プロメテウスの政治経済コラム

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政府「成長戦略」  法人税減税を明記  日本の経済財政運営の問題点はどこにあるか

2010-06-19 21:09:58 | 政治経済
政府は18日の閣議で2020年までの「新成長戦略」を決定した。日本経団連の筋書き通り、法人実効税率を「主要国並みに引き下げる」と明記。民主党は前日発表した参院選公約で消費税増税を打ち出しており、法人税減税を消費税増税で穴埋めする菅政権の方針が明らかになった。菅政権の目指すものが「大企業がより強くなる経済」であり、この政権が、国民よりも財界・大企業の方向を向いているということがはっきりしてきた。
日本の経済財政運営は戦後一貫して財界・大企業本位であり、国民生活は二の次であった。ただ財界の主役が重厚長大企業であった高度経済成長時代には、大企業が貧弱な福祉を補完し(労働者は企業に忠誠を誓った)、旧自民党的利益誘導政治が企業社会に包摂されない人びとを補完しただけであった。このようなもとでは、支配階級と労働者・国民との階級的矛盾が先鋭化することはなく、日本型開発主義国家のもとで形成された大企業の労働者支配と官僚機構に張り巡らされた大企業のネットワークが、財界主権を不動のものとした。そして日本では特殊日本的に財界主権はつねに対米従属という条件のもとに置かれた。日本共産党が、参院選公約で「“アメリカ・財界いいなり”から『国民が主人公』の政治への転換を」というのは、まさにこのような事態を指しているのだ。

菅・民主党政権は、各省庁のもとに置かれた調査会や審議会の報告などを柱に政策を決めようとしている。自公政権をはじめ、戦後歴代の自民党政権は、そのときどきの財界・大企業が直面する課題は違っても、あらゆる政策で大企業を優遇してきた。そして各省庁のもとに置かれた調査会や審議会の報告が最大限利用された。
いうまでもなく、調査会や審議会は決して中立機関でもなければ、まして国民本位の機関でもない。例えば、現在、経済産業省の産業構造審議会のメンバーは、御手洗冨士男前経団連会長が会長を務め、このうち「産業構造ビジョン」を取りまとめた産業競争力部会のメンバーにはトヨタ自動車の副会長や東京電力の会長など、財界のメンバーが名を連ねているというぐあいである。政府税制調査会のもとにおかれた専門家委員会の顔ぶれも、自公政権時に庶民増税と大企業減税を進めてきたメンバーが引き続き顔を揃えている。
官僚機構に張り巡らされた大企業のネットワークが、がっちりと政府の政策決定を支配しているのだ。

大企業優遇税制と金持ち減税で税収の空洞化を進め、無駄な政府支出のばら撒きをやれば必要な教育費や社会保障費の改悪・削減に進まざるをえない。それでも財政赤字はとめられない。
日本の財政収支が著しく悪化したことは事実である。2009年度は財政規模102.5兆円に対して税収は36.9兆円にしか達しなかった。国債発行金額は53.5兆円と歳入の50%を突破した。財政非常事態と称して差支えないだろう。2008年度当初予算での国債発行金額は25兆円だった。わずか1年で国債発行金額=財政赤字が2倍増を示したのは、リーマン・ショック後の多国籍大企業の利益激減に狼狽した麻生政権が14兆円規模の史上空前の補正予算を組み、この歳出拡大を主因に財政赤字が激増したためである。
政権が貧しい人びとを置き去りにし、一部大企業と富裕層をとませる経済財政運営をやってきたことが、国の財政を悪化させたのだから、このような財政危機のときこそ、これまで散々甘い汁を吸ってきた大企業がその社会的責任を果たすべきである。大企業は、この10年間で87兆円も内部留保を積み増し、229兆円もため込んでいるのだ。

ところが驚いたことに、民主党も自民党も、乱立新党も声を合わせて、法人実効税率を10~15%引き下げるというのだ。これでは財政危機が一層悪化することは明らかではないか。そこで彼らが言い出したのが「社会保障費のための」消費税「10%」である。しかし、これほど国民をバカにした話はない。
法人税を15%引き下げると9兆円の減収となる。そのために消費税を5%引き上げ(12兆円の増収)、これで埋め合わせるというのだ。5%引き上げても4%を財界に収奪されて、どうして財政再建や社会保障費にまわせるのか。ところが、このからくりを大マスコミは口をつぐんで一切言わない。
日本の政府債務残高のGDP比は早晩、200%を突破する情勢にあることは確かである。この数値は主要国のなかで突出して悪いものである。日本の場合、国内での所得と支出のバランスから生じる貯蓄が国内での実物投資を大幅に上回り、巨大な資金余剰が生じているため、政府部門が巨額の赤字を計上しても今のところ資金のひっ迫が生じていないが、このままでいいというわけではない。

善意の国民が財政赤字の将来を案じて、消費税増税やむなしという気持ちになるのは、世論調査の結果にも現れている。しかし、今は消費税を増税するときでは断じてない。まして財政再建をすべて国民に押しつけ、自分たちの負担は減らす、こんな財界の身勝手さが許されてよいわけがない。
来るべき参議院選挙で財界の走狗である低劣な消費増税勢力に鉄槌をくだそうではないか


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