プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

パナマ米軍侵攻20年  ならず者アメリカの本質を知るものは誰でも対米自立を望む

2009-12-22 19:06:39 | 政治経済
1989年の米軍による侵攻から20周年を迎えたパナマで20日、侵攻を糾弾し犠牲者への補償を求める抗議行動が各所で繰り広げられた(「しんぶん赤旗」2009年12月22日)。中南米地域は、19世紀初めから「米国の裏庭」とされ、米国の度重なる軍事介入や経済支配に苦しめられてきた。介入を受けなかったのは、軍隊のないコスタリカぐらいではないか。それだけに彼らは、ならず者アメリカの本質をよく知っている。弱肉強食の新自由主義を断ち切り、対米自立の外交を進める革新政権が次々と誕生し、現在、変革の波が中南米大陸に押し寄せているのは、そのためである。情けないのは日本である(韓国も似たところがあるが)。鳩山政権は、“対等な日米関係”と言いながら、不平等の象徴である米軍基地問題について「日米安保がある」「抑止力として必要」と、対米従属を見直す気配すらない。支配階級だけでなく多くの日本国民も「日米同盟基軸」の観念に支配されている。米国にいささかでも物を申せば、「日米同盟の危機」を煽りたてる日本のマスメディアを通してしか世界を見ていないからである

 米国の中南米支配は、直接侵攻、間接侵略なんでもありである。CIAが後ろから操るのではなく、米軍そのものが侵攻したのが、1983年10月のカリブ海にある島国グレナダ侵攻であり、89年12月のパナマ侵攻だった。それは、1991年の湾岸戦争、さらに2001年のアフガン、03年のイラク戦争の予行演習であった。
米国は89年12月20日、当時のパナマで実権を握っていたノリエガ将軍が麻薬取引に加担しているとして、同将軍の身柄確保と在住米国人の保護を口実に2万~3万人の兵力をパナマに侵攻させた。侵攻計画を進めたアメリカの政権中枢は、(パパ)ブッシュ大統領、チェイニー国防長官、そしてパウエル統合参謀本部議長だった。ちなみにイラク戦争の立役者は、息子のブッシュ大統領、チェイニー副大統領、パウエル国務長官だった。米軍がパナマで行ったことは、国際法を踏みにじって他国に派兵し、首都を攻撃して市民を殺傷し、実力者を拉致するという、まさにならず者の行為である。アメリカはパナマで行った行為を、14年後にそっくりそのままイラクで行ったのだ(伊藤千尋『反米大陸』集英社新書2008)。

 そもそもパナマは、大西洋と太平洋とをつなぐ運河の排他的支配を目指したアメリカの都合によって、コロンビアから「独立」したのだった。1903年アメリカは、パナマ人不在のままにパナマと運河建設に関する条約(ヘイ・ビュノー・バリリャ条約)に署名し、一時金1,000万ドル及び運河地域(パナマ運河地帯)の年間使用料として25万ドルをパナマに支払うことと引き換えに、運河建設権、運河地域の永久租借権及び排他的管理権を獲得した。また、アメリカ合衆国はパナマの独立を保障しパナマ国内に混乱が生じた際には混乱を解決するために介入する権利も得た。この権利によりアメリカ合衆国は、パナマ運河建設中だけではなく、運河完成後もパナマ内政へ介入した(「パナマの歴史」『ウィキペディア(Wikipedia)』)。

 パナマ運河条約は、半植民地的条約であったので当然、パナマ国内で反米民族主義が台頭してきても不思議でない。1981年7月、民族主義者で運河条約の改定にこぎつけたトリホス将軍が、謎の飛行機事故で死ぬと、軍のトップであるノリエガ将軍が跡を継ぎ、政治の実権を握る。米軍の運河地帯での駐留の永続化を狙ったアメリカが、ノリエガと結託してトリホス将軍を暗殺したのだともいわれている。初めは親米的であったノリエガ将軍が国内の反米民族主義に応えてキューバのカストロ政権とも付き合いを始めるとアメリカは、ノリエガを切り捨てることにした。アメリカ人の生命とパナマの民主主義をまもり、麻薬取引を撲滅するというのが、パナマ攻撃の口実だった。米軍は圧倒的な軍事力で首都を攻撃、三日間の戦闘で数千人のパナマ人が死亡した。パナマ市内のバチカン大使館にかくまわれていたノリエガ将軍はそのままアメリカに連行され、禁固40年の実刑判決を受けアメリカの刑務所につながれた。

 侵略の真の目的が、パナマ国軍を解体し運河地帯(両岸16キロ)防衛のための米軍駐留を永続化することであったことはいまや明白である。米軍はパナマ国軍司令部のあった人口密集地域チョリージョ地区を重点的に爆撃。同地区は完全に破壊され、数千人が犠牲となった。その後の米傀儡政権は、米国との関係悪化を懸念して侵略の被害の調査さえ怠ってきた。被害者たちは、「アメリカは被害者に何の補償もしないし、それどころか被害者がいたことさえ認めない」と怒っている。

 タリバンを育て、フセインを利用しておきながら、必要がなくなれば、圧倒的な軍事力で他国の首都を攻撃して、大勢の一般市民を殺す、パナマもアフガンもイラクもみな同じなのだ。ならず者アメリカの本質をよく知る中南米の人びとは対米自立の外交を進める革新政権を次々と誕生させた。世界はアメリカ帝国主義の言いなりにならない―これが主流となりつつあるのだ。私たちも一日も早く覚醒することだ

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