プロメテウスの政治経済コラム

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派遣法改正 労政審報告案どうみる 派遣元、派遣先の一層の責任強化を!財界の巻き返しを跳ね返せ!

2009-12-24 19:33:51 | 政治経済
労働者派遣法の改正審議が大詰めを迎えている。25日の労働政策審議会労働力需給制度部会で最終報告がまとめられる予定である。報告案を検証してみよう。
労働者派遣法は、1985年に制定されて以来、99年に原則自由化、03年に製造業への解禁など、際限なく規制緩和され続けてきた。その結果、派遣労働者は増え続け、08年度には約399万人もの人が「派遣」で働いている。そのうち約281万人は、仕事があるときだけ「雇用」されるいわゆる登録型である。「派遣」は、必要なときに必要な量だけ調達するという「人間の看板方式」である。景気が悪くなると、まっさきに、しかもいともたやすく調達停止=「派遣切り」=「解雇」される。「使い捨て」にされた派遣労働者たちの過酷な現実は、各地の“派遣村”からのレポートが生々しく伝えている。派遣労働者の保護は、現代日本の階級闘争の最大の焦点の一つである

 現行の労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)は、派遣労働者の保護という観点からみると、まったくのザル法である。製造業派遣では、ほとんどの現場で、偽装請負が行われ、請負を偽装することで派遣の期間制限等をかいくぐり、正社員と同様の業務に長期間従事させることが平気で行われている。給料は正社員の半分程度に抑えられ、景気が悪化すれば簡単に次々と首を切られる。ところが、現行の労働者派遣法では、派遣元、派遣先の責任を問うことができない

パナソニック(旧松下)プラズマディスプレイ(大阪府茨木市)の偽装請負を告発後、不当解雇されたとして、元請負会社社員の吉岡力さん(35)が同社を相手に雇用の確認などを求めた最高裁判決が18日あったが、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は、派遣先との間に「黙示の労働契約」が成立しているとして地位確認を認めた昨年4月の大阪高裁判決を取り消した。現行の労働者派遣法を形式的に解釈すれば、偽装請負のような「違法な労働者派遣」をしても派遣元会社が免許取り消しになることもなければ、派遣先との直接の雇用関係(「みなし雇用」)が認められることもない。資本の労働者の使い捨てに対して、まったく無力であることを最高裁が証明してみせた

 こうして、労働者派遣法の抜本改正が労働者階級にとって、待ったなしの課題となり、世論と運動の広がりを受けて鳩山連立政権は、登録型派遣や製造業派遣の原則禁止、派遣先に直接雇用させる「みなし雇用」の導入などを公約し、労働政策審議会で議論が始まったのだ。
労政審の報告案は、不安定な「登録型派遣」(仕事のあるときだけ労働契約を結ぶ)について、「常用雇用以外の労働者派遣を禁止する」とし、専門26業務などをのぞいて原則禁止。「派遣切り」で改めて問題になった製造業派遣についても、「常用雇用」を例外として原則禁止するとした。また、「偽装請負」など違法派遣が行われた場合、派遣先が派遣労働者に「労働契約を申し込んだとみなす」規定を導入。労働者が受諾すれば派遣先に直接雇用されるようにするとした。
登録型派遣や製造業派遣について「原則禁止」とし、「みなし規定」を導入したことは、長らく続いた規制緩和から規制強化・労働者保護へと転換を求める労働者のたたかいがやっと一歩前進をみたということである

 しかし、派遣労働者の保護をめぐるたたかいは、現代日本の階級闘争の最大の焦点の一つである。財界・大企業は改正反対の巻き返しを強め、審議会でも公益委員から改正に背を向ける発言が出される状況も出ていた。労働者・国民が求める抜本改正とするには、ただすべき問題点が少なからず残されることとなった(「しんぶん赤旗」2009年12月24日)。

一つは、登録型派遣や製造業派遣で、「常用雇用」を禁止の例外としたことである。「常用雇用」といっても、厚労省「業務取扱要領」では、短期の派遣契約でも繰り返して1年を超えれば「常用」と見なされることになっている。現に、常用型派遣の大量解雇が続出している。厚生労働省によると、昨年11月から今年4月までに派遣先との契約を切られた、期間の定めのない「常用型派遣」の労働者のうち、7割が派遣元会社も解雇された派遣労働者が待機労働者となっても、派遣元会社が雇用し続ける責任が明確にならないと不安定な短期契約が温存されることになってしまう。

「みなし規定」について、派遣先が就労させない場合、行政による勧告にとどまっていることも問題だ。大企業は行政から指導を受けても階級的利益にかかわることには従おうとしない。行政も司法も大企業には甘いからである。法的な強制力をもたせることが必要だ。
また、直接雇用される場合の契約期間について、派遣元と結んでいたのと同じ契約期間となるとしている。「みなし規定」(擬似労働関係)は、ドイツのように派遣元、派遣先の有利なほうの労働条件を適用できるようにすべきだ。全労連などは「期間の定めのない雇用」とすることを求めている

派遣労働者と派遣先の労働者の「均等待遇」については、「均衡を考慮する」というなんの規制ともならない条項でお茶を濁している。「時間がない」として派遣先企業の責任の強化が盛り込まれなかった。連立与党案にも盛り込まれた、派遣労働者との団体交渉に派遣先企業が応じる義務を課すことや、育児休業を理由とする不利益取り扱い禁止など派遣先企業に対する責任強化も見送られた。
見逃せないのは、猶予期間だ。骨抜きをねらう使用者委員の主張を受けて猶予期間が3年とされた上、登録型派遣のうち一部業務について、さらに2年間の猶予期間が設けられた
 こと此処に至っても、財界・大企業が政治を支配していることを如実に示すものだ。

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