安保理に持ち込んだのは6月初めだから1ヶ月以上かかったことになる。日本のマスコミは、「しんぶん赤旗」も含めて韓国合同調査団の調査結果を鵜呑みにして、例のとおり、悪いのは北朝鮮であり、それを庇う中国、ロシアという図式報道一色である。誰一人、調査結果の信憑性を疑わない。
口では、東北アジアの平和の構築などというが、その本心は、北朝鮮が不安定要因であり続けることを望んでいるかのようだ。しかし、歴史的現実は、韓国や日本への米軍の駐留こそが、アジアの、そして世界の不安定材料であるということを教えている

 安保理の議長声明は、いきり立つ韓国・米国の顔を立てたために、「沈没に至った攻撃を非難する」が、「関与を否定する北朝鮮を含む関係国の主張に留意する」として、北朝鮮の関与を安保理としては認定しないという、結局、目的不明の声明となった
中国やロシアは、北朝鮮を庇ったというよりも、そもそも「北朝鮮の魚雷攻撃」で沈没したとする合同調査団の調査結果を信用していない。天安艦 民・軍合同調査団が5月20日の調査結果発表時、天安艦を攻撃したものとして提示した北韓魚雷(CHT-02D)実物大設計図は実は、該当魚雷のものではなかったことも今では明らかになっている。多くの韓国人自身が、北朝鮮の魚雷攻撃だとする調査結果にはまだまだ客観性が足りないと思っているのだ。
北朝鮮を名指しした強い非難を求める日米韓に対し、安保理もなにもしないわけにもいかず、上記のような議長声明となったのだろう

 朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は10日、韓国哨戒艦沈没事件に関する国連安保理議長声明に盛り込まれた「直接対話と(懸案の)平和解決」に留意すると述べた。また、「今回の事態は、現停戦体制の危険性と平和体制樹立の切実さを改めて想起させている」とした上で、「(核問題をめぐる)6カ国協議を通じて(朝鮮戦争の)平和協定締結と非核化を実現するための努力を一貫して傾けていく」とも指摘した(「時事通信」7月10日11時40分配信)。 
私は、至極まともなコメントだと思う。まさに「今回の事態は、現停戦体制の危険性と平和体制樹立の切実さを改めて想起」させるものであると思うからである。そして、長年に亘り停戦体制の危険性を保持し、平和体制樹立に背を向けてきたのが、ほかならぬ韓国、日本への永久的駐留を狙うアメリカ政府であるからである

 アジア・太平洋地域の平和、安定、安全保障は、日本や韓国などに駐留する米軍によってもたらせることはない。フィリピン大学教授のローランド・シンブランさんは言う。「フィリピンで米軍基地が撤去され、フィリピンや東南アジア諸国の安全保障が脅かされたでしょうか。撤去後、フィリピンはどこからも侵略、攻撃、脅迫されていません。反対にフィリピンは外交関係を多様化し、それは地域の安定に寄与しました」(「しんぶん赤旗」2010年7月9日)。
ASEANが創立された1967年は米国によるベトナム侵略戦争のさなかであった。タイとフィリピンからは米軍機が出撃。自国軍隊もアメリカの要請によりベトナムへ派兵を余儀なくされた。韓国軍も当時の朴正熙政権によってSEATO派兵総数の約4倍の規模で投入された。沖縄の嘉手納基地が「極東最大の米軍基地」として、最大限活用されたことも周知の歴史的事実である(しかし、日本の自衛隊員は憲法9条のおかげで、実戦に動員されることはなかった)。
米軍の駐留は、東南アジアと東アジアを不安定にしたのだ。

 対立と紛争から抜け出すために、東南アジア5カ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア)はASEAN創立による地域協力の道を選んだ。平和に向けた協力は75年のベトナム侵略戦争終結後に本格化。76年に「戦争放棄」を明記したTACが締結され、タイとフィリピンの米軍基地は相次いで撤去された。米軍という障害物がなくなって、95年には東南アジア非核兵器地帯条約も締結された。
ローランド・シンブランさんは指摘する。<いま、誰に対し何を抑止するのか。抑止力や「力の真空」の議論は、時代遅れの議論だ。日本と韓国に米軍が駐留していることは、反対に地域の不安定材料である。主権国家は、どのような国でもみずから安全保障を図ることが可能である。とりわけ日本は米軍がいなくても安全保障を図れるだけの経済力や技術力を持っている。域内の紛争や問題については、外国の力に頼るのではなく、対話し、意見交換したほうがよい。このASEANの経験は、すべての国で参考にされるべきだ>(「しんぶん赤旗」同上)。

 米軍が日本と韓国に駐留し、北朝鮮を包囲して緊張を煽るように仕向けるのは、駐留を恒久化したいからである。7月3日一旦帰港していた米海軍横須賀基地に配備されている原子力空母ジョージ・ワシントンが9日午前、同基地を再び出港した。具体的な行動予定や航海期間は公表されていないが、韓国哨戒艦沈没事件を受けて北朝鮮を威嚇、挑発するために計画されている米韓合同演習に参加するために、黄海に向かったものと思われる
まさに、日本と韓国に米軍が駐留していることは、シンブランさんの指摘のとおり、地域の不安定材料なのだ。

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