プロメテウスの政治経済コラム

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参院選 民主大敗、過半数割れ 自民党やみんなの党の発言力が高まる  続く「国民の苦難」

2010-07-12 18:49:31 | 政治経済
11日に投票が行われた第22回参院選は、12日昼まで開票作業が続き、当選者の顔ぶれが確定した。改選54議席以上を目標にした民主党は44議席にとどまる大敗を喫し、与党系議席は非改選を含め参院過半数(122)を12議席も割り込んだ。改選38の自民党は一人選挙区で21勝8敗と民主を圧倒し、51議席に伸ばして改選第1党となった。しかし、比例代表は過去最低の12議席であった。
参院選初挑戦となった新党では、みんなの党が10議席を確保して躍進した。非改選と合わせて11議席を握ることになり、参院で予算を伴わない法案の提出が可能になったほか、党首討論への出席も可能になった。
昨年の総選挙で民主党政権ができて、政治を変えてほしいという国民の期待が高まったが、肝心要の問題で期待を裏切り続け1年足らずで、国民の厳しい審判を受ける結果となった。問題は、国会で自民党やみんなの党の発言力が高まることだ。自公政権に退場の審判をくだしたはずだったのに、自民党や小泉以上の構造改革推進派のみんなの党が国会で発言力を高めるとはどういうことか。政治革新を求める「国民の苦難」は続く。

 今度の参院選挙直前の政治状況は国民にとってまことに憂鬱な状況であった。主要な争点は、消費税(セットとしての法人税引き下げ)と米軍普天間基地であったが、自民党がマニフェストで「消費税10%」を打ち出したのを、菅・民主党が有難く押し戴いて「10%を参考に、税制の抜本改革の超党派協議を」ととびついたことで、今度の選挙の基調が決まってしまったからである。
一方、協議を呼びかけられた野党側はといえば、言い出しっぺの自民党は「まず民主党が財政の見通しを誤ったことを認めてからだ」とおいそれと協議に引き込まれまいとし、公明党は「消費税を社会保障に使うというのなら、社会保障ついての協議が先」とこれまた民主党の土俵に上がるのを警戒。しかし、自民、公明も結局は消費税引き上げやむなしの立場だから、この三つの党の対立はこれまでの国会運営などでのうらみつらみや面子の問題にすぎない。基本的なところでの対立ではない。それがより明白なのが法人税の問題で、これを現行の約40%から大幅に引き下げて25%にという民主党に自民、公明とも基本的には同調しているのである(田畑光永「大勢は決まったと言っていいだろう」 “暴論珍説メモ” 2010・06・23)。

 財政再建、社会保障財源といえば、共産党を除いてどの党も消費税である。そして「成長力なし」といえば、法人税引き下げである。企業が逃げる、と同じ心配に声を揃える。「欧米なみに」と台詞まで一緒だ。
「この民主・自民路線に反対する野党の中で一番立場がはっきりしているのは共産党だ。消費税を上げて家計を圧迫せずに、所得税の累進税率を高めて、金持ち優遇をやめろ。法人税が高いといっても、さまざまな特別措置で実際はそんなに高くない。それが証拠には大企業は巨額の内部留保をためこんでいるではないか、というのである。昔から同じ言い回しだが、なんだか新鮮に聞こえる」(田畑光永 同上)。

「政権を取って1年、民主党は模範的に自民党化した。これではやはり“困ったな”としか言いようがない。普天間でもそれははっきりしていた。菅氏は沖縄の負担軽減と日米合意の継承を同じ重さで語る。しかし、これは二律背反だ。県内たらいまわしでどうして負担が軽減できるのだ。細かい軽減策を積みあげようというのかもしれないが、それは多寡が知れている。マニフェストには“緊密で対等な日米関係を構築するため日米地位協定の改定を提起します”というフレーズはあるが、あい変わらずどう改定したいのかは書かれていない。せめてどうしたいかくらいは言うべきなのに、聞こえてきたのは『日米同盟はアジア安定のインフラストラクチュアである』という言葉であった。『海兵隊の存在が抑止力である』という俗論も彼の口から出た。それなら改定なんぞする必要はないではないか」(田畑光永 同上)。

 みんなの党が「いまや民主党も自民党も全く同じ土俵」(渡辺喜美代表)と叫んで、“新しさ”をアピールして躍進した。しかし、同党の新著『「アジェンダ」で日本を変える!』では、法人税減税などを柱とする大企業応援策で経済成長をめざすと主張。「それでも足りなければ消費税という話が出てくる」(江田憲司幹事長)と、消費税増税を当然の選択肢にする。結局、みんなの党の考えは大企業減税をまずやり、「4%成長が達成できれば…税収が伸びて財政再建にもなるし…社会保障財源の調達にもなる」「それでも足りなければ消費税増税」(前掲書)というものだ。これは、小泉構造改革の「上げ潮」派そのものである。「中途半端に終わった『小泉・竹中路線の失敗』を乗り越えた真の本格的構造改革路線を構築」(渡辺代表の著書『民主党政治の正体』)するというみんなの党は、雇用や社会保障などの「要」の部分で、小泉路線を踏襲する。

 昨年の総選挙で、自公政権を退場に追い込んだ最大の要因は、貧困と格差をもたらした構造改革政治を転換してほしいという国民の声であった。しかし今回の国民の選択によって議席が増えたのは、自民党や小泉以上の構造改革推進派のみんなの党であった連立与党は過半数(122議席)を12議席下回る110議席にとどまった。衆院で3分の2の多数を確保していない与党にとって、参院で否決された法案の再可決ができないため、政策ごとの部分連合や連立組み替えで過半数を確保することが不可欠になる
自民党(84議席)あるいは公明党(19議席)と連携すれば一気に過半数を確保できる。すべての常任委員会で過半数を占め、法案を確実に可決できる「安定多数」(129議席)にも届く。これは、自民党政治に代わる新しい政治を求めて「政権交代」を実現した国民にとって最悪の事態である。
いずれにしても、「消費税引き上げ」「法人税引き下げ」「普天間の辺野古移設」を支持する議員が圧倒的多数の国会が当面続く。国民の願いを国会に届ける国会外の市民運動の一層の奮起が求められる。

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