プロメテウスの政治経済コラム

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中国人船長釈放  事実と道理に立たない日本外交  やることも言うことも支離滅裂 

2010-09-26 19:12:09 | 政治経済
尖閣諸島付近の日本の領海で、外国漁船の不法な操業を海上保安庁が取り締まるのは当然である。問題は、今回、尖閣問題ではじめて船長の身柄を送検し、日本の司法手続きで処罰すると大見得を切りながら、逆に相手に凄まれたら怖じ気づき、逮捕した船長を釈放し、しかも、その責任を検察に覆いかぶせる政府のいい加減さである。対米従属で、事実と道理に立たず、自分の頭で考えない日本外交は、やることも言うことも支離滅裂だ
今回の中国漁船の領海侵犯から始まった一連の事態は、ひとえに菅・仙谷民主党政権の外交力の欠如から来た混乱である。事実と道理に立った外交力で毅然とした態度を内外に示す事は、排外的なナショナリズムを煽ることではない。むしろ逆だ。つまらない軍事的対立を避けるためにも、毅然とした外交力が不可欠なのだ。

 事件が起きて真っ先に日本が取るべきは総理や外相がみずから動いて政治的に事態を封じ込めるべきだった。ところが、事件の起きた9月7日から14日まで、民主党は菅対小沢の代表選に明け暮れ、菅も仙谷も船長を逮捕拘留すれば、中国側がどう出るかも考えないで、「粛々と司法手続きを進める」と問題を那覇地検に丸投げにした。領海侵犯については、日本も1996年に批准した国連海洋法条約で取締が認められおり、具体的には、「領海等における外国船舶の航行に関する法律」という国内法で、海上保安官に、当該船舶への立入検査をさせることができることとするとともに、立入検査の結果、当該船舶の船長が無断で停留、錨泊、係留、徘徊等を伴う航行をしていると認めるときは、当該船長に対し、領海等からの退去を命ずることができるとしている。今回、船長は素直に退去せず、追跡中だった石垣海上保安部の巡視船の中央部に漁船を衝突させ、海上保安官の職務を妨害したとして公務執行妨害容疑で逮捕したのだった。

 ここまでは、問題はない。問題なのは、船長の身柄を送検し、日本の司法手続きで処罰拘留するなら、尖閣海域に日本の法律適用を認めない中国政府や反日感情を持つ中国国民が激烈な対応をすることは火を見るより明らかなのに、後先を考えなかったことだ日本の領有権のよりどころを事実と道理にもとづき、中国がゴチャゴチャいう前に、しっかりと中国や世界に主張し、船長を強制送還するから、中国側の責任者が迎えに来いと、いうべきだった。武装した不審船でもない漁船の船長は、領有権を明確に主張したうえで、強制送還すればよかったのだ。
中国の強烈な反応をよみきれないまま司法手続きに委ね、最後はアメリカにまで、いつまでやっているのかと一喝されると、「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と検察が外交判断したことにして、スゴスゴと船長を釈放してしまった。こんな日本政府が、中国政府に舐められるのは当たり前でないか。
和解どころか、与し易しとみた中国外務省は、日本に「強烈な抗議」として、謝罪と賠償を要求してきた。

 明治時代、福岡県生まれの古賀辰四郎は、伊豆諸島の鳥島と東シナ海の尖閣諸島でしか繁殖していない、アホウドリの羽毛に目を付けた。羽毛を欧州に売る事業を思いついたのだ。古賀辰四郎の開拓のために島を貸し与えてほしいという願に応えて、1895年、政府は尖閣諸島を日本の領土に編入し、開拓を認めた。古賀はのちに、かつお節の工場も建て、尖閣の島は、事業のとだえる1940年代まで、一時は150人が住み働く絶海の工場だった(「しんぶん赤旗」2010年9月26日)。
国際法上の「無主地先占の法理」で尖閣諸島は、日本の領土となったのだ(もっとも、竹島もそうだが日本が欧米帝国主義列強に追いつこうとしていた時期のことなので、過去の歴史的清算をさぼり続けている“日本の事実と道理”が中国や朝鮮の人々にどこまで受け入れられるかは定かではない)。

 沖縄返還の前は、米国が尖閣諸島を実効支配していた。その間米中間で領土問題は起こっていないので、中国は米国の実質的な領有を容認していたとみなされても仕方ない。その尖閣諸島が米国から日本に沖縄と一緒に返還されたので、日本の領有は当然ということになる
マスコミは、今回の釈放決定直前の日米外相会談で、尖閣諸島が日米安保の適用範囲だとクリントンさんが明言したと、鬼の首でも取ったかのように報道しているが、そんなことは、沖縄を直接占領していた時代から、米国にとっては当たり前の話である。
クリントン長官が尖閣は安保の対象と「明言した」だの「強調した」だのと報じているのもどうもウソらしい。前原外相が、「尖閣は安保条約の適用対象ですよね?」と水を向け、クリントン長官がうなずいたか、あるいは「ですね」と思わず同意してしまったか、のどちらかが真相のようだ(池田香代子さんのブログ)。
日中の揉め事に介入し、中国を敵に回すなどということは、現在のアメリカがやるはずもない。そこをリアルに見極められない日本外交は、それだけで敗北しているのだと思う(“超左翼おじさんの挑戦”2010-09-24 )。

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