プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

消費増税の大連立  「市民力」が問われる参議院選挙

2010-06-18 20:17:45 | 政治経済
菅・民主党執行部が発足後真っ先に行ったのは、枝野幸男幹事長らの日本経団連訪問(8日)だった。菅新首相の「リアリスト」としての面目躍如というべきか、新政権は急速に自民党化しているようだ。菅首相は17日、消費税の税率について、自民党が参院選公約に盛り込んだ10%を「参考にさせていただきたい」と述べた。税率10%は日本経団連が4月に発表した提言(「新たな経済成長戦略に関する提言」)において迫っていたものだ。
民主、自民、公明各党が17日、参院選公約を発表。法人税率引き下げとともに、貧困と格差をいっそう拡大させる消費税増税の方針をそろって明記。民主・自民による消費税増税の「大連立」の危険な動きが浮き彫りとなった。菅首相は同日の参院選マニフェスト発表記者会見で、消費税増税について次期総選挙で信を問わないのかとの質問に対し、「信を問うのは本来あるべき道だ」と述べながら、総選挙を待たずに増税する可能性を否定しなかった。今度の参院選では、これまで以上に賢明で適切な選択が求められることになるだろう。市民はその政治リテラシーにふさわしい政治しかもちえない。まさに「市民力」が問われているのだ

 日本の政治を支配し続けてきた支配勢力は米国・財界・(その手足となって働く)キャリア官僚である。政治権力を安定的に掌握するには、この三者と手を握ることが最も効率的である。この鉄則に乗った典型的人物が小泉純一郎氏だった。米国、財界(とくに新たに主導勢力となった多国籍大企業)と癒着する政治を実行し、その見返りとして長期政権を獲得した。キャリア官僚の中核は、財務省と外務省である。財務官僚、外務省との関係を良好に保つことが政権安定の要であると「リアリスト」菅新政権は悟ったのだろう。菅首相は、沖縄の海兵隊は「抑止力と関係ない」と最近まで言っていたのに首相になった途端に「重要な抑止力」へ。枝野氏は、「御手洗経団連会長を(国会に)参考人招致せよ、法律も守らず、格差を広げた張本人だ」と言っていたのに、幹事長になった途端に真っ先に経団連に駆けつけた。
「かつての(市民運動の)菅さんは、もはや現在の菅首相ではないのだ」(“五十嵐仁の転成仁語” 6月16日)。

 財界大企業・財務省(従って大マスコミ)の切望は消費税大増税を実現することである。消費税は、景気変動に左右されない最強の安定財源である。どんなに不況が深刻化しても、所得水準の低い一般大衆に確実に年貢を納めさせることができる。情け容赦のない酷税である(植草一秀の『知られざる真実』2010年6月17日)。
財界の狙いは言うまでもなく、法人税率の引き下げである。消費税引き上げの議論が法人税の引き下げと常にセットで出されているのは、それが日本の支配階級の一つである財界の意向であるからだ。大企業減税の穴埋めに消費税の増税ということになると、これは財政再建にも役立たないし、社会保障の財源にもならない。多国籍大企業には、国民経済に貢献するという矜持の一かけらもないのだ。

 一般会計税収は、1990年度に60.1兆円あった。これが、2009年度、2010年度に37兆円にまで減少した。20年間で23兆円も税収が減少したのである。経済規模を示すGDPは、1990年度が451.7兆円、2009年度が476.0兆円で、2009年度が1990年度を上回っている。税収を1990年度と2009年度(補正後)と比較すると、
所得税 26.0兆円 → 12.8兆円
法人税 19.0兆円 →  5.2兆円
消費税  4.6兆円 →  9.4兆円 
となっている(植草 同上)。
特徴的であるのは、法人税が1990年度と比較して4分の1程度にまで激減したのに対して、消費税が2倍強に増加したことである。景気変動の影響もあるが、相次いで実施された「国際競争力強化」の名による大企業減税が法人税の激減をもたらした。消費税については1997年度に税率が3%から5%に引き上げられたことが影響している。

 池田香代子さんが、米国と李明博政権合作による選挙キャンペーンに乗せられなかった韓国国民と比較して日本国民の政治リテラシー=「市民力」について書いている(「政治の劣化 日本と韓国」池田香代子ブログ2010年6月18日)。
「天安」沈没問題を利用して、北との軍事的緊張を煽り、「断乎決断」の姿勢をみせる支配階級の思惑を韓国国民は選挙で見事に打ち砕いた。片や日本国民は、この事件を北朝鮮の脅威と決めつけて、米海兵隊基地を辺野古に新設するという決定に利用する支配階級・マスコミにまんまと乗せられている。要するにアメリカは、日本に金を出させて、辺野古にもグアムにも、海兵隊の新基地をつくりたいだけ――普天間の代替施設といいながら、普天間基地を2倍にも、5倍にも、10倍にもして建設しようというのが、日米合意の本質だということもわからずに、「日米合意に基づき」全力をつくすと書く民主党マニフェスト

「その国の政治がアホなのは国民がアホだから」 
来るべき参院選では、まさに日本国民の「市民力」が問われている。

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1 コメント

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Unknown (Yukino)
2010-06-19 00:27:49
まことに正鵠を射たご意見。まったく同感です。
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