プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

高遠菜穂子の“イラク戦争なんだったの!?”

2010-09-24 21:17:21 | 政治経済
昨日は、久しぶりに高遠さんから最近のイラク情勢および自衛隊をイラクに派兵し、ブッシュの戦争に協力した日本政府のあり方について話を聞いた。アメリカにとってイラク攻撃は同時多発テロ事件以前から既定の方針だった。米ジョージ・ワシントン大学国家安全保障アーカイブ(NSA)は9月22日、解禁された公文書に基づき、ブッシュ前政権が2001年に誕生した直後から、イラクのフセイン政権転覆を画策し、これを正当化する方策を検討していたと発表した(時事通信2010/09/23-14:30)。大量破壊兵器保有はあくまでも開戦の口実に過ぎなかったのだ。ブッシュもブレアも情報の誤りというが、イラクで一体何という大惨事をひき起こしてしまったのだろうか。何の罪もない無辜の人々がなぜ、寒暖から保護してくれる建物、上下水道、電気に事欠き、テロの不安の中で暮らさなければならないのか。イラクからの映像は、戦争の悲惨さ、理不尽さを改めて私たちに突き付ける。しかも、日本政府はこの戦争に積極的に加担し、自ら共犯者となったのだ

アメリカ軍は8月末をもってイラクから戦闘部隊を撤収させた。「イラクの自由作戦」(イラク国家と国民を破綻させておいて、よく「自由」とは言えたものだ)として始まった対イラク戦争は、今後、「新しい夜明け作戦」(イラク国民にどんな夜明けがあるというのか)と名を変え、駐留部隊5万人規模の米軍兵士が、イラク軍の訓練にあたることになる。「アメリカの都合で始まった戦争。こんどはまたアメリカが勝手にイラクから去っていくだけ。この国に何が残った。悲しみと死体の山だ!米軍が残る限り戦争は終わっていない」(雑貨店店主/スンニ派地区-アジアプレスの通信員の取材から)。
アメリカは米軍戦闘部隊の撤収はしたが、「イラク戦争の終結」を宣言したわけではない。イラク駐留米軍のオディエルノ司令官は戦闘部隊を撤収させるにあたって、CNNテレビのインタビューに対して、イラク政府からの要請があれば、同国からの完全撤退の期限である2011年以降も米軍が駐留する可能性があると表明している

イラク各地では今も連日のように自爆攻撃や爆弾事件が数十件もあいついで起きている。高遠さんによれば、先月の25日に日本へ帰国したが、治安状態の悪化で結局、イラクへは入れず、シリア、ヨルダンで約2か月滞在し、イラク国内情勢については、プロジェクトのカウンターパートナーから仕入れたとのこと。シリア滞在中も多数の片足をなくした怪我人や深刻な病人がイラクから運びこまれていたという。
多くの地域で、治安任務はすでにイラク側に移管され、イラク人の手によってすすめられているが、その過程で拷問による殺害や礼状なしの逮捕も明らかになっている。フセイン時代、イラクはスンニ、シーア派が平和的に共存して暮らしていた。ところが、アメリカがフセイン政権を転覆してから、イランのシーア派勢力が政権の中枢に影響を及ぼし、軍や警察組織にも入り込んでしまった。彼らは、イラク人の命をなんとも思わない。3月の総選挙以来、イラクではいまだに新内閣を組閣できないのだ。

アメリカ合州国の国民大半は、イラクで何が起きたのか、そして今何がおきつつあるのかを知らない。アメリカ政府は「イラクの自由作戦」でイラク人が「自由」になったとしか言わない。オバマ政権を含め、アメリカ政権は、見て見ないふりをし、侵略後のイラクでは生活が向上したという神話を永続させている。アメリカの大手マスコミが、こうした政府のメッセージを強化している。オバマ大統領は、過去に目を向けるのではなく、前進するとのだという口実で、過去の検証を否定している
日本政府も同じである。イラク戦争への民主党政権の公式の立場は3月19日に閣議決定した日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が提出した質問主意書に対する答弁書に示されている。イラクへの武力行使は国際法違反という認識かとの問いに対し、「国際法上正当化されるというのが当時の政府の考え方であった」と指摘。イラクへの自衛隊派兵については、その根拠法となったイラク特措法の規定に従えば「違憲となるとは考えていない」と表明。さらに、イラク戦争を支持し、自衛隊を派兵した小泉・自公政権の判断は誤っていたかとの質問に対しては「当時の政府の判断の検証は、将来の課題である」とはぐらかすだけである

今、アメリカでは、海外ではなく国内のテロの脅威に晒されているという。日本はアメリカに付き従うことで、中東の人々を敵に回してしまった。“イラク戦争なんだったの!?”の高遠さんの問いは、私たち日本人すべてが検証し、答えを出さなければならない問いである。

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