プロメテウスの政治経済コラム

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雇用破壊  再び“派遣村”の危機  東京の“公設派遣村”だけでは不十分!

2009-12-23 18:29:04 | 政治経済
長妻昭厚生労働相は22日記者会見し、年末年始に住む場所がない失業者に対し、東京都内に数百人を収容できる宿泊施設を用意し、食事も提供すると発表した(「東京」2009年12月22日 19時12分)。昨年末の東京日比谷の「年越し派遣村」を再び首都で繰り返したら民主党政権の格好がつかないと思ったのだろう会見に同席した派遣村元村長で内閣府参与の湯浅誠さんは「行政が知らん顔しないということが昨年との違い」と意義を強調(実施主体は都で、運営費は国が負担)したが、失業者は、全国で昨年の同時期よりも90万人増えている。事態は、去年の“派遣村”のときより深刻だ。東京の“公設派遣村”だけでは、対策が不十分なことは明らかだ

 年の瀬を迎え、雇用と中小企業の年末危機対策がいよいよ待ったなしの課題となってきた。各地の炊き出しに並ぶ失業者の列は昨年の倍に伸びているという。昨年の10月以来、失業給付の期限が切れても新たな職に就けない失業者が、政府の推計でも23万人に上る見込みである。一部の輸出大企業で生産が回復しても、いっこうに失業は減らない。このままでは「派遣切り」で仕事も住まいも奪われた人が巷にあふれるおそれがある
労働組合や民主団体が主催する全国各地の“派遣村”には、すでに多数の深刻な相談が寄せられている。
司法書士や弁護士、医師、市民ボランティアなどでつくる豊橋派遣村実行委員会が主催した「豊橋1日派遣村相談会」には、113件の相談が寄せられという(「しんぶん赤旗」2009年10月5日)。
「3月末に派遣切りされ、雇用保険も9月に切れてしまった。家賃を2カ月間滞納しているので、大家から、アパートを出るよう催告されている」、「不況のせいで月に2日仕事があればいいほう。会社から自主退職を求められ、寮も2カ月以内に出てほしいといわれ、困っている」などなど、全国どこも同じような状況である。

 景気の悪化によってますます深刻になっている失業者の生活支援は、当面のもっとも切迫した課題である。政府は10月23日に策定した「緊急雇用対策」で、「今年の年末年始に、求職中の貧困・困窮者が、再び『派遣村』を必要とすることなく、安心して生活が送れるようにする」ことを目標に掲げたが、口先が先行する鳩山政権の対策は十分とはいえない。第2次補正予算案に盛り込む経済対策でも、税金を何兆円つぎ込むかという対策の規模ばかりが、国民新党の亀井金融・郵政改革相の発言とともに焦点となり、住宅版エコポイントの創設、家電エコポイントやエコカー補助の延長、電線地中化などの公共事業などやってることは、自公政権とあまり変わらない。
 
 日本共産党の志位和夫委員長は14日、鳩山由紀夫首相と党首会談を行った際、普天間基地問題とともに、雇用と中小企業の危機打開のため政府が年内にとるべき緊急の課題を提起した(「しんぶん赤旗」2009年12月15日)。
志位氏は、「このままでは文字どおり『年が越せない』という事態が、昨年以上に深刻な形で広がっている」として、(1)失業者への緊急支援をおこなう、(2)大企業に雇用の社会的責任を果たさせる、(3)中小企業支援策の緊急拡充をおこなう、(4)大銀行の貸し渋り、大企業の下請けいじめをやめさせる――という四つの点について具体策を提案した。失業者への緊急支援については、政府判断で直ちに実行可能な雇用保険の「全国延長給付」をおこなうこと。「生活・訓練給付金」の対象を、「厚労省指定の講座受講者」という要件をはずして、生活に困窮している求職活動中の失業者全体に広げること。緊急宿泊所の確保、生活保護などで、失業者をホームレスにしないための万全の方策をとることを提起した。

 東京の”公設派遣村”は、東京都が住居を失った求職中の失業者を対象に年末年始の28日から1月4日まで、渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで生活総合相談として宿泊場所・食事の提供を行うというものである。利用できる人は求職中で困窮し住居がないことに加え、(1)都内に生活実態がある(2)都内のハローワークで求職登録をしている(3)年末年始の生活総合相談をハローワークや区市町村などで申し出て、28日までに電話で予約する―これらの条件をすべて満たした人に限るとしている。
「東京地方労働組合評議会の中野謙司国民運動局長は『利用資格がハローワークで登録し、事前に申し込みをした人に限られ、求職をあきらめた人などが対象外なのは問題だ。雇用情勢は去年以上に大変で、運動を強めて国・都に抜本的な対策を取るよう求めたい』と話している」(「しんぶん赤旗」2009年12月23日)。

 失業・貧困問題は、資本主義システムの永遠の課題である。このようなときに、財界総本山の日本経団連は14日、「新成長戦略」をとりまとめて直嶋正行・経済産業相らに提出した。「非正規切り」に何の反省もなく、大企業の国際競争力の強化を口実に法人実効税率の10%引き下げなどを要求している。私たちは、財界に言いたいことを言わせておくような政府を選ぶために政権交代を実現したわけではないはずだ。民主党政権が「財界・大企業の横暴な支配」を打破し、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる改革を実行できないのなら、実行できる政権を創り出すほかないだろう

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